タグ:鉄塔

久々の更新となりますが
今回は毎度お馴染み
視軸調整ネタの続きです。

かれこれ二年ほど前から書いていて
前回の記事を書いてから
もう一年近く
経ってしまった。

前回の記事はコチラ↓
http://mouse830.livedoor.blog/archives/15772259.html

前回までは
双眼鏡の視軸調整機構の紹介や
視軸を中心軸に合わせる
方法について
紹介してきたが

今回からはもうちょっと踏み込んで
どれくらいのズレ加減を狙って調整
すべきか?を深掘りしていこうと思う。


例によって、、ここからの説明は
ねずみが断片的に得た知識を
繋ぎ合わせて考察したものなので
専門の方が読んでいたら是非
ご指摘、アドバイスお願いします。


本題に入る前にまず
「視軸」ってそもそも何なのか?

について整理しようと思う。
眼球
視軸とは眼球の中のレンズである
「水晶体」の中心と
イメージセンサーである網膜の中で
最も感度の高い場所
「中心窩」を
繋いだ直線のことである。

・・・って言ってもピンと来ないけど

簡単に言うと「視線」のことで
人間が見ている方向のことを
指している。

ちなみに眼球の中でも
光軸と視軸は5°程度ズレているらしいが
今回の話には関係ないので割愛する。

過去の記事↓でねずみは
http://mouse830.livedoor.blog/archives/9859556.html
双眼鏡の左右の光軸ズレを
調整する作業のことを
「視軸調整」と呼んできた。
これは一般的にも使われる表現だが

本来の意味の「視軸」は
眼球の中にあるものであって

双眼鏡にあるものでは無いのだ。

「視軸調整」を正しく表現すると
「系の光軸の左右
平行度調整」
なのである。

・・・出だしから話がややこしく
なってしまって申し訳ない。

ここからはもう少し分かりやすく
「双眼鏡の系の光軸」と
「眼球の視軸」の関係を
お馴染みの
絵を使って
視覚的に説明してみようと思う。

この2つの関係性が分かれば
自ずと調整の際に狙うべき
ズレ加減も分かってくるはずだ。


今回からは
より正確に表現するため
今までよく使って来たプリズム無しの
簡易的な双眼鏡の絵↓では無く
双眼鏡_平行1

プリズム入りの絵↓に変更してみる。
ポロ_平行


まず
無限遠にある目標(鉄塔)を
光軸がピッタリ平行な理想の双眼鏡で
覗いてみたとする。

赤い線が目標物から届いた光と
考えて欲しい。

ポロ_平行2
この時、左右の視界とも
ど真ん中に目標物が来るので
それを覗いた時の眼球の視軸も
左右がピッタリ平行になる。

人間は目標物を一つに重ねるように
左右の視界を合成して認識するので
その時の視界は一つの円に見える。
視界_平行
これは裸眼で無限遠の目標物を
見ている時と同じ状態なので
違和感無く見ることが出来る。



次に発散のある双眼鏡を考えてみる。
ポロ_発散
「発散」とは
双眼鏡の系の光軸が目標物に対して
外に開いた状態になっていて

対物レンズに正面から真っ直ぐ入った
光が接眼レンズから出て来た時に
外側に広がっていく状態を指す。

この時、目標物は視野の中で
内側に寄って見えるため
このズレは内方ズレと呼ばれる。
ポロ_発散2
この時、眼球の視軸は目標物(鉄塔)を
一つに重ねて見ようとするので
寄り目の状態になる。

そして視界は一つの円では無くて
こんな感じになる。
視界_内方ズレ
双眼鏡を覗いた時の視界って言うと
こっちをイメージする人が
多いかも知れない。

通常、人間は
近くの物を見る時には少なからず
寄り目の状態になっているので

このような内方ズレについても
特に違和感なく見ることが出来る。
あまり極端なのはNGですけどね。。
近距離裸眼

続いて
「発散」の反対の「集中」の場合は
双眼鏡の系の光軸が目標物に対して
内側にクロスした状態になっている。
ポロ_集中
対物レンズに正面から入った光が
接眼レンズから出た時に
内側に集まるので集中と呼ばれる。


この時は視野の中で
目標物が外に離れる外方ズレとなる。
ポロ_集中2
この状態で左右の目標物を
一つに重ねるためには寄り目の逆の
反り目(そりめ)にする必要があるが

これは通常あり得ない状態なので

とても気持ち悪くて目が疲れる。

その時の視界は
左の視界が右に、右の視界が左に
広がった状態となる。
視界_外方ズレ
まぁ、この状態では
視界がどうのよりも目が疲れて
まともに見ていられないので、、
あんまり関係ないですね。

ちなみにPENTAXのパピリオは
近くにピントを合わせた時に
意図的にこのようなクロスの
光軸を作って、眼の視軸を平行に保つ
ギミックが組み込まれているのだが
これについてはまた別の記事で
詳しく紹介したいと思う。


ここまでの説明で
分かってもらえたと思うけど
双眼鏡を調整する時には
ざっくり言うと
ズレ0〜弱内方ズレが良くて
外方ズレは良くない
と言うことになる。

JIS B7121に規定されている
双眼鏡の光軸平行度規格でも
内方ズレ(発散)に比べて
外方ズレ(集中)の許容度が
かなり厳しく設定されているのは
この理由によるものなのだ。


ここで最初の話に戻ると
系の光軸のことを視軸、と呼ぶのは
正しい表現では
なかったのだけど
系の光軸の平行度を調整すること

即ち、人間が覗いた時の
視軸を調整することなので
「視軸調整」とはなかなか
的を射た表現だなぁと改めて思う。
てな訳で、
これからもねずみはこの呼び方を
使っていくつもり。


次回からは、さらに踏み込んで
市販の双眼鏡がどれくらいの
ズレ加減で調整されているのか?
を検証しながら
最適な狙い値を探って行こうと思う。


最近、少しサボり気味でしたが、、
ここからは少しペースアップして
更新していくつもりなので
今後ともよろしくお願いします!

2号機、3号機製作の話

平行器は一台あればいいと思っていた管理人ねずみ。日本望遠鏡工業会さんのホームページを見ると眼幅60mm、64mm、70mm の3種類のラインナップがあることに気づく。

ねずみが作った初号機は眼幅64mm。


自分の眼幅がこんなもんだからそれに合わせたのである。大体周りの人を見渡してみても人の眼幅は63〜65くらいに見える、測ったわけじゃないけどね。
子供はもっと短いから60mmは子供用か?70mmの眼幅の人なんていないぞ??
と最初は意味が分からなかったが、よくよく考えていくうちに気がついた。

双眼鏡はどの眼幅でも視軸がズレないようにしないといけない、そのためには双眼鏡の左右の視軸と真ん中の回転軸の3本の軸を平行に合わせる必要があるのだ。

つまり60mmと70mm両方で視軸が合ってる状態にしないといけないって事で平行器は2種類は必ず必要になる。64mmは日本人の平均的な眼幅なのでおそらく最終調整用だろう。

では1つの平行器で60mmと70mmの両方を調整することはできないのだろうか??
どうなるのか簡単に絵を描いてみた。

まずは64mmの平行器で眼幅64mmの双眼鏡を見た場合
FullSizeRender
双眼鏡の左右の視軸が一致していれば目標物(鉄塔)は一つに重なって見える。

次に64mmの平行器で眼幅60mmの双眼鏡を見た場合
FullSizeRender
双眼鏡の視軸が一致していたとしても、プリズムで反射した右の光とハーフミラーを通り抜けた左の光が一致しないので目標物はズレて見える、それ以前に視野の円がズレて見える。

なので

視軸調整をちゃんとやるには双眼鏡の眼幅に合わせた60mm、64mm、70mmの3台が必要なのである。平行器を自作されてる方のブログ等をみてもこの点に言及されている方はいないと思われる。

まぁ最低限自分の眼幅で合わせれば自分が使う分には不自由しないから一台でいいのかもしれないけど、どうせやるなら本当の視軸合わせにチャレンジしてみたいよね。

・・・と。前置きが長くなったが

そんな理由で60mm、70mmの平行器製作に取り掛かることにしたのである。

平行器作成の途中だけど
今回は鉄塔の話。

ねずみがいつも双眼鏡の視軸調整に
使っている目標物がある、
それが家の窓から見えるこの鉄塔。
IMG_1447
平行器や双眼鏡の視軸調整で
いつもお世話になっている。

今回はこの鉄塔から
どんな情報が得られるか
検証してみようと思う、もちろん
双眼鏡マニアには重要な情報である。

まずはこの鉄塔をGoogle earthで測定すると家からの距離が3.03km
FullSizeRender

家から見えてる向きで幅を測ると
FullSizeRender
下の方は9.63m。

FullSizeRender
上の方は2.94m。

さらに送電線を保持してるアームの
上下の間隔を写真から推測すると
鉄塔の上の幅の1.5倍だったので
約4.4mとなる。
FullSizeRender

まずはこれがどのくらい信用できる
数字なのか検証してみる。
鉄塔の近くにスズキのハスラーらしき
車があったので全長を測ってみると
FullSizeRender
3.32m

カタログ上のハスラーの全長は
3.395mなので誤差は6%程度。
スゴい、Googleの衛生写真って
こんなに正確なんだな。。

さらに鉄塔の鉄骨を調べてみると
等辺山型鋼というL字材で一辺の長さは
大きいもので250mmらしい。
この鉄塔に使われてるものが
何mmのものか分からないけど
不利めにみて250mmとする。
鉄塔の両端のラインはこの鉄骨を
ほぼ斜め45°から見てるので
幅250×1/√2=177mmとなる。

画像から測ったアバウトな数字もあるけどこれで鉄塔の寸法が大体分かった。

これらの寸法から角度に変換して行くと
鉄塔の下の方の横幅は
atan(9.63/3030)=0.182・・・°
度分秒に変換すると
約10分56秒

鉄塔の上の方の横幅は
atan(2.94/3030)=0.0555・・・°
約3分20秒

送電線を保持してるアーム上下の間隔は
atan(4.4/3030)=0.0832・・・°
約5分00秒

鉄骨一本分は
atan(0.177/3030)=0.00334・・・°
約12秒
となる。



平行器の調整ではズレを
鉄骨一本以内に収めたので
誤差は12秒以内
なかなか良い精度では?

双眼鏡の視軸調整の目安として考えると
JIS B 7121で規定される8倍双眼鏡
高性能品AA級に許される
左右の内方ズレは7分30秒以内なので
鉄塔の上2個分ズレていいことになる。
鉄塔の下1個分ズレてたらNG。

左右の外方ズレは結構厳しくて
2分30秒以内なので鉄塔の上1個分
ズレてもNGになる。

・・・ねずみ的にはちょっとでも外方ズレの時点でNGなのだが、その話はまた別の記事で。

上下ズレもこれまた厳しく
2分30秒以内なので
送電線のアーム間隔の半分以下に
収める必要がある。

と鉄塔一本あればいろんな事が分かる。

双眼鏡マニアの方はみんなそれぞれ
お気に入りの目標物を
持ってるんじゃないかな?


この鉄塔を使った視軸調整の話は
また追々書いていこうと思う。
ちょうどいいところに立っててくれてありがとう!鉄塔に感謝。

↑このページのトップヘ