ねずみが最近入手して
その性能に驚いた双眼鏡がある。
それがこちら。
現行型のミクロン6×15CF 8°
現在のNikon双眼鏡のラインナップでは
ハイクラスコンパクトに分類されていて
フルマルチ化された光学系は極上で
そのコンパクトさからは想像出来ない
ような清々しい見え味なのだ。
いつものようにジャンク品を探して
5,000円程度のものを購入したのだが
入手時点では外観も綺麗で
特に問題があるようには見えなかった。
対物レンズも傷ひとつない良い状態で
これぞニコンのマルチって感じの深緑。
意外と状態のいい掘り出し物を
引いてしまったかな〜?と思って
外の景色を覗いてみたら・・・
異常なまでのクモリで何も見えない。
・・・とまぁ5,000円も出して
全く景色の見えない双眼鏡を
購入してしまった訳で
普通の人は大失敗と思うんでしょうが
ねずみは逆にこの状況に
ワクワクしてしまうんですよね。
このミクロンの狭いプリズムカバーの
中で一体何が起きたらここまでの
クモリが発生するのだろうか?
これは調査する価値がありそう。
良くも悪くも分解が簡単な構造なので
早速カバーを外してみると
なにやら黒いシート状のものが2枚
プリズムの斜面に乗っかっている。
何だこれは??
この黒いシートは樹脂製で
反射防止のためにカバー裏面に
接着されていたようだったが
変形して剥がれ落ちていた。
樹脂がフニャフニャに変形しているのは
明らかに熱を受けた証拠なので
車のダッシュボードにでも放置されて
かなりの高温状態になったのでは
ないだろうかと推測する。
シートを貼り付けていた接着剤も
その熱で気化してプリズムを
曇らせてしまったのだろう。
ねずみは以前、旧モデルの
ミクロンも整備したことがあるが
こんな黒いシートが使われているのは
見た事が無かった。
こちらが旧ミクロン整備中の様子。
プリズムカバー裏側は全面艶消し黒に
塗装されていてあの黒シートは
使われていない。
現行ミクロンはコストダウンのために
工数のかかる塗装工程を無くして
黒シートを接着する構造に
変更したのだろう。
また剥がれて悪さをするといけないので
黒シートは全て除去していつもの
光学用黒塗料で塗装しておいた。
問題はプリズムのクモリの方で
プリズムを外して徹底クリーニング
したいところだけど
現行ミクロンはプリズムが台座に
接着されていて外すことが
出来ないのだ。
よくあるグレーのセメントでは無く
レンズを貼り合わせるときにつかう
UV硬化の接着剤のようなもので
ガッチリ貼り付けられているようで
手で押しても剥がれる気配が無い。
こうなると
プリズムが向かい合っている面は
拭くことが出来ないのだけど
幸いにもこの面は曇って無かったので
無理して剥がすことはせずに
外から拭ける面だけクリーニングした。
しかし本体とプリズムが接着されて
いるってことはメーカーで
プリズム不具合の修理を行う場合
本体ごと交換してしまうのだろうか?
接着が多用されている最近の双眼鏡の
完全オーバーホールは難しい。。
対物レンズの方はクモリも無かったので
アッセンブリ状態のままクリーニング
して、そのまま組み直したら
視軸ズレも全く無く元に戻った。
こんなに小さくても二重偏心環が
使われているので視軸の安定性は抜群
この辺りはさすがNikon。
整備を終えた現行ミクロンを
旧モデルのミクロンと比較してみる。
こちら旧モデルと言っても初代では無く
1948年に復刻されたモデル。
初代ミクロンは大正時代の製造で
ねずみはまだお目にかかったことが
無い。
上が旧型で下が現行型
コーティングの色の違いが分かる。
外装の方は
右の現行型がチタンシルバーっぽい
銀色の塗装なのに対して
左の旧型はクロームメッキの
金属光沢で高級感がある。
さらに旧型はフォーカスリングの前側が
テーパー形状になっていて
対物筒の間に隙間なく収まっている。
対物レンズとフォーカス軸をつなぐ
ヒンジ部分も旧型の方が凝った作りで
こうやって見比べちゃうと
現行型のコストダウンを実感する。
決して安っぽくはないんだけどね。
外から見えないところにも
細かい違いがあって、例えば
旧型の方は対物筒が摺動する部分に
糸が巻きつけてある。
この糸でグリスを保持しつつ
摺動部の隙間を埋めて
ある程度異物の侵入を防いでいるようだ。
これももちろん現行型では省かれている。
スペック上の違いとしては
旧型の方が実視界が0.3°広い。
しかしアイレリーフがかなり短いので
目レンズにまつ毛を擦り付ける勢いで
眼球を近づけてやらないと
全ての視界を得ることは出来ない。
その点、現行型は裸眼・眼鏡どちらでも
対応出来るような絶妙なアイレリーフの
長さになっていて
無理して目を近づけ無くても
全視野を見渡すことが可能だ。
この辺もねずみが現行ミクロンを
オススメしたい理由の一つ。
クリーニングを終えた
現行型ミクロンで見た景色がこちら。
フルマルチ特有のコントラスト強めの
白が強調された色合いで
スッキリ清々しい見え味。
少し演出が入ってる感じはあるけど
不自然じゃなく上手くまとまっている。
旧ミクロンはこんな感じ。
写真で見ると僅かに
視界が広いのが分かる。
こちらは暖色系のややレトロな着色で
これもまた雰囲気があっていいね。
と、ここまでミクロン6×15CFを
推してきたねずみだが
実はもう一つ紹介したい機種がある。
それがこちら。
ミクロン5×15 9.5°
深い紫のコーティングが美しい。
5倍という低倍率のおかげで
明るくて手ブレも気にならず
アイレリーフも長くて覗きやすい。
さらに視野の着色がほとんど無くて
リアルな色彩を楽しむことが出来る。
おまけに重量もこの3台の中で一番軽い。
参考に重量は実測で下記の通り
・現行型6×15: 134g
・旧型6×15: 172g
・5×15: 123g
そんな感じでほとんど弱点の無い
ミクロン5×15なのだけど
残念ながら現行のラインナップ
からは外れてしまっている。
状態の良い中古品もほとんど
流通していないと思われるので
実用品としてオススメ出来るのは
やっぱり6×15の現行型となる。
ちなみにねずみは
現行型の7×15はまだ見たことがない。
初代ミクロンを意識しているのか
ブラック塗装がカッコいいんだけど
見え味の方はどうなんだろう??
こちらもジャンク品を見つけたら
入手してみたい。
どこにでも持っていきたくなる
携帯性抜群のミクロン6×15
サッとポケットから取り出したり
首からぶら下げて歩くのも
なかなかオシャレだと思う。
大正時代から100年間ほぼ変わらない
デザインなのに古めかしさを
感じないし光学性能も一級品。
カタチがそのまま機能を表していて
これぞ機能美。
今後もNikon双眼鏡の歴史を
象徴する存在として
ずっと残していって欲しいなぁ。
その性能に驚いた双眼鏡がある。
それがこちら。
現行型のミクロン6×15CF 8°
現在のNikon双眼鏡のラインナップでは
ハイクラスコンパクトに分類されていて
フルマルチ化された光学系は極上で
そのコンパクトさからは想像出来ない
ような清々しい見え味なのだ。
いつものようにジャンク品を探して
5,000円程度のものを購入したのだが
入手時点では外観も綺麗で
特に問題があるようには見えなかった。
対物レンズも傷ひとつない良い状態で
これぞニコンのマルチって感じの深緑。
意外と状態のいい掘り出し物を
引いてしまったかな〜?と思って
外の景色を覗いてみたら・・・
異常なまでのクモリで何も見えない。
・・・とまぁ5,000円も出して
全く景色の見えない双眼鏡を
購入してしまった訳で
普通の人は大失敗と思うんでしょうが
ねずみは逆にこの状況に
ワクワクしてしまうんですよね。
このミクロンの狭いプリズムカバーの
中で一体何が起きたらここまでの
クモリが発生するのだろうか?
これは調査する価値がありそう。
良くも悪くも分解が簡単な構造なので
早速カバーを外してみると
なにやら黒いシート状のものが2枚
プリズムの斜面に乗っかっている。
何だこれは??
この黒いシートは樹脂製で
反射防止のためにカバー裏面に
接着されていたようだったが
変形して剥がれ落ちていた。
樹脂がフニャフニャに変形しているのは
明らかに熱を受けた証拠なので
車のダッシュボードにでも放置されて
かなりの高温状態になったのでは
ないだろうかと推測する。
シートを貼り付けていた接着剤も
その熱で気化してプリズムを
曇らせてしまったのだろう。
ねずみは以前、旧モデルの
ミクロンも整備したことがあるが
こんな黒いシートが使われているのは
見た事が無かった。
こちらが旧ミクロン整備中の様子。
プリズムカバー裏側は全面艶消し黒に
塗装されていてあの黒シートは
使われていない。
現行ミクロンはコストダウンのために
工数のかかる塗装工程を無くして
黒シートを接着する構造に
変更したのだろう。
また剥がれて悪さをするといけないので
黒シートは全て除去していつもの
光学用黒塗料で塗装しておいた。
問題はプリズムのクモリの方で
プリズムを外して徹底クリーニング
したいところだけど
現行ミクロンはプリズムが台座に
接着されていて外すことが
出来ないのだ。
よくあるグレーのセメントでは無く
レンズを貼り合わせるときにつかう
UV硬化の接着剤のようなもので
ガッチリ貼り付けられているようで
手で押しても剥がれる気配が無い。
こうなると
プリズムが向かい合っている面は
拭くことが出来ないのだけど
幸いにもこの面は曇って無かったので
無理して剥がすことはせずに
外から拭ける面だけクリーニングした。
しかし本体とプリズムが接着されて
いるってことはメーカーで
プリズム不具合の修理を行う場合
本体ごと交換してしまうのだろうか?
接着が多用されている最近の双眼鏡の
完全オーバーホールは難しい。。
対物レンズの方はクモリも無かったので
アッセンブリ状態のままクリーニング
して、そのまま組み直したら
視軸ズレも全く無く元に戻った。
こんなに小さくても二重偏心環が
使われているので視軸の安定性は抜群
この辺りはさすがNikon。
整備を終えた現行ミクロンを
旧モデルのミクロンと比較してみる。
こちら旧モデルと言っても初代では無く
1948年に復刻されたモデル。
初代ミクロンは大正時代の製造で
ねずみはまだお目にかかったことが
無い。
上が旧型で下が現行型
コーティングの色の違いが分かる。
外装の方は
右の現行型がチタンシルバーっぽい
銀色の塗装なのに対して
左の旧型はクロームメッキの
金属光沢で高級感がある。
さらに旧型はフォーカスリングの前側が
テーパー形状になっていて
対物筒の間に隙間なく収まっている。
対物レンズとフォーカス軸をつなぐ
ヒンジ部分も旧型の方が凝った作りで
こうやって見比べちゃうと
現行型のコストダウンを実感する。
決して安っぽくはないんだけどね。
外から見えないところにも
細かい違いがあって、例えば
旧型の方は対物筒が摺動する部分に
糸が巻きつけてある。
この糸でグリスを保持しつつ
摺動部の隙間を埋めて
ある程度異物の侵入を防いでいるようだ。
これももちろん現行型では省かれている。
スペック上の違いとしては
旧型の方が実視界が0.3°広い。
しかしアイレリーフがかなり短いので
目レンズにまつ毛を擦り付ける勢いで
眼球を近づけてやらないと
全ての視界を得ることは出来ない。
その点、現行型は裸眼・眼鏡どちらでも
対応出来るような絶妙なアイレリーフの
長さになっていて
無理して目を近づけ無くても
全視野を見渡すことが可能だ。
この辺もねずみが現行ミクロンを
オススメしたい理由の一つ。
クリーニングを終えた
現行型ミクロンで見た景色がこちら。
フルマルチ特有のコントラスト強めの
白が強調された色合いで
スッキリ清々しい見え味。
少し演出が入ってる感じはあるけど
不自然じゃなく上手くまとまっている。
旧ミクロンはこんな感じ。
写真で見ると僅かに
視界が広いのが分かる。
こちらは暖色系のややレトロな着色で
これもまた雰囲気があっていいね。
と、ここまでミクロン6×15CFを
推してきたねずみだが
実はもう一つ紹介したい機種がある。
それがこちら。
ミクロン5×15 9.5°
深い紫のコーティングが美しい。
5倍という低倍率のおかげで
明るくて手ブレも気にならず
アイレリーフも長くて覗きやすい。
さらに視野の着色がほとんど無くて
リアルな色彩を楽しむことが出来る。
おまけに重量もこの3台の中で一番軽い。
参考に重量は実測で下記の通り
・現行型6×15: 134g
・旧型6×15: 172g
・5×15: 123g
そんな感じでほとんど弱点の無い
ミクロン5×15なのだけど
残念ながら現行のラインナップ
からは外れてしまっている。
状態の良い中古品もほとんど
流通していないと思われるので
実用品としてオススメ出来るのは
やっぱり6×15の現行型となる。
ちなみにねずみは
現行型の7×15はまだ見たことがない。
初代ミクロンを意識しているのか
ブラック塗装がカッコいいんだけど
見え味の方はどうなんだろう??
こちらもジャンク品を見つけたら
入手してみたい。
どこにでも持っていきたくなる
携帯性抜群のミクロン6×15
サッとポケットから取り出したり
首からぶら下げて歩くのも
なかなかオシャレだと思う。
大正時代から100年間ほぼ変わらない
デザインなのに
感じないし光学性能も一級品。
カタチがそのまま機能を表していて
これぞ機能美。
今後もNikon双眼鏡の歴史を
象徴する存在として
ずっと残していって欲しいなぁ。