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久々の更新となりますが
今回は毎度お馴染み
視軸調整ネタの続きです。

かれこれ二年ほど前から書いていて
前回の記事を書いてから
もう一年近く
経ってしまった。

前回の記事はコチラ↓
http://mouse830.livedoor.blog/archives/15772259.html

前回までは
双眼鏡の視軸調整機構の紹介や
視軸を中心軸に合わせる
方法について
紹介してきたが

今回からはもうちょっと踏み込んで
どれくらいのズレ加減を狙って調整
すべきか?を深掘りしていこうと思う。


例によって、、ここからの説明は
ねずみが断片的に得た知識を
繋ぎ合わせて考察したものなので
専門の方が読んでいたら是非
ご指摘、アドバイスお願いします。


本題に入る前にまず
「視軸」ってそもそも何なのか?

について整理しようと思う。
眼球
視軸とは眼球の中のレンズである
「水晶体」の中心と
イメージセンサーである網膜の中で
最も感度の高い場所
「中心窩」を
繋いだ直線のことである。

・・・って言ってもピンと来ないけど

簡単に言うと「視線」のことで
人間が見ている方向のことを
指している。

ちなみに眼球の中でも
光軸と視軸は5°程度ズレているらしいが
今回の話には関係ないので割愛する。

過去の記事↓でねずみは
http://mouse830.livedoor.blog/archives/9859556.html
双眼鏡の左右の光軸ズレを
調整する作業のことを
「視軸調整」と呼んできた。
これは一般的にも使われる表現だが

本来の意味の「視軸」は
眼球の中にあるものであって

双眼鏡にあるものでは無いのだ。

「視軸調整」を正しく表現すると
「系の光軸の左右
平行度調整」
なのである。

・・・出だしから話がややこしく
なってしまって申し訳ない。

ここからはもう少し分かりやすく
「双眼鏡の系の光軸」と
「眼球の視軸」の関係を
お馴染みの
絵を使って
視覚的に説明してみようと思う。

この2つの関係性が分かれば
自ずと調整の際に狙うべき
ズレ加減も分かってくるはずだ。


今回からは
より正確に表現するため
今までよく使って来たプリズム無しの
簡易的な双眼鏡の絵↓では無く
双眼鏡_平行1

プリズム入りの絵↓に変更してみる。
ポロ_平行


まず
無限遠にある目標(鉄塔)を
光軸がピッタリ平行な理想の双眼鏡で
覗いてみたとする。

赤い線が目標物から届いた光と
考えて欲しい。

ポロ_平行2
この時、左右の視界とも
ど真ん中に目標物が来るので
それを覗いた時の眼球の視軸も
左右がピッタリ平行になる。

人間は目標物を一つに重ねるように
左右の視界を合成して認識するので
その時の視界は一つの円に見える。
視界_平行
これは裸眼で無限遠の目標物を
見ている時と同じ状態なので
違和感無く見ることが出来る。



次に発散のある双眼鏡を考えてみる。
ポロ_発散
「発散」とは
双眼鏡の系の光軸が目標物に対して
外に開いた状態になっていて

対物レンズに正面から真っ直ぐ入った
光が接眼レンズから出て来た時に
外側に広がっていく状態を指す。

この時、目標物は視野の中で
内側に寄って見えるため
このズレは内方ズレと呼ばれる。
ポロ_発散2
この時、眼球の視軸は目標物(鉄塔)を
一つに重ねて見ようとするので
寄り目の状態になる。

そして視界は一つの円では無くて
こんな感じになる。
視界_内方ズレ
双眼鏡を覗いた時の視界って言うと
こっちをイメージする人が
多いかも知れない。

通常、人間は
近くの物を見る時には少なからず
寄り目の状態になっているので

このような内方ズレについても
特に違和感なく見ることが出来る。
あまり極端なのはNGですけどね。。
近距離裸眼

続いて
「発散」の反対の「集中」の場合は
双眼鏡の系の光軸が目標物に対して
内側にクロスした状態になっている。
ポロ_集中
対物レンズに正面から入った光が
接眼レンズから出た時に
内側に集まるので集中と呼ばれる。


この時は視野の中で
目標物が外に離れる外方ズレとなる。
ポロ_集中2
この状態で左右の目標物を
一つに重ねるためには寄り目の逆の
反り目(そりめ)にする必要があるが

これは通常あり得ない状態なので

とても気持ち悪くて目が疲れる。

その時の視界は
左の視界が右に、右の視界が左に
広がった状態となる。
視界_外方ズレ
まぁ、この状態では
視界がどうのよりも目が疲れて
まともに見ていられないので、、
あんまり関係ないですね。

ちなみにPENTAXのパピリオは
近くにピントを合わせた時に
意図的にこのようなクロスの
光軸を作って、眼の視軸を平行に保つ
ギミックが組み込まれているのだが
これについてはまた別の記事で
詳しく紹介したいと思う。


ここまでの説明で
分かってもらえたと思うけど
双眼鏡を調整する時には
ざっくり言うと
ズレ0〜弱内方ズレが良くて
外方ズレは良くない
と言うことになる。

JIS B7121に規定されている
双眼鏡の光軸平行度規格でも
内方ズレ(発散)に比べて
外方ズレ(集中)の許容度が
かなり厳しく設定されているのは
この理由によるものなのだ。


ここで最初の話に戻ると
系の光軸のことを視軸、と呼ぶのは
正しい表現では
なかったのだけど
系の光軸の平行度を調整すること

即ち、人間が覗いた時の
視軸を調整することなので
「視軸調整」とはなかなか
的を射た表現だなぁと改めて思う。
てな訳で、
これからもねずみはこの呼び方を
使っていくつもり。


次回からは、さらに踏み込んで
市販の双眼鏡がどれくらいの
ズレ加減で調整されているのか?
を検証しながら
最適な狙い値を探って行こうと思う。


最近、少しサボり気味でしたが、、
ここからは少しペースアップして
更新していくつもりなので
今後ともよろしくお願いします!

「双眼鏡の視軸調整その3」
の記事を書いてから
もう1年も経ってしまったようだが
そろそろ続きを書いてみようと思う。

前回の記事はコチラ↓

http://mouse830.livedoor.blog/archives/10100337.html

これまで二重偏心環タイプの
視軸調整の方法について
詳しく紹介してきたが今回は
「視軸を中心軸に合わせる方法」を
紹介しようと思う。

文献等の情報が見つからないので
ここで紹介するほとんどは
ねずみが試行錯誤して独自に
たどり着いた方法である。
もっと正確な情報をご存知の方は
是非アドバイスお願いしたい。


まず中心軸とはなにか?
眼幅を合わせるために左右の鏡筒を
開閉する時の回転中心となる軸のことで
一軸式の場合は真ん中の軸を指す。
FullSizeRender
タンクローとか二軸式のものは
この軸がないけど便宜上、真ん中に
仮想の中心軸があると考えれば良い。


そして
「視軸を中心軸に合わせる」とは
左右の視軸の向きを中心軸と
一致させること。
双眼鏡1

これは「双眼鏡の視軸調整その1」
の記事でも触れているけど↓
http://mouse830.livedoor.blog/archives/9859556.html

一つの眼幅で視軸を合わせた時。
つまり平行器1台で視軸を合わせた時
左右の視軸は平行になるが
中心軸と一致しているかは分からない。
例えばこんな感じで両方とも揃って
左にズレているなんてこともあり得る。
双眼鏡2
この状態でも視軸は合っているけど
眼幅を変えた時に視軸がズレる
という大きな問題が生じるのだ。

・・・と言っても
ピンと来ないかもしれない。

そこで
この現象を分かりやすくするために
こんなものを作ってみた。

名付けて「視軸見える君1号」
FullSizeRender

双眼鏡の視軸を模式化したもので

矢印が左右の視軸の向きを表している。

例えば眼幅60mmの位置で
視軸を合わせた時、上の写真のように
左右とも左にズレていたとする。
(実際はどちらにズレているか
この時点では分からない)

この状態で眼幅70mmに広げると
FullSizeRender
こうなる。
左の視軸が上にズレて
右の視軸は下にズレるのだ。

眼幅70mmの平行器を通して見た時の
視界はこうなる。
左の視界は上に動き
右の視界は下に動く。
(目標物の動きとは逆)
中心軸1


60mmで左右とも上にズレていた場合は
FullSizeRender

70mmにするとこうなる。
FullSizeRender
これは外方ズレの状態で
平行器を通した視界はこうなる。

中心軸2


もうお分かりだと思うが
眼幅60mmでも70mmでも
視軸が一致してる状態になれば
視軸と中心軸が一致したことになるのだ。


ねずみはこの調整をとても重視している。
眼幅を変えても視軸がズレないってのは
もちろんだけど
視軸が中心軸に合っているほうが
どちらかに偏っているよりも
見え味が良いような気がするからだ。

実際のところ
ねずみはこれを見分けるほどの
眼力をもっていないし
そんな気がするだけなのだけど。。

中心軸と視軸が一致してる状態が
一番ニュートラルな状態であって
その双眼鏡の性能が最大限
引き出されてるのでは?思っている。

ねずみがわざわざ眼幅違いの
平行器を作っているのも
この中心軸合わせのために他ならない。
FullSizeRender

作業的には
60mmで視軸を合わせて
70mmで視軸を合わせて
また60mmで合わせて
70mmで合わせて・・・
を繰り返していけばいつかは
中心軸に合うことになるが
この方法では合うまでに
なかなか時間がかかる。

ねずみの場合は
基本的には眼幅60mmの状態だけで
この調整を行なっている。
手順としては
まず60mmで視軸を合わせてから
70mmにした時のズレ方を確認する。

ここで「視軸見える君」を使って
60mmの時の視軸が
どっちにズレていたのか?を推定する。
FullSizeRender
例えば60mmの時の視軸が
左右とも左にズレていると分かれば
60mmの状態で視軸を少し右に
動かしてみて
70mmでのズレの変化を確認する。
足りなければもう少し右にずらして・・
を繰り返す。
そして70mmにしても視軸がズレない
状態になったところで、最後に
自分の眼幅と同じ64mmの平行器で
精密調整して完了。と言った感じ。

今のところ
このやり方が一番効率が良いのだけど
もっと良い方法をご存知の方は
是非教えて欲しい。


これまでいろいろな双眼鏡の修理記録や レビュー記事なんかも書いて来たけど
何故かこの視軸調整の記事が
一番アクセス数が多い。

いったいどこに需要があるのか
分からないのだけど、、
多くの方が読んでくれているようなので
今後もこのネタは続けて行きたいと思う。


次回は内方ズレ?外方ズレ?
どこを狙って視軸調整するのが良いか。
市販の双眼鏡はどこを狙ってるのか?
その辺りについて書いてみようと思う。

いつになるかはわかりませんが
お楽しみに。

Canon10×30IS防振双眼鏡の整備中に
像の倒れに気付いてしまった
管理人ねずみ。
FullSizeRender

クリーニングを終えて組み上げた
10×30ISを再度分解して
プリズム単体の倒れチェックを
やってみることにした。

FullSizeRender
まずは左右の倒れ差チェック
FullSizeRender
見た感じ1°くらいはズレている
どちらか、もしくは両方のプリズムに
倒れがあるに違いない。


次に絶対的な倒れチェック
まずは左側。
FullSizeRender
ほぼ倒れ無しの良好な結果。
FullSizeRender

続いて右側。
FullSizeRender
こちらはおよそ1°の倒れがある。
FullSizeRender
原因は右側だった。
単体でみると像の倒れ1°は
ギリギリ許容範囲ではあるが
左右の倒れ差はJIS一般品でも
40分以内なので規格NG。

前にも書いた通り、このプリズムは
全て貼り合わせで出来てるので
使用中にズレることは絶対に無くて
製造時からこの倒れがあったって
ことになる。


それにしても世界のCanonが
こんな状態で出荷するだろうか、
検査で引っかからなかったのか?
FullSizeRender
不思議に思いつつ
左右のプリズムをよーく見てみると
右側だけ鉛筆で丸印が書かれている
ことに気が付いた。
右プリズムに何かあったのだろうか?
そういえば、左プリズムだけ曇ってて
右はクリヤーだったのも
なんだか腑に落ちない、
ディオプターがある右側の方が
グリスの揮発で先に曇りそうなのに。

ひょっとして過去に修理を受けて
右側だけプリズムを交換されたのか?
だとすると
交換品に倒れの大きいものが
使われたことになるが・・・
真相はわからない。

倒れがあるのは事実なので
なんとか修正したいのだけど
プリズムを交換せずに修正するには
プリズムどうしの接着を剥がして
角度修正するしか手がない。

すでに感覚が麻痺しているねずみは
この方法を選択したのだが、、
プリズムの接着を剥がすなんてのは
ほとんど破壊に近い行為なので
絶対に真似しないでくださいね!


まずプラスチックのケースから
プリズムを土台ごと引っ剥がす。
土台の金属プレートはネジと接着剤で
ケースにガッチリ付けてあって
やはり分解前提の構造じゃ無い。
FullSizeRender
それから
貼り合わされた3つのプリズムのうち
唯一剥がせそうな位置に付いてる
やつを剥がしにかかる。

熱湯に浸けたりコジッたり
1時間ほど格闘してなんとか剥がした
FullSizeRender
力ずくで外そうとした時に
金属プレートがたわんで
プリズムの角に接触したせいで
矢印の部分が欠けてしまった。
運良く光路の外の部分だったが
こう言うことが起きるので
やっぱりオススメはしない。

しかも。
プリズムの間に挟まってる
遮光環の役割と思われる黒いシートが

接着剤と一緒にボロボロに
なってしまった。
FullSizeRender

なのでこれもなんとか再生してみる
FullSizeRender
まず光路の部分を
丸くマスキングしてから
極薄グラファイト塗膜を形成出来る
「ファインスプレーブラッセン」
で塗装する。
FullSizeRender
ガスコンロで焼き付けてやると
強固な皮膜が出来て遮光性もバッチリ。
・・ってこれも
本来の用途では無いので
全くオススメしません。


そしてこのプリズムを
倒れを確認しながらUVレジン
「パジコ星の雫」で貼り合わせていく
IMG_7846
貼り付けるプリズムを
上下方向に回転(チルト)させると
像がどちらかに回転していくので
倒れが0°になった瞬間に
UVライトを照射して固める。

この作業は非常に難しかったが
悪戦苦闘しながらも
結果的にはほぼ倒れ0°の状態で
接着することが出来た
FullSizeRender
昼間やると日光でレジンが
固まってしまうので夜にやるのがコツ。
かなり接着力が強いので
やり直しは出来ない一発勝負。

こちらが貼り合わせ後のプリズム。
FullSizeRender


プリズムを貼り合わせたことで
また視軸が大きくズレたので
再度、対物レンズ位置で調整をかける。
FullSizeRender
今度は内方ズレ約2分に調整した。
やっぱりちょっとでも
外方ズレがあると違和感が出るので
弱内方ズレの方が良い。


視軸はなんとか調整出来たものの
プリズムの位置が変わったせいで
光路長が変わってしまったようで
ディオプターの0位置がかなりズレた。
FullSizeRender
もちろんディオプターも再調整
出来る構造にはなってないので
このまま使うことにする。



今回こだわって直した像の倒れは
道路標識を使った最終チェックでも
問題なし
FullSizeRender


こんなに苦労すると思ってなかったけど
奇跡的に?蘇った10×30ISの性能は
本当に素晴らしい。
FullSizeRender
写真では伝わらないと思うけど
視界はクセが無くクリヤーそのもの
スッキリ明るくて着色もほぼ感じない。

歪みも少なく端までフラット。

もちろん防振の威力は凄まじくて
視界がピタリと止まって見える。


唯一、弱点として挙げられるのは
色滲みがやや多いことだと思う。
FullSizeRender
白い柱の左側に紫の縁取りと
写真では分かりづらいけど
反対側に黄色い縁取りが出る。

バリアングルプリズムが手振れ補正
する瞬間に出るのかと思ったけど。
電源OFFでも同じように出るので
もともとの色収差が大きいのかな?
まぁ、色滲みよりも
防振の気持ち良さが完全に勝るので
実用上はほとんど気にならない。


最後に、ポロⅡ型プリズムについて
少し考えてみる。
FullSizeRender
ポロⅡ型の手持ち双眼鏡って
かなり種類が少なくて
ねずみが持ってる中では10×30ISと
ロス社のSTEPLUX 7×50の2台だけ。
FullSizeRender
このSTEPLUXのようなビンテージで
ミリタリーっぽい双眼鏡以外では
ほとんど見かけないポロⅡ型を
なぜCanonは現行の防振双眼鏡に
使っているのか?

その理由は↓の特許資料に記載がある。

公開番号1999-064738

ポイントとしては
ポロⅡ型の光路オフセットを利用して
眼幅調整が出来るってことと
FullSizeRender
ポロⅠ型よりも小型化
出来るってこと。

ポロⅠ型の場合
三角形のプリズムが
前後に突き出した形状のために
光軸方向に厚みが増えてしまうのと
プリズム自体が接眼レンズの邪魔になる
と言う弱点がある。

そのため接眼レンズ径を大きく
出来なかったり
FullSizeRender

接眼レンズを大きくするかわりに
プリズムから離した配置になる
場合が多い。
FullSizeRender

Nikonのミクロン8×30の記事でも
接眼筒にプリズムがちょっと
はみ出してるところを紹介した。

FullSizeRender
ポロⅠ型はこの辺のレイアウトに
苦労するようだ。



一方のポロⅡ型は三角のプリズムを
光軸に対して横に倒した形なので
光軸方向の厚みを薄く出来る。
FullSizeRender
尚且つプリズム射出面の周囲に
邪魔なものがないので
大きな接眼レンズでも射出面
ギリギリまで近づけられる。

すると光路径が最も細くなる
焦点の近くにプリズムがくるので
プリズム自体も小さくて済む。
対物側にもプリズムが突き出ないので
バリアングルプリズムを配置するにも
有利なことが分かると思う。

こうやって並べてみると
レイアウトの違いがよくわかる。
FullSizeRender
赤で囲んだ所がプリズムのスペースで
ポロⅡ型は接眼寄りでかなり薄い。
つまり10×30ISが防振装置付きでも
これだけ小型軽量に仕上がってるのは
ポロⅡ型のおかげなのだ!
・・・でもなんで世の中には
ポロⅡ型こんなに少ないんだろう?
もっとメジャーになっても良いのにな。


えっと、、偉そうに
いろいろ語っちゃいましたが
ポロⅡ型採用の裏には
開発者しか知らないもっと深〜い
理由があるのかも知れませんね。
ご存じの方がいたら
是非コメントいただきたいです。

FullSizeRender
10×30ISは対象物を観察するには
これ以上ないほどの性能を備えた
素晴らしい双眼鏡。

じゃあ、これ一台あれば
他の双眼鏡はもういらない!
かと言うと、そんなことはなくて
綺麗な景色を鑑賞する時には
もっとこってりした見え味の
6倍〜8倍が欲しくなる。

しかも10×30ISのニュートラルな
見え味の後にビンテージ双眼鏡を見ると
そのクセの強い味が際立つので
見比べるのがより一層楽しくなるのだ。

これから、出かける時は
防振+ビンテージの2台持ちが
定着しそうな予感。。
また荷物が増えちゃうなあ。

2022年最初のブログは
Canonの防振双眼鏡10×30ISの話

ねずみは正直、この双眼鏡を
入手すべきか迷っていた。

ずっと前からその性能を
確かめてみたいと思っていたのだけど
もしかしたらその圧倒的な性能に
魅了されてしまって
ビンテージ双眼鏡熱が冷めてしまう
のでは無いかと不安だったのだ。
(値段を見て躊躇しただけです)

ネット上の評判を見ても

防振の威力は絶賛されていて
単純な解像度ではツァイスや
スワロフスキーの
ハイエンドモデルを
超えるほど
優れているらしい。
これは覗いてみないわけにいかない。

しかし、、いざ買うとなると
特に決まった観察対象を持たない
ねずみが新品を購入するのも勿体ないし
なにより
ブログネタとして面白く無いので
いつものように中古のジャンク品を
漁ってみることにした。

んで入手したのがこちら。
ジャンクとはいえ1万6千円もした!
パピリオが新品で買えますね。
FullSizeRender
気になる状態は・・・
外観は文句なし。

電池の液漏れ跡があるけど
通電は問題無し。
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光学系は
FullSizeRender
左側に強度の曇りあり!

視軸ズレもなかなか。

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鉄塔の寸法から推定すると
上下ズレが約5分
左右ズレが内方約7分

少なくともJIS規格は外れてるし

像の倒れもあるように見える。

ただ、落下させた形跡も無いので
これは製造時からのズレなのかも
知れないなぁ〜。

この鉄塔を使ったズレの測り方は
鉄塔の記事参照↓

http://mouse830.livedoor.blog/archives/8753503.html


とまぁ
想像通りのジャンクな状態だった。

中古市場では2〜4万円くらいで
取引されているみたいだけど、
こういう状態のものが
沢山流通してるかと思うと
普通は手を出すべきじゃないと思う。
メーカー整備に出したら修理代
3万円くらいはかかると思うので
新品が買えてしまう。

では、ねずみはどうするかというと
もちろん自分で整備を試みますよ!
かなり実験的にやってますので
決して真似しないでくださいね。

いきなりカバーを開けたところ。
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電子部品がズラリと並ぶ!
金属とプラスチックが
適材適所で組み合わされた構造で

この辺はカメラで培った技術が
生かされているんだろうな〜

こちらが心臓部、手ブレ補正装置
バリアングルプリズムのユニット
FullSizeRender
ガラス板2枚で透明な液体を挟んだ
構造になってるらしい
詳細はメーカーのHP参照。
カメラとは違って電子部品だけが
ユニット化されていて
工場での組み付けも簡単そう。


防振機能を取り外した
ただの双眼鏡の状態がこちら。

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なかなか衝撃的な姿!!
防振装置が無いと
まるで荷台を外したトラックみたいに
スカスカになってしまう。

さらにメインフレームだけにしてみる。
FullSizeRender
プレス製の板金2枚を重ねて
スライドさせるだけの超シンプル構造!
全ての部品をこのフレームで
支持している。

前回のNikonミクロンの記事で
「基本を磨き上げた良い双眼鏡だ」
って話を書いたのだけど

ねずみが思ってた良い双眼鏡って、
軽量の金属を極薄に鋳造した鏡体に
内部は精密に機械加工してあって
ムラのない艶消し黒塗装仕上げ。

光路とプリズムがギリギリの隙を

保って巧妙に配置されていて
外側は手にしっくり馴染む曲線
上質なグッタペルカが貼ってあり・・・
IMG_7007
みたいな。
とにかく鏡体自体にいろんな機能が
詰め込まれていて、それらを
絶妙な設計と上質な仕上げで
成立させてるイメージだった。

ところがこの10×30ISは
そんな固定概念をあっさり覆す
簡素なフレームで出来ている。
確かに、
考えてみれば遮光だって外装だって
全体を覆うプラスチックのカバーを
着ければ問題ないし
レンズやプリズムも鏡体に
組み込まなくたってユニット化した
ものをくっ付ければ良い。
FullSizeRender
そうなると
左右の接眼レンズと対物レンズが
視軸を保ったまま前後に動いて
ピント調整出来るただのフレーム
ってのが本当は双眼鏡の基本
なのかも知れない。
ちょっと味気無いけどね、。
この簡素なフレームをベースに
こんなに評価の高い双眼鏡作っちゃう
Canonってやっぱり凄いな。


分解した後は液漏れでボロボロに
錆びてた電極を
クリーニング。
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クリーニング後。
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あまり変わって無い?
電池と接触するのは電極先端の
ギザギザ部分だけなのでこれでOK。


次に、一番問題だった
プリズムの曇りがこちら。
FullSizeRender

矢印の部分が一番酷くて

対物側の面もなかなか曇ってる。

プリズムは珍しいポロⅡ型。
台座のプレートとガッチリ接着
されていて外すことが出来ないので
なんとか拭ける面だけを拭いたけど

コーティングが自体が痛んでいたので

曇りは完全には落とせなかった。
FullSizeRender

メーカー修理の際はプリズムユニット

丸ごと交換になると思われる。


最後に難題の視軸合わせ。
この双眼鏡には視軸が
微調整出来るようなイモネジとか
二重偏心環などの機構が全く無い。

それどころか対物レンズ枠が
3箇所のネジと接着剤でフレームに
固定されていて、再調整なんて
考えられていないように見える。
FullSizeRender
ねずみは全てのパーツを分解
しちゃってるので、
すでに視軸は
メチャクチャになっている。

再調整をやるしかないのだが
調整機構がないのでどうしよう。。

結局、ネジを緩めてから
フレームとレンズ枠のガタの範囲で
対物レンズを手で動かして調整した。

FullSizeRender
なんとか頑張って
上下左右ともズレは1分程度に収めた、

ちょっと外方ズレになっちゃったのは
イマイチだけどこの辺が限界。


視軸も合わせて曇りも取って完全復活!
FullSizeRender
これで防振の真の実力を

見ることが出来る!

・・・と思ったのだけど、
覗くと10秒くらいで気持ち悪くなって
無意識に目を離してしまう。

ちゃんと視軸も合わせたのに何故??
他に考えられる原因って、
嫌〜な予感。

FullSizeRender
あぁ、やっぱり像の倒れがあった
しかも思ったより酷い。
正確にはこれは倒れ差の方で
左右の像の傾きが一致していない状態。

最近ねずみのブログで頻繁に
取り上げてる像の倒れ。

http://mouse830.livedoor.blog/archives/11741304.html
双眼鏡の調整を何十台かやってきて
視軸以上に重要ってことに気が付いた。


ねずみの場合
視軸ズレのある双眼鏡を覗くと
目の周りの筋肉がピクピクして
目が嫌がる。
一方、倒れのある双眼鏡を覗くと
目よりも先に脳が嫌がるのだ。

推測だけど
視軸ズレは眼球の向きを無理矢理
動かして補正しようとするのに対して
倒れの場合、眼球を回転(ロール)
させることが出来ない?ので
脳内で頑張って補正をかけようと
してるんじゃ無いかと思う。
どちらも気持ち悪いことには
変わりないのだけどね。


でも、待てよ??
像の倒れってプリズムの角度ズレで
発生するはずだけど
この10×30ISのポロⅡ型プリズムは
全て貼り合わせで作られてるので
ポロⅠ型のように衝撃でズレることは
あり得ない。
FullSizeRender
防振用のバリアングルプリズムも
像を回転させる効果はないので
もし狂ったとしても倒れは
発生しないはず。

これはもう一度分解して
ちゃんと検証する必要があるようだ。


その2に続く

2号機、3号機製作の話

平行器は一台あればいいと思っていた管理人ねずみ。日本望遠鏡工業会さんのホームページを見ると眼幅60mm、64mm、70mm の3種類のラインナップがあることに気づく。

ねずみが作った初号機は眼幅64mm。


自分の眼幅がこんなもんだからそれに合わせたのである。大体周りの人を見渡してみても人の眼幅は63〜65くらいに見える、測ったわけじゃないけどね。
子供はもっと短いから60mmは子供用か?70mmの眼幅の人なんていないぞ??
と最初は意味が分からなかったが、よくよく考えていくうちに気がついた。

双眼鏡はどの眼幅でも視軸がズレないようにしないといけない、そのためには双眼鏡の左右の視軸と真ん中の回転軸の3本の軸を平行に合わせる必要があるのだ。

つまり60mmと70mm両方で視軸が合ってる状態にしないといけないって事で平行器は2種類は必ず必要になる。64mmは日本人の平均的な眼幅なのでおそらく最終調整用だろう。

では1つの平行器で60mmと70mmの両方を調整することはできないのだろうか??
どうなるのか簡単に絵を描いてみた。

まずは64mmの平行器で眼幅64mmの双眼鏡を見た場合
FullSizeRender
双眼鏡の左右の視軸が一致していれば目標物(鉄塔)は一つに重なって見える。

次に64mmの平行器で眼幅60mmの双眼鏡を見た場合
FullSizeRender
双眼鏡の視軸が一致していたとしても、プリズムで反射した右の光とハーフミラーを通り抜けた左の光が一致しないので目標物はズレて見える、それ以前に視野の円がズレて見える。

なので

視軸調整をちゃんとやるには双眼鏡の眼幅に合わせた60mm、64mm、70mmの3台が必要なのである。平行器を自作されてる方のブログ等をみてもこの点に言及されている方はいないと思われる。

まぁ最低限自分の眼幅で合わせれば自分が使う分には不自由しないから一台でいいのかもしれないけど、どうせやるなら本当の視軸合わせにチャレンジしてみたいよね。

・・・と。前置きが長くなったが

そんな理由で60mm、70mmの平行器製作に取り掛かることにしたのである。

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