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ねずみが最近入手して
その性能に驚いた双眼鏡がある。

それがこちら。
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現行型のミクロン6×15CF 8°

現在のNikon双眼鏡のラインナップでは
ハイクラスコンパクトに分類されていて
フルマルチ化された光学系は極上で
そのコンパクトさからは想像出来ない
ような清々しい見え味なのだ。


いつものようにジャンク品を探して
5,000円程度のものを購入したのだが
入手時点では外観も綺麗で
特に問題があるようには見えなかった。
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対物レンズも傷ひとつない良い状態で

これぞニコンのマルチって感じの深緑。

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意外と状態のいい掘り出し物を
引いてしまったかな〜?と思って
外の景色を覗いてみたら・・・
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異常なまでのクモリで何も見えない。

・・・とまぁ5,000円も出して
全く景色の見えない双眼鏡を
購入してしまった訳で
普通の人は大失敗と思うんでしょうが
ねずみは逆にこの状況に
ワクワクしてしまうんですよね。

このミクロンの狭いプリズムカバーの
中で一体何が起きたらここまでの
クモリが発生するのだろうか?
これは調査する価値がありそう。


良くも悪くも分解が簡単な構造なので
早速カバーを外してみると
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なにやら黒いシート状のものが2枚
プリズムの斜面に乗っかっている。
何だこれは??

この黒いシートは樹脂製で
反射防止のためにカバー裏面に
接着されていたようだったが
変形して剥がれ落ちていた。

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樹脂がフニャフニャに変形しているのは
明らかに熱を受けた証拠なので

車のダッシュボードにでも放置されて
かなりの高温状態になったのでは
ないだろうかと推測する。


シートを貼り付けてい接着剤も
その熱で気化してプリズムを
曇らせてしまったのだろう。
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ねずみは以前、旧モデルの
ミクロンも整備したことがあるが
こんな黒いシートが使われているのは
見た事が無かった。

こちらが旧ミクロン整備中の様子。
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プリズムカバー裏側は全面艶消し黒に
塗装されていてあの黒シートは
使われていない。
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現行ミクロンはコストダウンのために

工数のかかる塗装工程を無くして
黒シートを接着する構造に
変更したのだろう。

また剥がれて悪さをするといけないので
黒シートは全て除去していつもの
光学用黒塗料で塗装しておいた。
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問題はプリズムのクモリの方で
プリズムを外して徹底クリーニング
したいところだけど

現行ミクロンはプリズムが
台座に
接着されていて外すことが
出来ないのだ。

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よくあるグレーのセメントでは無く
レンズを貼り合わせるときにつかう
UV硬化の接着剤のようなもので
ガッチリ貼り付けられているようで
手で押しても剥がれる気配が無い。


こうなると
プリズムが向かい合っている面は
拭くことが出来ないのだけど
幸いにもこの面は曇って無かったので
無理して剥がすことはせずに
外から拭ける面だけクリーニングした。

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しかし本体とプリズムが接着されて
いるって
ことはメーカーで
プリズム不具合の修理を行う場合
本体ごと交換してしまうのだろうか?
接着が多用されている最近の双眼鏡の
完全オーバーホールは難しい。。

対物レンズの方はクモリも無かったので
アッセンブリ状態のままクリーニング
して、そのまま組み直したら
視軸ズレも全く無く元に戻った。
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こんなに小さくても二重偏心環が
使われているので視軸の安定性は抜群
この辺りはさすがNikon。


整備を終えた現行ミクロンを
旧モデルのミクロンと比較してみる。
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こちら旧モデルと言っても初代では無く
1948年に復刻されたモデル。
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初代ミクロンは大正時代の製造で
ねずみはまだお目にかかったことが
無い。


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上が旧型で下が現行型
コーティングの色の違いが分かる。

外装の方は
右の現行型がチタンシルバーっぽい
銀色の塗装なのに対して
左の旧型はクロームメッキの
金属光沢で高級感がある。
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さらに旧型はフォーカスリングの前側が
テーパー形状になっていて
対物筒の
間に隙間なく収まっている。
対物レンズとフォーカス軸をつなぐ
ヒンジ部分も旧型の方が凝った作りで
こうやって見比べちゃうと
現行型のコストダウンを実感する。
決して安っぽくはないんだけどね。


外から見えないところにも
細かい違いがあって、例えば
旧型の方は対物筒が摺動する部分に
糸が巻きつけてある。
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この糸でグリスを保持しつつ
摺動部の隙間を埋めて
ある程度異物の侵入を防いでいるようだ。
これももちろん現行型では省かれている。


スペック上の違いとしては
旧型の方が実視界が0.3°広い。
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しかしアイレリーフがかなり短いので
目レンズにまつ毛を擦り付ける勢いで

眼球を近づけてやらないと
全ての視界を得ることは出来ない。

その点、現行型は裸眼・眼鏡どちらでも
対応出来るような絶妙なアイレリーフの
長さになっていて
無理して目を近づけ無くても
全視野を見渡すことが可能だ。
この辺もねずみが現行ミクロンを
オススメしたい理由の一つ。


クリーニングを終えた
現行型ミクロンで見た景色がこちら。

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フルマルチ特有のコントラスト強めの
白が強調された
色合いで
スッキリ清々しい見え味。
少し演出が入ってる感じはあるけど
不自然じゃなく上手くまとまっている。


旧ミクロンはこんな感じ。
写真で見ると僅かに
視界が広いのが分かる。

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こちらは暖色系のややレトロな着色で
これもまた雰囲気があっていいね。


と、ここまでミクロン6×15CFを
推してきたねずみだが
実はもう一つ紹介したい機種がある。


それがこちら。
ミクロン5×15 9.5°

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深い紫のコーティングが美しい。

5倍という低倍率のおかげで
明るくて手ブレも気にならず
アイレリーフも長くて覗きやすい。
さらに視野の着色がほとんど無くて
リアルな色彩を楽しむことが出来る。
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おまけに重量もこの3台の中で一番軽い。
参考に重量は実測で下記の通り
・現行型6×15: 134g
・旧型6×15: 172g
・5×15: 123g

そんな感じでほとんど弱点の無い
ミクロン5×15なのだけど
残念ながら現行のラインナップ
からは外れてしまっている。

状態の良い中古品もほとんど
流通していないと思われるので
実用品としてオススメ出来るのは
やっぱり6×15の現行型となる。

ちなみにねずみは
現行型の7×15はまだ見たことがない。
初代ミクロンを意識しているのか
ブラック塗装がカッコいいんだけど
見え味の方はどうなんだろう??
こちらもジャンク品を見つけたら
入手してみたい。


どこにでも持っていきたくなる
携帯性抜群のミクロン6×15

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サッとポケットから取り出したり
首からぶら下げて歩くのも
なかなかオシャレだと思う。

大正時代から100年間ほぼ変わらない

デザインなのに古めかしさを
感じないし光学性能も一級品。
カタチがそのまま機能を表していて
これぞ機能美。

今後もNikon双眼鏡の歴史を
象徴する存在として
ずっと残していって欲しいなぁ。

mikron8×30 8.5WFの整備をしてから
すっかりNikon好きになってしまった
ねずみが今回紹介するのはこちら。
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Nikon8×30シリーズの原型となった

Mikron8×30
後期型モデル

中古市場でもほとんど見かけない
レアな双眼鏡である。


以前紹介した
前期型のMikron8×30 8.5°WF↓
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http://mouse830.livedoor.blog/archives/12692069.html
こちらもレアな双眼鏡。


後期型は形が大きく変わって
胴が短いお馴染みのNikon8×30Aの
スタイルになっているけど
スペックは前期型と同じ。
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シリアルナンバーから推測するに
後期型って事でいいと思うんだけど
情報が無くて正確な販売時期は
分からなかった。


8×30Aとは見た目そっくりで
NikonとMikronの字体も似てるので
パッと見全く同じに見える。

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ねずみもこの外観に騙されて
中身も8×30Aと同じだろうと思って
整備を始めたら、開けてビックリ。

8×30Aとはほぼ全ての部品が異なる、
言ってみれば8×30Aのスペシャル仕様
のような双眼鏡だったのだ。


どんな違いがあるのかは
分解しながら説明していこうと思う。

まず大きな違いとして
フォーカスリングのダイヤル部分の
構造が異なっていて
ねずみが入手した個体はこのダイヤルが
空転してピント調整不可な状態だった。
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このダイヤルはデルトリンテムや
Mikron前期、8×30Aもほぼ同じ構造で

ダイヤルに付いたイモネジを
3方向から
締め込んで固定する構造になっている。
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イモネジ先端が軸に付いている
円盤の外周に噛み込むので
ダイヤルが空転することも少なく
精密ドライバーがあれば簡単に
調整や増し締めも出来る便利な構造だ。

ところがMikron後期型には
異なる構造が採用されている。

こちらが分解した
mikron後期型のフォーカスリング
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断面図で比較するとこんな感じ。
左側が一般的な構造で、右がMikron。
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Mikronには円盤とイモネジが無くて
軸センターのナットを締め込むことで
軸とダイヤルのテーパ面を密着させて
その摩擦力だけで固定している。

このナットが少しでも緩めば摩擦面が
滑ってダイヤルが空転してしまい
しかも、特殊工具がないと
増し締めすら出来ないと言う
不親切な仕様なのだ。

実はZEISSのオーバーコッヘンモデルも
似たような構造になっていて↓
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Mikron後期型はこれを

真似したものだと思われるが
不具合が起きやすかったのか
コストダウンのためか?
8×30Aではイモネジ式に戻されている。


最初にイマイチなところを
紹介してしまったが他の部分は
どこをとっても8×30Aより
コストのかかったスペシャルな作りに
なっている。

とりわけ際立った違いは
気密、防水性を高めるため各部に
設けられたシール構造だ。

まず鏡体カバーと対物レンズ枠の
合わせ部分にゴムパッキンが
付けられている。

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そしてその裏側には
シール
面圧を確保するための
バックアップリングが設定されている。
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さらには鏡体とカバーの合わせ面に
ZEISS JENAによく見られるような
シール剤が塗布されている。
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極め付けは2重偏心環にまでゴムの
Oリングシールが付けられている
と言う徹底ぶり。
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これらのシール部材は
後の8×30Aでは全て廃止されている。

この徹底した気密性向上も
ZEISSのオーバーコッヘンモデルを
強く意識したものであると
ねずみは推測している。

オーバーコッヘンは鏡体とカバーの間に
ゴムパッキンが設けられていたり
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接眼レンズの可動部に
ゴムブーツまで付けられているという

この年代のセンターフォーカスの
ポロ双眼鏡としては過剰なまでの
気密・防水設計が特徴だ。
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mikron8×30後期型はゴムブーツこそ
付いていないものの
この年代の日本製ポロとしては
最高レベルの気密設計だと思う。

その気密設計が幸いしてか
プリズムには全くカビが無かったのだが
そのかわり結構な曇りが出ていた。
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カビは無いけど曇りが多い傾向は
オーバーコッヘンモデルも同じで
気密性の高い双眼鏡は
グリスから揮発した油分が内部に
こもってしまって
曇りやすいのではないかと思う。


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今回もプリズムに傷を付けないよう
細心の注意を払ってクリーニングした。
カビが無かったおかげで新品同様の
透明感に戻った。


ミクロン8×30後期型には
プリズムの固定方法にも特徴がある。

下の写真のようにプリズムの横に
薄い金具がねじ止めされていて
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この金具をプリズム側面に押し当てて
プリズムの位置を固定している。
この構造はとっても便利で
像の倒れを調整した後にこの金具を
プリズムに押し当てて締めてやれば
ズレる心配が無い。

そして、なんとこの構造も
オーバーコッヘンと同じなのだ。
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オーバーコッヘンが1954年に登場し
Nikon8×30Aの方は1959年。
このMikron後期型は8×30Aの直前に
製造されていたと考えると
ニコンはZEISSオーバーコッヘンを
ベンチマークとしてMikron後期型を
開発したと思われる。
そして、そのコストダウン版が
8×30Aということになりそうだ。


コストダウンされてしまった
8×30Aに対してMikron8×30後期型には
他にも優れた点があるのだけど
中でもねずみが一番気に入ってるのは
各パーツの仕上げがとっても
上質なところ。
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8×30Aはカバーの縁に角が立っているが
Mikronは角が丸く仕上げられていて
明らかに塗装の艶も良い。
ついでに貼り革のシボも細かくて
上品で手触りが良い。


さらにMikron後期型が凄いのは
8×30Aに対して部品点数が
多いにも関わらず実測17gも軽いのだ。
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おそらく対物レンズ枠等に使われている
金色の部品は軽量なマグネシウム製で
8×30Aではコストダウンでアルミに
置き換えられているのだと思う。

それでもMikron前期型と比べると
18gも重くなってるのだけど
IMG_8823
これはプリズムが大きくなったことが
かなり影響している。

一見、胴が長い前期型の方が
重そうに見えるけど
後期型は胴を短くするために
対物レンズとプリズムの距離を
近づけたせいでプリズムを
大きくしなければならず
逆に重くなってしまったようだ。


Mikron後期型と8×30A
最後の違いは見え味。
光学設計は同じだと思うんだけど
コーティングの違いなのか
見え味の方向性がまるで違う。

8×30Aは暖色系の着色があって
線が太めでコントラスト重視の
華やかコッテリ系。
IMG_8751


Mikronのほうは着色がかなり少なく
コントラスト抑え気味の
あっさりさっぱり系なのだ。
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線は細くてシャープに見えるんだけど
コントラストが低いせいか
遠近感が掴みにくく、平面的に見える。
この辺はオーバーコッヘンを
真似しきれなかったところかな?



・・・そんな感じでNikon8×30兄弟を
4台も集めてしまったねずみ。
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これでもまだ全種類ではなくて
8×30Aと8×30Eの間には
マイナーチェンジモデルも存在するし
現行機種である8×30EⅡも
ねずみはまだ覗いたことがない。

いつか全種類揃えて
覗き比べしてみたいな〜〜
なんて思ってるけど、、
いったい何台集めれば
気が済むんでしょうね?

自分でもよくわかりません^ ^;

今年最後のブログは
日本光学Mikron8×30 8.5°WFの話

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ミクロンって言うとちっちゃいやつを
想像すると思うけど
1950年代にニコンの双眼鏡の
ブランド名が全てMikronだった
時期があるようで8×30以外にも
いろんな機種が存在する。

IMG_7008
このミクロン8×30 8.5°WF
ねずみが最近整備した中でも
圧倒的に作りが丁寧で
見え味も抜群に良い双眼鏡なのだ!

・・・しかしこのフォルム
あの双眼鏡にそっくりですよね。

そう
CARLZEISS JENAデルトリンテム。
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スペックは8×30 実視界8.5°と全く同じ

背の高さはほぼ一緒で
ミクロンのほうがやや胴体が太い。


一見、デルトリンテムのコピーか?
と思ったんだけど
分解整備してみると全く印象は変わり、
デルトリンテムの良いところを
取り入れつつ、本家デルトリンテムを
越えようとした気概のある
双眼鏡であることが伝わってきた。
販売時期もデルトリンテム1Qと
被っているのでもしかしたら
ガチンコ勝負を挑んでいたのかな〜?

そんな歴史的にも貴重な双眼鏡。
ねずみはコイツを3000円程度で
入手した。
、、まぁカビだらけですからね
整備無しではまともに見えないので
普通の人は敬遠するでしょうね。。
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って事で整備に取り掛かる。

まずは接眼側からアプローチ
羽根を押さえているネジは真鍮製で
止めネジが2本も使われていて
安心感がある。
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しかもツァイスみたいに
噛み合ってるネジ山のど真ん中に
ねじ込んだりせずに
ちゃんと平面の部分に締め込んである。
これは後のNikon8×30にも
受け継がれている良い
構造。

そしてここにも
NikonのDNAを感じるポイント。
左の羽根のハメあいがやたらキツくて
外れる気配がない。
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この設定も後のモデルに
受け継がれてるんだけど、、
もうちょい緩くても良くない?と思う。

無理に外すと壊れる恐れがあるので
下陣笠の方から分解して

フォーカスリングごと引き抜いた。
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鏡体カバーを開けると作りの良い
プリズム押さえ金具が現れる。

キレイな十字型に打ち抜かれていて
バリは無くサビも全く出ていない。

手抜き双眼鏡はこの金具の作りが
いい加減なのですぐに分かる。
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矢印のところは
プリズム台座面の加工が接眼側の
遮光筒をうっすら突き破っていて
プリズムのコバが見えている。
可能な限り大きなプリズムと
大きなアイピースを組み合わせた
結果なのかも知れないけど、
遮光の面からは良く無いような?

一方、デルトリンテムは
ここは完全に塞がれていて
溝のついた遮光筒まで挿入してある。
コーティングが発明される前の
基本設計のためか迷光除去には
かなり気をつかっていたと思われる。
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一方、ミクロンの後継Nikon8×30Aは
ここが大きく開いていてプリズムが
はみ出している。
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コーティングの性能向上や
接眼レンズ構成の違いで
遮光の必要が無くなったのだろうか?
それとも単なるコストダウンか?
デルトリンテムとは全く対照的。

ミクロン8×30は両者の中間的な構造で
本格的なコーティング時代に移り変わる
過渡期の設計って印象を受ける。


またミクロン8×30の鏡体には
対物側と接眼側のプリズム室の間に
小さい穴が開けられており
中の空気が連通するようになっている。

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これもデルトリンテムには無い構造で
おそらくピント調節時のアイピースの
動きに伴う内圧の変動を緩和する
ためではないかと推測する。
先程のプリズム台座の加工が接眼筒に
突き抜けてるのは空気の通り道を
形成する狙いがあるのかも知れない。
8×30Aにもこの穴は受け継がれている。
(追記: あくまで推測ですので、、
本当の理由をご存じの方がいたら
是非教えてください。)

基本構成はデルトリンテムを踏襲しつつ
細かく改善を入れてるところが
いかにも日本らしいな〜と思う。


プリズムはもちろんカビだらけ。。
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プリズムに拭き傷をつけないように
クリーナーをカビに染み込ませて
溶かしながら落としていく。

幸いコーティング面が
侵食されてなかったので
カビ跡もわからないくらいに
取り除くことが出来た。
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ミクロンのプリズムの真ん中には
迷光を低減する溝が彫られている。
これもデルトリンテムには無いのだけど
ねずみが見た中で古いものでは
ライツのBINUXITに同じ溝があるのを
確認している↓

http://mouse830.livedoor.blog/archives/9465716.html

対物筒はデルトリンテムそっくりで
光路を全てカバーする長い遮光筒が
ついたタイプ。
極薄の金属製で内部に細かい溝が
びっしり彫られているのも
デルトリンテムと同じ。
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この部品の重さはなんと10gしかない!
fether-weightを謳っているだけあって
各部品が異常に軽い。

比較として
デルトリンテムの軽量モデルは9g。
ミクロンもかなり良い勝負してる。
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どちらもおそらくマグネシウム製で
持った感じはプラスチックのような
重さでしか感じない。
レンズとプリズムが重い分
他の部品を極限まで軽くする、
双眼鏡の軽量化って大変だなぁ〜

総重量は実測値で
ミクロン8×30: 479g
デルトリンテム1Q: 512g
ニコン8×30A: 515g
ミクロンはかなり軽い!
ベンチマークがデルトリンテム1Q
だとすると大幅に上回っている。

ちなみにチャンピオンは
デルトリンテム軽量非球面モデルの
407g。これ以上軽い8×30を
ねずみは知らない。


最後にアイピースを
ざっと比較してみる。
ミクロンのアイピース直径は
25.4mmでちょうど1インチ。

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デルトリンテムの方は
約24.5mmのツァイスサイズ。
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当然ながらツァイスサイズなので
旧式の天体望遠鏡のアイピースとして
流用出来たりもする。
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エルフレの広視界で高倍率を
味わえるのでなかなか面白い。
ニコンもツァイスサイズに
揃えてくれれば良かったのにな〜
8×30Aは何故かツァイスサイズより
小さい23mmとなっている。

ミクロンの接眼レンズは
かなり状態が良かったので
今回は分解しなかったのだけど
どこかでレンズ構成の比較もしてみたい。

光学系のクリーニングが終わったら
前回の記事で紹介した
像の倒れ調整↓もバッチリやった。

http://mouse830.livedoor.blog/archives/11741304.html
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視軸のほうも眼幅60mmと
70mmの平行器を
使って
主軸にほぼ一致させたうえで
64mmで上下ズレほぼ0、内方ズレ1分
ぐらいまで
追い込んだ。
各部品の精度が良いので
視軸調整はかなりやりやすかった。

そんな感じで整備を終えた
mikron 8×30 8.5°WF
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プリズムカバーも少し磨いただけで
ピッカピカ!
塗装の質は世界の双眼鏡の中でも
トップクラスだと思う。

気になるミクロンの見え味は

やや平面的でシャープネスが高く

8×30Aに似た明るさもありながら
デルトリンテムのような周辺部の
ボケもあわせ持っている。
それでいて黄色の着色が薄くて
パサッと乾いた見え方をするところは
ミクロン独特の味。

こちらがミクロン8×30で見た景色
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参考に
デルトリンテム1Q
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ツヤがあって立体的。
背景の木の枝が主張せずに
手前の緑の葉っぱだけが浮き上がって
見えるのはさすが。


8×30A
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パッと明るくて華やかに見える
やや線が太めかな?

ミクロン8×30は
表現力ではデルトリンテムに
及ばないものの単純な光学性能では
デルトリンテムを凌いでいると感じる。


それと
どう表現していいか
分からないのだけど
視界の安定感がとっても良くて
覗いた瞬間に良い双眼鏡!
ってのが伝わってくる。
この「良い双眼鏡」の感覚は
1Qになる前のデルトリンテム
軽量エルフレモデルにも感じるのだけど
原因が何なのかはよく分からない。
左右の光学性能がピッタリ揃ってる
ってことなのだろうか?

このミクロン8×30のような
古くて良い双眼鏡に出会うと
新しいモノが良いモノとは限らないな
とつくづく思う。
最近の双眼鏡にはEDガラスとか
フーリーマルチだとか
優れた材料のモノは山ほどあるけど
このミクロン8×30には
基本を磨き上げたモノだけに宿る
スペックに現れない良さがある。

こういう出会いがあるので
まだまだ双眼鏡趣味はやめられない^ ^
来年も良い出会いがありますように!

今年一年ねずみブログを読んでいただき
ありがとうございました
来年もよろしくお願いします。

管理人ねずみ

今回は偏心環でレンズを動かすタイプの視軸調整について詳しく説明しようと思う。

前回の記事では偏心0の状態から視軸を動かす方法について説明した、これは双眼鏡を分解して組み立てた後の最初の1回目の調整と思って欲しい。
視軸レンズ6
偏心リングの重ね合わせを使って、視界を動かしたい方向にレンズを移動させる。するとそちらに視軸が動くという原理。

この1回目調整後の状態を、リングの一番肉厚になっているところを基準として数値で表すと
挟み角度: 90°
中心角度: -45°
となる。
エキセントリック5
もっと専門的な表し方があるのかも知れないけどねずみは自己流で勝手にこう表現している。

リングの最肉厚部を基準にしているのは、ここに工具を掛けるための溝が付いているものが多いのでそれを目印に出来るからだ。


最厚部に溝が無いものはマーカーで目印を付けておくとわかりやすい。
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薄い方を基準にしても考え方は一緒なのでそこはお好みで。


もちろん
最初の1回の調整でピタリと合わせることは不可能なので微調整を加えていくことになるが、ここからがややこしくなる!

1回目の状態から目標物を真ん中に持っていきたい場合、移動量は1回目の半分とする。
視軸レンズ9
どうするかというと
全体を右回りに回転して
且つ挟み角度を増やす
という操作をする。

偏心リングの偏心量を1とすると
1回目調整時の水平(X)方向移動量は1だった。
ここから左に0.5動かしたいとすると

挟み角度: 112°
中心角度: -63.5°
にすれば良い
視軸レンズ8
こうすると上下の高さを変えずに目標物を真ん中に持ってくることが出来る。

グラフにしてみるとわかりやすいかも。

1回目の調整後がこの状態

赤丸がレンズの中心で緑と青の線が偏心リング最厚部の位置を表している。
偏心量計算1
1回目調整後の状態は
水平方向(X)の偏心量が-1

垂直方向(Y)の偏心量が1
レンズ中心位置は内外リング偏心量の

X成分Y成分を足し合わせて±反転した値になる
(薄い側基準なら±反転しなくて良い)

2回目の調整後はこれ
偏心量計算2
水平方向(X)の偏心量が-0.5
垂直方向(Y)の偏心量が1の状態。

グラフにしたらわかりやすいかな?と思ってやってみたけど逆にややこしくなった気がするぞ。。

とにかく細かいことは考えずに、この原理を頭の片隅に置いてやってみれば体で覚えてくる。


と、ここまでが基本の視軸調整の話。

次回は左右の視軸を中心軸と
一致させる方法について語ろうと思う。

ここが一番難しくて、ねずみが一番調整の肝だと思っているところ。


・・・視軸調整ネタが長くなってきたけど
まだまだ書けてないことがいっぱいあってキリがないので

少し休憩で別の話題を入れようかと思います。

今回は視軸調整の具体的な
やり方について

説明する。

用意するものは平行器
(平行器の自作については
過去のブログ参照)

IMG_4122
これがないと視軸調整は出来ない。

そんな物なくても
覗いて違和感ないように合わせればいいんでしょ?とか思う人もいるかもしれないけど。
ねずみは断言する、それは絶対に無理。

人間の目は多少左右の映像がズレていても
目と脳で無理やり補正して合わせてしまうのでどっちにどれだけズレてるかは分からない。

大きくズレていれば覗いた瞬間に目が拒否反応を示すけど、少しのズレだと気付かずに長時間見続けてしまい、後で目眩や頭痛に襲われることになる。
平行器無しで調整すると、この厄介な
「少しズレた双眼鏡」を生み出してしまう。

なので視軸調整するときは必ず平行器を使ってバッチリ合わせよう、と言う話。

・・・また前置きが長くなってしまった。


視軸調整といっても実際やる事は単純で
平行器越しに双眼鏡を覗いて

遠くの目標物の像を重ねるだけ。

ねずみがいつも目標物として使ってる目標物は
以前の記事でも紹介した3km先の鉄塔。
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日本望遠鏡工業会によれば目標物の距離は
倍率の2乗×10m以上を推奨しているので
8倍だったら640m
10倍なら1km離れていればOK

ねずみ的には最低
2kmぐらいは離れてて欲しいかな〜と思う。


調整されてない双眼鏡に平行器をあてて
鉄塔を見るとこう見える
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写真ではちょっと見えづらいけど、鉄塔の先端の高さも左右もズレていることが分かる。

これはあくまで一例でズレの方向も量も個体によって様々、もっと盛大にズレている双眼鏡も沢山ある。

プリズムを通った側の視界は接眼レンズから離れているせいで見える範囲がかなり小さいけどそこは一旦無視して大げさな絵にしてみる。
視軸レンズ1
青が左、赤が右の視界



左右に分けて描くとこうなる。
視軸2
この状態から視軸を合わせるには、
鉄塔の像が真ん中で重なるように視軸を動かせば良い。


具体的にどうするかというと
1.プリズムを動かすタイプの場合
視軸プリズム1

目標物を動かしたい方にプリズムを動かす。
視軸プリズム2


水平方向に動かしたい場合は、内外両方のプリズムを動かして上下の移動量を相殺してやる。
視軸プリズム3




2.偏心環でレンズを動かすタイプの場合
視軸レンズ2


視界を動かしたい方向にレンズを動かす。
視軸レンズ3
つまり目標物を動かしたい方向と逆方向に

レンズを動かせば良い。


水平方向に動かしたい場合も同じ。
視軸レンズ5
作業としてやる事はこれだけ。


なぜそうなるかは絵に書いてみればわかるけど、長くなるのでここでは説明しない。


視軸調整後の平行器を通した視界はこうなる。
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鉄塔先端の像が一致している。

ちなみに左右どちらかだけを動かしても合わせる事はできるけど、なるべく両方の視軸を動かして中間の位置で合わせる事をオススメする。

この辺の最適なやり方はまだ模索中だけど

双眼鏡2
片側だけで合わせてるといくらやっても↑この状態から抜け出せないので、まずは左右両方で合わせに行くって意識を持っておいた方がいいと思う。

プリズムを動かすタイプはここまでの知識だけで比較的簡単に合わせることができる。
(破損のリスクは伴うけど、)


レンズを動かす偏心環タイプは、やってみるとわかるけど
追い込んで行くほど難しくなってくる。
レンズの移動量を極座標で考える必要があるので頭が混乱してくるんだよね。。

慣れれば感覚でやれるようになるけど
最初はかなり難しい!

なので

次回はこの偏心環タイプについて
もっと詳しく説明するつもり



その3に続く。

管理人ねずみのお気に入りの中で
現在唯一の国産機

ニコンの9×35 7.3°
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8×30に比べてあまり人気が無いのか?
中古市場では比較的安値で多く出回っている。
ねずみも最初は人気の8×30の方を使っていたけど歪曲が大いのが難点で
妻に見せたところ「酔うからムリ!」
と言われてしまい、それから
出番が無くなり手放してしまった。


その後入手したのがこの9×35

あまり9倍の双眼鏡って聞かないけど、使ってみると絶妙な倍率で、鳥見とか星見とか対象を決めて観察するのに実にちょうどいい。
見かけ視界も65.7°と広角なのに無理して広げてる感じがない、歪曲も少なくはないけど8×30に比べるとマシに感じる。

この肩幅の広い立ち姿と

引き締まった黒がカッコいい。
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ねずみが入手した個体はそこそこ状態が良くて薄い曇りがある程度。
そのままでも使えなくはなかったけどやっぱり真の実力を見たいので分解クリーニングすることにした!

ねずみの場合修理するところが醍醐味なのでむしろ状態が悪い方がやりがいがあって楽しいのだが、。こんな感覚で双眼鏡買ってるのは病気かもしれないな・・・


分解してみると

あらゆる部品の端々から品質に対するこだわりが伝わってくる。
Zeissのような変態的な品質の良さとは少し違って、コストと性能を上手くバランスさせた日本流の高品質って感じ。


対物レンズの遮光筒内部には細かい溝が刻まれていて艶消し黒塗装もとにかく綺麗、でも筒自体の
長さは短め。対物側のプリズムと干渉しないように短くしてあるのかな?
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参考にデルトリンテム1Qの遮光筒はコレ
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長すぎでしょ。。
そして薄すぎ、溝細かすぎ。
どうやって加工してるんだろうか??
対物レンズから入った余計な光は一粒たりとも外に漏らさないと言う変態的?なこだわりが伝わって来る。


ニコンの方は遮光筒が短い代わりにプリズムに遮光カバーが設けられている。
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遮光筒が長くできなくて仕方なくそうしたのかもしれないけど、筒とカバー両方あるのはなんか贅沢な気分になる。

接眼側のプリズムはタップリ大きくて光路に合わせた非対称形状、真ん中には遮光溝も彫られている。
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さすがにCARLZEISSオーバーコッヘンみたいなコバ塗りまではしてないけど、限られたコストでやれることは全部やってる!って感じが伝わって来る。
あとプリズム周りのボディの
丸みがいいね〜。




んで、今回気になっていた
プリズムの曇り。

写真左側、反射面の真ん中が曇ってるので覗いた時にも結構気になってた。
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こちらがクリーニング後
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完璧にキレイにした!
拭き跡を残さないようにするには、一面を端から端まで一回でサッと拭き取らないと上手くいかないんだけどプリズムがやたら大きいので難しい。


接眼レンズ内部は状態が良かったので
分解はせずに外側の面だけキレイにした。
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リスクを考えて分解は最小限に。

最後は視軸を合わせて終了。
最終チェックに三脚を使ったけど

調整作業自体は手持ちでやった方が
効率的。

IMG_3013
こうしてキレイになったNikon 9×35で
いろいろな対象を見てみたところ


一番良さが際立った観察対象は
月!
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三脚に据えて月を見ると臨場感が凄くて

月が球体だってのが伝わって来る。
iPhoneあてて撮ったけど、
写真では伝わらないな〜。

普通に景色を見るとこんな感じ。
IMG_3829
やや黄色い着色があるので
草木の緑が生き生きして見える。

でもかなり明るいので昼間見ると
ちょっと目が疲れるかな・・・


こだわりの作りから生まれる
納得の高性能!

粗悪品も多い国産ポロだけど
やっぱりNikonは別格です。

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