タグ:双眼鏡

2022年最初のブログは
Canonの防振双眼鏡10×30ISの話

ねずみは正直、この双眼鏡を
入手すべきか迷っていた。

ずっと前からその性能を
確かめてみたいと思っていたのだけど
もしかしたらその圧倒的な性能に
魅了されてしまって
ビンテージ双眼鏡熱が冷めてしまう
のでは無いかと不安だったのだ。
(値段を見て躊躇しただけです)

ネット上の評判を見ても

防振の威力は絶賛されていて
単純な解像度ではツァイスや
スワロフスキーの
ハイエンドモデルを
超えるほど
優れているらしい。
これは覗いてみないわけにいかない。

しかし、、いざ買うとなると
特に決まった観察対象を持たない
ねずみが新品を購入するのも勿体ないし
なにより
ブログネタとして面白く無いので
いつものように中古のジャンク品を
漁ってみることにした。

んで入手したのがこちら。
ジャンクとはいえ1万6千円もした!
パピリオが新品で買えますね。
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気になる状態は・・・
外観は文句なし。

電池の液漏れ跡があるけど
通電は問題無し。
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光学系は
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左側に強度の曇りあり!

視軸ズレもなかなか。

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鉄塔の寸法から推定すると
上下ズレが約5分
左右ズレが内方約7分

少なくともJIS規格は外れてるし

像の倒れもあるように見える。

ただ、落下させた形跡も無いので
これは製造時からのズレなのかも
知れないなぁ〜。

この鉄塔を使ったズレの測り方は
鉄塔の記事参照↓

http://mouse830.livedoor.blog/archives/8753503.html


とまぁ
想像通りのジャンクな状態だった。

中古市場では2〜4万円くらいで
取引されているみたいだけど、
こういう状態のものが
沢山流通してるかと思うと
普通は手を出すべきじゃないと思う。
メーカー整備に出したら修理代
3万円くらいはかかると思うので
新品が買えてしまう。

では、ねずみはどうするかというと
もちろん自分で整備を試みますよ!
かなり実験的にやってますので
決して真似しないでくださいね。

いきなりカバーを開けたところ。
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電子部品がズラリと並ぶ!
金属とプラスチックが
適材適所で組み合わされた構造で

この辺はカメラで培った技術が
生かされているんだろうな〜

こちらが心臓部、手ブレ補正装置
バリアングルプリズムのユニット
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ガラス板2枚で透明な液体を挟んだ
構造になってるらしい
詳細はメーカーのHP参照。
カメラとは違って電子部品だけが
ユニット化されていて
工場での組み付けも簡単そう。


防振機能を取り外した
ただの双眼鏡の状態がこちら。

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なかなか衝撃的な姿!!
防振装置が無いと
まるで荷台を外したトラックみたいに
スカスカになってしまう。

さらにメインフレームだけにしてみる。
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プレス製の板金2枚を重ねて
スライドさせるだけの超シンプル構造!
全ての部品をこのフレームで
支持している。

前回のNikonミクロンの記事で
「基本を磨き上げた良い双眼鏡だ」
って話を書いたのだけど

ねずみが思ってた良い双眼鏡って、
軽量の金属を極薄に鋳造した鏡体に
内部は精密に機械加工してあって
ムラのない艶消し黒塗装仕上げ。

光路とプリズムがギリギリの隙を

保って巧妙に配置されていて
外側は手にしっくり馴染む曲線
上質なグッタペルカが貼ってあり・・・
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みたいな。
とにかく鏡体自体にいろんな機能が
詰め込まれていて、それらを
絶妙な設計と上質な仕上げで
成立させてるイメージだった。

ところがこの10×30ISは
そんな固定概念をあっさり覆す
簡素なフレームで出来ている。
確かに、
考えてみれば遮光だって外装だって
全体を覆うプラスチックのカバーを
着ければ問題ないし
レンズやプリズムも鏡体に
組み込まなくたってユニット化した
ものをくっ付ければ良い。
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そうなると
左右の接眼レンズと対物レンズが
視軸を保ったまま前後に動いて
ピント調整出来るただのフレーム
ってのが本当は双眼鏡の基本
なのかも知れない。
ちょっと味気無いけどね、。
この簡素なフレームをベースに
こんなに評価の高い双眼鏡作っちゃう
Canonってやっぱり凄いな。


分解した後は液漏れでボロボロに
錆びてた電極を
クリーニング。
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クリーニング後。
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あまり変わって無い?
電池と接触するのは電極先端の
ギザギザ部分だけなのでこれでOK。


次に、一番問題だった
プリズムの曇りがこちら。
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矢印の部分が一番酷くて

対物側の面もなかなか曇ってる。

プリズムは珍しいポロⅡ型。
台座のプレートとガッチリ接着
されていて外すことが出来ないので
なんとか拭ける面だけを拭いたけど

コーティングが自体が痛んでいたので

曇りは完全には落とせなかった。
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メーカー修理の際はプリズムユニット

丸ごと交換になると思われる。


最後に難題の視軸合わせ。
この双眼鏡には視軸が
微調整出来るようなイモネジとか
二重偏心環などの機構が全く無い。

それどころか対物レンズ枠が
3箇所のネジと接着剤でフレームに
固定されていて、再調整なんて
考えられていないように見える。
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ねずみは全てのパーツを分解
しちゃってるので、
すでに視軸は
メチャクチャになっている。

再調整をやるしかないのだが
調整機構がないのでどうしよう。。

結局、ネジを緩めてから
フレームとレンズ枠のガタの範囲で
対物レンズを手で動かして調整した。

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なんとか頑張って
上下左右ともズレは1分程度に収めた、

ちょっと外方ズレになっちゃったのは
イマイチだけどこの辺が限界。


視軸も合わせて曇りも取って完全復活!
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これで防振の真の実力を

見ることが出来る!

・・・と思ったのだけど、
覗くと10秒くらいで気持ち悪くなって
無意識に目を離してしまう。

ちゃんと視軸も合わせたのに何故??
他に考えられる原因って、
嫌〜な予感。

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あぁ、やっぱり像の倒れがあった
しかも思ったより酷い。
正確にはこれは倒れ差の方で
左右の像の傾きが一致していない状態。

最近ねずみのブログで頻繁に
取り上げてる像の倒れ。

http://mouse830.livedoor.blog/archives/11741304.html
双眼鏡の調整を何十台かやってきて
視軸以上に重要ってことに気が付いた。


ねずみの場合
視軸ズレのある双眼鏡を覗くと
目の周りの筋肉がピクピクして
目が嫌がる。
一方、倒れのある双眼鏡を覗くと
目よりも先に脳が嫌がるのだ。

推測だけど
視軸ズレは眼球の向きを無理矢理
動かして補正しようとするのに対して
倒れの場合、眼球を回転(ロール)
させることが出来ない?ので
脳内で頑張って補正をかけようと
してるんじゃ無いかと思う。
どちらも気持ち悪いことには
変わりないのだけどね。


でも、待てよ??
像の倒れってプリズムの角度ズレで
発生するはずだけど
この10×30ISのポロⅡ型プリズムは
全て貼り合わせで作られてるので
ポロⅠ型のように衝撃でズレることは
あり得ない。
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防振用のバリアングルプリズムも
像を回転させる効果はないので
もし狂ったとしても倒れは
発生しないはず。

これはもう一度分解して
ちゃんと検証する必要があるようだ。


その2に続く

今年最後のブログは
日本光学Mikron8×30 8.5°WFの話

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ミクロンって言うとちっちゃいやつを
想像すると思うけど
1950年代にニコンの双眼鏡の
ブランド名が全てMikronだった
時期があるようで8×30以外にも
いろんな機種が存在する。

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このミクロン8×30 8.5°WF
ねずみが最近整備した中でも
圧倒的に作りが丁寧で
見え味も抜群に良い双眼鏡なのだ!

・・・しかしこのフォルム
あの双眼鏡にそっくりですよね。

そう
CARLZEISS JENAデルトリンテム。
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スペックは8×30 実視界8.5°と全く同じ

背の高さはほぼ一緒で
ミクロンのほうがやや胴体が太い。


一見、デルトリンテムのコピーか?
と思ったんだけど
分解整備してみると全く印象は変わり、
デルトリンテムの良いところを
取り入れつつ、本家デルトリンテムを
越えようとした気概のある
双眼鏡であることが伝わってきた。
販売時期もデルトリンテム1Qと
被っているのでもしかしたら
ガチンコ勝負を挑んでいたのかな〜?

そんな歴史的にも貴重な双眼鏡。
ねずみはコイツを3000円程度で
入手した。
、、まぁカビだらけですからね
整備無しではまともに見えないので
普通の人は敬遠するでしょうね。。
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って事で整備に取り掛かる。

まずは接眼側からアプローチ
羽根を押さえているネジは真鍮製で
止めネジが2本も使われていて
安心感がある。
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しかもツァイスみたいに
噛み合ってるネジ山のど真ん中に
ねじ込んだりせずに
ちゃんと平面の部分に締め込んである。
これは後のNikon8×30にも
受け継がれている良い
構造。

そしてここにも
NikonのDNAを感じるポイント。
左の羽根のハメあいがやたらキツくて
外れる気配がない。
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この設定も後のモデルに
受け継がれてるんだけど、、
もうちょい緩くても良くない?と思う。

無理に外すと壊れる恐れがあるので
下陣笠の方から分解して

フォーカスリングごと引き抜いた。
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鏡体カバーを開けると作りの良い
プリズム押さえ金具が現れる。

キレイな十字型に打ち抜かれていて
バリは無くサビも全く出ていない。

手抜き双眼鏡はこの金具の作りが
いい加減なのですぐに分かる。
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矢印のところは
プリズム台座面の加工が接眼側の
遮光筒をうっすら突き破っていて
プリズムのコバが見えている。
可能な限り大きなプリズムと
大きなアイピースを組み合わせた
結果なのかも知れないけど、
遮光の面からは良く無いような?

一方、デルトリンテムは
ここは完全に塞がれていて
溝のついた遮光筒まで挿入してある。
コーティングが発明される前の
基本設計のためか迷光除去には
かなり気をつかっていたと思われる。
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一方、ミクロンの後継Nikon8×30Aは
ここが大きく開いていてプリズムが
はみ出している。
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コーティングの性能向上や
接眼レンズ構成の違いで
遮光の必要が無くなったのだろうか?
それとも単なるコストダウンか?
デルトリンテムとは全く対照的。

ミクロン8×30は両者の中間的な構造で
本格的なコーティング時代に移り変わる
過渡期の設計って印象を受ける。


またミクロン8×30の鏡体には
対物側と接眼側のプリズム室の間に
小さい穴が開けられており
中の空気が連通するようになっている。

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これもデルトリンテムには無い構造で
おそらくピント調節時のアイピースの
動きに伴う内圧の変動を緩和する
ためではないかと推測する。
先程のプリズム台座の加工が接眼筒に
突き抜けてるのは空気の通り道を
形成する狙いがあるのかも知れない。
8×30Aにもこの穴は受け継がれている。
(追記: あくまで推測ですので、、
本当の理由をご存じの方がいたら
是非教えてください。)

基本構成はデルトリンテムを踏襲しつつ
細かく改善を入れてるところが
いかにも日本らしいな〜と思う。


プリズムはもちろんカビだらけ。。
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プリズムに拭き傷をつけないように
クリーナーをカビに染み込ませて
溶かしながら落としていく。

幸いコーティング面が
侵食されてなかったので
カビ跡もわからないくらいに
取り除くことが出来た。
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ミクロンのプリズムの真ん中には
迷光を低減する溝が彫られている。
これもデルトリンテムには無いのだけど
ねずみが見た中で古いものでは
ライツのBINUXITに同じ溝があるのを
確認している↓

http://mouse830.livedoor.blog/archives/9465716.html

対物筒はデルトリンテムそっくりで
光路を全てカバーする長い遮光筒が
ついたタイプ。
極薄の金属製で内部に細かい溝が
びっしり彫られているのも
デルトリンテムと同じ。
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この部品の重さはなんと10gしかない!
fether-weightを謳っているだけあって
各部品が異常に軽い。

比較として
デルトリンテムの軽量モデルは9g。
ミクロンもかなり良い勝負してる。
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どちらもおそらくマグネシウム製で
持った感じはプラスチックのような
重さでしか感じない。
レンズとプリズムが重い分
他の部品を極限まで軽くする、
双眼鏡の軽量化って大変だなぁ〜

総重量は実測値で
ミクロン8×30: 479g
デルトリンテム1Q: 512g
ニコン8×30A: 515g
ミクロンはかなり軽い!
ベンチマークがデルトリンテム1Q
だとすると大幅に上回っている。

ちなみにチャンピオンは
デルトリンテム軽量非球面モデルの
407g。これ以上軽い8×30を
ねずみは知らない。


最後にアイピースを
ざっと比較してみる。
ミクロンのアイピース直径は
25.4mmでちょうど1インチ。

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デルトリンテムの方は
約24.5mmのツァイスサイズ。
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当然ながらツァイスサイズなので
旧式の天体望遠鏡のアイピースとして
流用出来たりもする。
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エルフレの広視界で高倍率を
味わえるのでなかなか面白い。
ニコンもツァイスサイズに
揃えてくれれば良かったのにな〜
8×30Aは何故かツァイスサイズより
小さい23mmとなっている。

ミクロンの接眼レンズは
かなり状態が良かったので
今回は分解しなかったのだけど
どこかでレンズ構成の比較もしてみたい。

光学系のクリーニングが終わったら
前回の記事で紹介した
像の倒れ調整↓もバッチリやった。

http://mouse830.livedoor.blog/archives/11741304.html
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視軸のほうも眼幅60mmと
70mmの平行器を
使って
主軸にほぼ一致させたうえで
64mmで上下ズレほぼ0、内方ズレ1分
ぐらいまで
追い込んだ。
各部品の精度が良いので
視軸調整はかなりやりやすかった。

そんな感じで整備を終えた
mikron 8×30 8.5°WF
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プリズムカバーも少し磨いただけで
ピッカピカ!
塗装の質は世界の双眼鏡の中でも
トップクラスだと思う。

気になるミクロンの見え味は

やや平面的でシャープネスが高く

8×30Aに似た明るさもありながら
デルトリンテムのような周辺部の
ボケもあわせ持っている。
それでいて黄色の着色が薄くて
パサッと乾いた見え方をするところは
ミクロン独特の味。

こちらがミクロン8×30で見た景色
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参考に
デルトリンテム1Q
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ツヤがあって立体的。
背景の木の枝が主張せずに
手前の緑の葉っぱだけが浮き上がって
見えるのはさすが。


8×30A
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パッと明るくて華やかに見える
やや線が太めかな?

ミクロン8×30は
表現力ではデルトリンテムに
及ばないものの単純な光学性能では
デルトリンテムを凌いでいると感じる。


それと
どう表現していいか
分からないのだけど
視界の安定感がとっても良くて
覗いた瞬間に良い双眼鏡!
ってのが伝わってくる。
この「良い双眼鏡」の感覚は
1Qになる前のデルトリンテム
軽量エルフレモデルにも感じるのだけど
原因が何なのかはよく分からない。
左右の光学性能がピッタリ揃ってる
ってことなのだろうか?

このミクロン8×30のような
古くて良い双眼鏡に出会うと
新しいモノが良いモノとは限らないな
とつくづく思う。
最近の双眼鏡にはEDガラスとか
フーリーマルチだとか
優れた材料のモノは山ほどあるけど
このミクロン8×30には
基本を磨き上げたモノだけに宿る
スペックに現れない良さがある。

こういう出会いがあるので
まだまだ双眼鏡趣味はやめられない^ ^
来年も良い出会いがありますように!

今年一年ねずみブログを読んでいただき
ありがとうございました
来年もよろしくお願いします。

管理人ねずみ

今回は像の倒れについて
書いてみようと思う。

視軸調整については何回か書いてるけど
その前に行うべき
像の倒れ調整について
まだちゃんと書いて無かった。


これまた
正確な情報が見つからない中で
ねずみがいろいろ試してたどり着いた
独自のノウハウなので
参考にする方は自己責任で。
そしてもっといい方法をご存じの方は
是非教えて欲しいし
間違いがあったら指摘して欲しい。



まず。
像の倒れとは何か?

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ゾウの倒れでは無い!


・・・気を取り直して。

像の倒れとは
双眼鏡を覗いた時に
像が傾いている角度のこと。


プリズム双眼鏡って
レンズで上下左右が反転した像を
プリズムで何回か反射させる事で
正立像に直して見ているものなので
プリズムの反射面間の角度がズレると
ピッタリ正立にならずに
ちょっと傾いた状態になる。


例えばポロ式の場合
ポロプリズム2つの交差する角度が
90°からズレると倒れが発生する。
倒れ
プリズムの角度誤差に対して
像は2倍の角度で倒れる。

倒れ差は
左右で倒れっぷりが違う場合の
角度差のこと。

倒れ差

中古の双眼鏡を買う時
視軸のズレを気にする人が
多いと思うけど

像の倒れを気にする人はそんなに
いないんじゃ無いかな?

しかしビンテージ双眼鏡ともなると
像の倒れが出てるものは
結構あるので
注意が必要だと思う。

ねずみが以前紹介した
デルトリンテム1Qもそうだった。

この時は平行器を通して
約100m先にある標識の柱を見た時に
傾きが一致していないので気がついた。
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小さい丸の中が平行器の
プリズムを通った側の視界。
倒れ差0.5°〜1°くらいかな?


JIS規格では高性能品のAA級で
像の倒れ±1.0°以内
像の倒れ差30分、つまり0.5°以内
となっている。

ねずみの感覚ではこれは結構緩くて

0°狙いでビタビタに合わせた方が
覗いていて気持ちいい。

それと倒れよりも倒れ差の方が重要で
倒れ差が0.5°もあると結構違和感がある。


例えば下のCADで引いた線。
赤線に対して青線は0.5°傾いている
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ぱっと見で傾いてるって分かる。
0.5°って結構大きいでしょ?


このデルトリンテム1Qを調整した時は
レンズまで組み上げた状態で
平行器を通して覗いた時に
道路標識の柱の傾きが
一致するように
プリズムの角度を動かして調整した。

倒れ差0.5°以内には合わせられている
と思うけど。
絶対的な倒れの調整が
出来ないのでこの方法では
共倒れが回避出来ないことは
過去
に書いている↓
http://mouse830.livedoor.blog/archives/8978567.html

それから色々な方法を試して
絶対的な倒れまで
調整できるように
なったので公開しようと思う。

用意するものはまたもや平行器

やり方はホントに単純で
まず一本真っ直ぐな線を描いた紙を
壁に貼る。

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それから
プリズムだけを組み付けた双眼鏡を
三脚にセットして
片側のプリズムだけ
平行器を通して
壁の線を見る。

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この時、平行器の片側は
双眼鏡のプリズムを通さずに
直接壁の線を見る。

絵にするとこんな感じ
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この状態で平行器を覗いて
2つの線が平行になるように

プリズムの傾きを調整するのだ。

例としてNikonの8×30Aを
調整した時の様子
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上にある線が双眼鏡のプリズムを
通った方で、微妙に左上がりに
傾いているのがわかると思う。
この倒れをプリズムの角度を
変えることで調整していく。

プリズムの角度調整は
押さえ金具を少し緩めておいてから
プリズムのコバ(側面)を押して
ガタの範囲内でズラすことで行う。
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注意点としては
絶対にマイナスドライバー等の
金属の道具を使わないこと!
プリズムのガラスは非常に脆いので
硬いものを当てるのは厳禁。

ねずみは先端を削った割り箸なんかを
使っている。


もともとのプリズムのガタだけでは
調整範囲を超えている場合
プリズムの側面をダイヤモンド砥石等で
うっすら削ってガタを増やす。


調整後はこちら
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かなり平行になってる。

完璧に調整した平行器であれば
平行器単体の倒れ誤差は0°なので
壁の線を基準にすれば
絶対的な0°を基準に調整が出来る、
つまり共倒れも回避出来るという事。

さっきの赤線と青線の絵で見たように
0.5°のズレは人間の目で容易に
判別可能なことが分かっているので
目で見て完全に平行と感じるところ
まで持っていけば
倒れは0.5°以内に調整出来ている
と言うことになる。


最終チェックは左右のプリズムを
通した視界を平行器で重ねて見る。
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一直線に重なって見えれば
倒れ差も0.5°以内に収まっている。

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と、こんな具合でやるのが
最近のねずみの定番になっている。

ここまで倒れ差を取り除いた双眼鏡は

覗いていて本当に気持ちがいいし
長時間覗いても酔いにくい。


この方法では
平行器を通して見える視界が
広ければ広いほど傾きが判別しやすく
なって精度が良くなる。

倒れ調整専用に
覗き窓がやたら大きくて
眼幅が極端に狭い平行器を作っても
良いのかもしれない。
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こんなやつ
今度暇があったら作ってみようかな。



・・・余談ですが

ゾウの倒れのネタのために
わざわざ粘土でゾウを作ったので

ついでに
当ブログのメインキャラクター
ねずみ工作研究所のねずみ
作っておいた。

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何を見ているんでしょうね?
彼は今後もこのブログに
登場するかも知れません。


話がそれたけど、、
以上が最新の

ねずみ流像の倒れ調整。

もっと良い方法が見つかれば
その2を書いてみようと思います!

今回はちょっと趣向を変えて
リーズナブルな双眼鏡

ペンタックスの8×24UCF
通称「タンクロー」を取り上げてみる。
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ねずみが入手したのは

ちょっとレアな白い外装の中古品で
SPORTSと書いてあるけど防水でも無く
ただの色違いみたい。
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やや古いMADE IN JAPANモデル。

このタンクロー
現行品でも実勢価格6,000〜9,000円
程度と
かなりの廉価であるにも関わらず
及第点の光学性能を
確保している。

一言で表現するなら
「最も安く手に入るまともな双眼鏡。」
・・・逆に言うと
これより安くてまともな双眼鏡は
存在しないし、買ってはいけないと
ねずみは勝手に思っている。
(個人の感想です)

たまに景色のいい観光地に行くと
ホームセンターで安く売られてるような
粗悪品双眼鏡を構えている人を
目撃することがある。

そんな時ねずみは

「せめてタンクローを買ってきてくれ〜
せっかくの景色がもったいない!」
と心の中で思ってしまうのだ。


そんなタンクローだけど
中古品で程度の良いものはなかなか
無いようで、今回整備する個体も
しっかりカビが生えていた。
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対物レンズの曇りもあったので
例のごとく徹底的に分解クリーニング
することにした。

ねずみの経験上
プラスチック製の双眼鏡は
接着剤が多用されていて分解=破壊
となる事が多いのだけど

このタンクローは全ての部品が
ねじで結合されているので分解が可能。

(プリズムのセメントは除く)
おそらく分解整備に耐えられる双眼鏡
の中で最も廉価とも言えると思う。

分解にはまず外装のラバーを全て剥がす。

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両面テープでくっついてるだけなので
簡単に剥がれる。

銘板の裏にネジが隠れているので
これも剥がす。
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接眼側真ん中のカバーを外すと
金属のプレートが現れるのでこれも外す。
この板は左右の鏡筒を保持しながら
2軸の回転軸を作っている重要な部品。
赤矢印の所が接眼側の回転軸になってる

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左右の鏡筒はギヤで噛み合っていて
連動して開く仕組みだ。

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ペンタックス独自の2軸構造で主軸が無い

この構造は剛性を出すのにも
貢献してるだろうし
三脚ネジが下から付けられるのも便利。
これ考えた人ホントに尊敬してしまう。

次に上面に付いているハッチを開けて

フォーカスリングを取り外す。
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ダイヤルの回転に応じて前後に動く
2本の爪(赤矢印)が左右の対物レンズ筒の
溝(青矢印)に引っ掛かっていて

この爪で対物レンズを
動かして
ピント調整する機構。
これは前回紹介したダイアスポーツと
似ている。


特徴的なのはディオプターの構造で、
フォーカスリングの真ん中に付いてる
もう一つのダイヤルを回すと
右側(写真では左側)の爪だけが
独立して前後に動くようになっている。

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これで左右の対物レンズの移動量を
変えて視度補正するのだ。

ほんとによく考えてるな〜と感心する、
メカ屋さんが考えた双眼鏡って感じ。

フォーカスリングを外せば
左右の鏡筒が完全に分離できる。
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分解出来たら
光学系のクリーニング作業に移る。


対物レンズを取り出して問題のカビを
除去していく、
矢印のとこがカビ。
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ねずみはクリーニングに何種類かの
薬剤を使い分けていて
カビに対してはフジフィルムの
クリーナーが効果的なことが
なんとなく分かっている。

まず試しに無水エタノールで拭いてみると
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カビ本体は取れたけど
跡が残ってしまう。

次にフジフィルムのクリーナー
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カビ跡までかなりキレイに取れた。
アルカリ性が効くのだろうか?
油汚れもよく取れるので
ねずみはこれを愛用しているが
お値段はすこぶる高い!

カビは除去したものの、このレンズには
致命的な欠陥があって、、
それがこの曇り!
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しかも表面ではなく
レンズ貼り合わせの接着剤が劣化して
曇っている。

今回ねずみは
禁断の「
バルサム剥がし」を
やってみる事にした。

貼り合わせレンズを一旦剥がして
汚れを除去してから最接着するのだ、
この曇りを取るにはこれしか
方法がない。

ドイツ製ビンテージ双眼鏡なんかだと
怖くてやれないけど
ジャンクのタンクローなら
チャレンジしてみても良いかなと。。

但し、一度剥がしてしまうと
レンズどうしの外径合わせで
再接着することになるので
光学的な芯出しが出来なくなる。

つまり工場出荷状態の性能には
戻らない。

しかし、、最初からこんなに
外径がずれてることってあるのかな??
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不安だけど、とにかくやってみる。

熱湯に浸けたらあっさり剥がれた。
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剥離した面からは
強烈な化学物質のニオイが漂う、、
明らかに天然バルサムではないものが
使われているようだったが
この接着剤は無水アルコールで
簡単に除去する事が出来た。

貼り合わせにはUVレジンを使う、
透明性が高くて黄変しないと評判の
パジコの「星の雫」と言うレジンを
使ってみた。
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レジンを垂らして貼り合わせたら
ゆっくり回しながら気泡を抜いていく。
レジンの量が多すぎるとこんな風に
横から溢れてくるので注意が必要。
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厚みが出ないようしっかり押さえてから
溢れたレジンを拭き取る。
外径合わせで位置を決めたら
UVライトで接着、もう後戻り出来ない!
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貼り合わせ作業は成功で
スッキリ曇りの無い透明感が戻った。
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プリズムの方もカビを落として
クリーニングする。
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プリズムはセメントで固定されてるので
手で押してバキッと剥がす。
戻す時はセメントの破断面が
ピッタリ噛み合うようにすれば
プリズムの位置がズレないので
付着したセメントはそのままに
しておく。


最後に視軸調整のやり方だけど
このブログではまだ紹介していない
プリズムを傾ける方式。
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詳しくは説明しないけど
プリズムをイモネジで横から押す事で
プリズムが傾いて視軸が動く仕組み。

組み付け後は
イモネジがこの位置に来る。

上が上下の調整で、横が左右の調整
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ネジを締めた時に
視界がどちらに動くかは

実際やってみるとわかると思うけど
上下と左右では逆の動きをするので
ちょっと慣れが必要かも。


整備を終えたタンクロー
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こちらが
整備後のタンクローで見た景色。
スマホの写真なのであくまで参考で
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視野もそこそこ広くて
周辺までハッキリ見えてクセがない。
バルサム再接着による
光学芯ズレの影響は
ねずみの目には
全く分からなかった。


比較として同じ逆ポロの
ヘンゾルト・ダイアスポーツ

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クセのある歪みとクローズアップされた
中心部のシャープさに感動を覚える。



タンクローの見え味は
決して感動的ではないけれど
特に悪い所も見当たらなくて
この値段でこれだけよく見える
双眼鏡って貴重だと思う。
最新のモデルは見たこと無いけど
もっとよく見えるのかも知れない。

双眼鏡に1万円以上出すのはちょっと
理解出来ない!って人や
とにかく安いやつ一台あればいい、
って人には
是非オススメしたい双眼鏡。

・・・って
そんな人はこのブログ読んでないか?!

平行器ネタが続いたので
久々に双眼鏡レビュー&修理記録。

今回はねずみが大好きなヘンゾルトの

コンパクト双眼鏡
ダイアスポーツ8×20の話

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ねずみ的には逆ポロ型の中で
最も可愛くてオシャレな
双眼鏡だと思う。
IMG_6333
シリアルの頭4ケタが7777で縁起が良い。


ヘンゾルトって言うと
軍用のイメージが強いかも知れないけど
このダイアスポーツは丸くて
柔らかいラインがなんとも可愛いのだ。
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さらに可愛いのがこのケース
デルトリンテムのケースと比べると
子供みたい。
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前オーナーの保管状態は知らないが
紐が(本物の)ねずみにかじられている、、
そんなところも可愛い??
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ねずみが入手したモノは
光学系に曇りがある程度の
なかなか良い状態だった。

ひとつだけ残念なのは外装の張り革。
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グッタペルカが剥がれてしまったのか
安っぽい合皮に貼り替えられていて
かなりチープな見た目だった。
なので今回は張り革の交換も含めて

徹底的にリフレッシュしようと思う。


このダイアスポーツ
可愛い見た目とは裏腹に
中身はドイツっぽい精密で複雑な
構造になっている。

資料も無く構造がわからないので

あらゆる可能性を考えながら
慎重に分解していった。

まずフォーカスリングのダイヤルを外すと

真鍮製のリングと両端に掛かっている
2本の棒があらわれる。
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この棒は対物レンズ側まで貫通していて
真鍮のリングを外しても
抜くことが出来ない。


接眼レンズは普通にねじって
外すことが出来たが、接眼側の
鏡体カバーがなぜか外れないので
対物レンズ側から先に分解してみる。

ピント調節の機構が対物側に

あるので外す時には注意が必要。
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先程出てきた棒の横に付いた突起が
対物レンズ筒に噛み合っていて
棒の押し引きで対物レンズを前後させる
仕組みになっている。

この噛み合い部分を上手く外しながら
対物筒と棒を引き抜く。
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対物側はこれで全て外すことが出来た。

ここまで外したところで
接眼側のプリズムカバーが
外れない
理由が判明した。
なんと内側からネジ留めされているのだ。

これは他の双眼鏡では見たことない構造
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しかもこのネジは
プリズムの入射すぐ横に付いてるので
もしドライバーを滑らせてしまったら
即プリズムに傷がつくという
恐ろしいレイアウト。
・・・緊張しながら慎重に外した


なんとか分解が完了!
これがダイアスポーツの全部品。
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ねずみはいつも分解した部品を
仕切りの付いた箱に収納して
管理している。
ビンテージ双眼鏡は現物合わせで

調整してあるものが多いので左右の部品が
入れ替わらないよう注意が必要。


分解後は最も気を使う
プリズムクリーニングの作業。

結構な曇りが出ているが
幸いカビは生えてない。
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完全に曇りを取り除くことが出来た。
プリズムが小さいので
比較的クリーニングはやりやすい。
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カバーもきれいにして
文字のホワイトを入れ直す。
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違いが分かるかな?
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ヘンゾルトのマークって
アッべケーニッヒプリズムがモチーフだと
思うんだけど角張っててカッコいい。


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クリーニングした部品を組み直したら
外装の張り替え作業。

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元のレザーを全て剥がしてから
養生テープを使って型取りする。


上が元々貼ってあった安っぽいやつで
下が新たに切り出したビニックスレザー。
シボの高級感が全く違う。

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2次曲面なので貼り付けは巻くだけ簡単。


最後に視軸調整をしたら完成なのだけど
なんと接眼側に二重偏心環が付いていて
接眼レンズの位置を動かして
視軸調整する
構造になっている。

これも他の双眼鏡では
ほとんど見たことが無い構造。
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リングが小さくて回しにくい上に
調整する毎に眼幅が変化するので
ちょっとやり辛い。。

そんな感じで
調整を終えたダイアスポーツ
コンパクトでも侮るなかれ
その見え味は本当に素晴らしい!
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ヘンゾルトらしく
中心部がシャープで
着色のほとんど無いクリヤーな視界。


比較として兄貴分ダイアゴンの視界

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こちらも中心部は極めてシャープ。

視界はかなり広いけど周辺部がグルグルに
ボケているのであまり役立っていない。。


逆にダイアスポーツはダイアゴンの
良いとこだけをスパッと切り出した
よう
でとっても気持ちいいのだ。

ダイアゴンと並べてみる。

このコンパクトさでも
決して見え味では劣ってないぞ!
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最後に気になるところ一つ・・・
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写真右側のプリズムカバーに

眼幅を読むための目印が

刻んであるのだけど、、

目盛りの書いてある陣笠も一緒に

動いてしまって目盛りの意味が無い。


中身であれだけ複雑な構造を

成立させておいて、単純なところで

まさかの設計ミス??

設計者はさぞかし

ショックを受けただろう。。

それがそのまま世に出ているところが

また可愛いところでもある。


(訂正。この現象はこの個体特有の

不具合のようで単純な設計ミス

というわけではないようです、

陣笠を止めている中心軸の固定が

緩んで右鏡筒に連れ回っている

ようでした。)



そんなヘンゾルトダイアスポーツ

コンパクトさと可愛さと光学性能を

兼ね備えた唯一無二の双眼鏡

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コイツを持ってどこに行こうかな〜?

前回の記事で紹介した
改良版ねずみ式平行器
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コイツをもっとカッコよく
そして使い勝手が良くなるように
カスタムしてみる。


まず調整機構のネジ径をM3からM2に変更。
ネジピッチを細かくすることで
微調整しやすくした。
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ついでに鉄だったのをSUS製に変更。

少しでもケースのアルミとの
線膨張の差を小さくして
温度変化による狂いを減らそうという考え。

ちなみに各材料の線膨張係数を調べてみると
アルミ(A6063)  : 23.4 (×10^-6/K)

真鍮              : 19
SUS304       : 17.3

鉄                 : 12.1
ガラス(BK7)   : 7.1
となっている。
温度帯で変わるので参考値。

アルミか真鍮がベストだけど
高価で種類も少ないので
実際使うならSUSかな〜?


それにしてもアルミとガラスの
線膨張の差ってすごく大きい。

なのでねずみは
アルミとガラスを接着する時に
大きい面積でくっつけないように
注意している。
熱応力でガラスが割れるといけないのでね。
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ハーフミラーの場合
接着してるのは真ん中の黒い部分だけ。


話は戻って
次にケース内面の艶消し黒塗装と
プリズムのコバ塗り。
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ちょっと値が張るけど
スコープライフさんが出してる
光学部品専用の塗料を買った。

80mlってちょっとかと思ったけど

これ一生分の量あるわ。。


プリズムの方はケースとの接触面だけは

精度確保のために塗らないでおいた
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矢印の面は塗ってないんだけど

他の面を全部黒くすると
この面も見た目が黒に変わる!
なんでだろうか?不思議。


黒塗装で一番効果があったのは覗き穴内側。
アルミ切削面のキラキラが無くなると
大分覗きやすくなる。
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逆にそこ以外は
あんまり効果ない気がするけど、、
塗り残しがあると
気になっちゃうので
全部塗っといた。


その次は双眼鏡に当てる面に
艶消し黒のカッティングシートを貼る。
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これは双眼鏡見口の傷つき防止と
接眼レンズへの反射を抑えるため。
塗装だと削れちゃうのでシールにした。


最後に一番気になってたガラ空きの
ケース端っこにフタを付ける。
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フタ自作は結構大変なので
市販のパイプエンドキャップを使った。


会議机の足とかに付いてるやつ。
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そのままだと差し込み部が長すぎるので
左のように切り詰めておく。

フタをはめたら完成!
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自前で作ったモノを自前でカスタムして
楽しむという、ただの自己満足。


ところでこの平行器の調整をしていて
新たに気付いたことがある。

今回の調整機構は
覗き穴の上下に付いてるのが
上下調整ネジ
左右に付いてるのが左右調整ネジ
となっていて

X-Yの調整を完全に分けたつもりだった。

でも実際やってみるとこんな動きをする。


右を回すと
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こんな感じで目標物が斜めに動く。
平行器_調整2


左を回すと
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こんな感じ。
平行器_調整1
最初に作ったやつが
たまたまそうなるのかと思ったら
量産した全ての個体がそうだったので
ちゃんと検証してみると、、


左右調整ネジを締める前の状態を
横から見るとこんな感じ。
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ネジを締め込んでいくと
調整機構のある面が弓なりにたわむ。

かなり大げさに描くとこんな感じ
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垂直の面がたわむと
ミラーを接着している水平の面が上に動いて
ミラーの反射面が下を向く。


すると視界が下に動いて目標物が上に動く
と言う原理のようだ。



これが何を意味するかと言うと
上下の調整ネジを使わなくても
左右のネジだけで

調整出来てしまうという事!

例えばこんな感じ。

左下にいる目標物を
真ん中に持って行きたければ
平行器_調整3

う〜む、

ネジ2本で調整出来て便利ではあるが
思ってたのと違う動作で
なんだかモヤモヤする。

なにはともあれ
使いやすい平行器が出来たことには
変わりないのでコレで良しとします!



色々やってるうちに
平行器だらけになってしまった。
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一番後ろの列はボツになった試作品
その前の列は最初に作った3台
その前のは今回作った改良版3台
一番手前がカスタム仕様と製造中のやつら。


おまけに新構造も開発してたりして、、
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こちらの詳細はまだ秘密ですよ〜。


双眼鏡調整の道具を揃えるために
作り始めた平行器だけど、

最近これを作ること
自体が
楽しくなってしまっているので
今後も改良を続けていくつもり。


以上、改良版平行器の製作でした。

改良版平行器の製作を始めたねずみ。

アルミ角パイプを愛用のピラニア鋸で
切断するところから始まる
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この鋸スゴく切れるんだけど
手作業は疲れる。切断機が欲しいな〜


一気に3本切り出した。
今度は眼幅違いの3台を一度に作ってみる
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何気にこの角パイプのケースが
ねずみ式平行器の肝になっている。

平板やLアングルの上に部品を組み付けて
後からカバーを付ける方法もあるけど
角パイプでモノコック構造にする方が
剛性が高くて狂いにくいと思う。

調整ネジも
外からアクセス出来るので
カバー取り付けによる歪みもない。


このパイプの精度は結構重要。
端面は穴の位置をケガく時の
基準にするのでしっかり研磨して
直角を出しておく。
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続いて、L字アングル材を使って
ミラーベースを3つ作る
カットする前に覗き穴を開けておくと
効率が良い。
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・・・ねずみはどうも量産癖があるようで
こういうものを作り始めると
生産効率を上げて量産したくなってしまう。

以前、アルミ缶を使った
アルコールストーブの自作にハマった時も
加工用の治具まで作って大量生産していた。
IMG_5760

アルコールストーブってこんなやつね、
山でお湯沸かしたり出来る。
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一台づつ完成させていくよりも
各工程を流れ作業して大量生産出来ると
なんだか気持ちが良いのだ

結局使うのは一個だけなんだけどね。。




話は平行器に戻って

プリズムは例によって

ジャンク双眼鏡から取ったやつ。
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不要部分をダイヤモンド砥石で削って
サイズを合わせる。

手作業なので、1個削るのに

30分くらいかかって非常に効率が悪い。
これからは市販品を買おうかな〜

これが出来上がった一台分の基本部品
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調整機構をハーフミラー側に
集約したことで部品点数も抑えられた。


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これが3台分。


組み付けも3台づつの流れ作業

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調整機構がある垂直の面(覗き窓の方)は

ネジの軸力で結構歪むので
歪みの影響を受けないように
ハーフミラーは水平の面に接着。


ハーフミラーのモジュールと
プリズムをパイプの中に固定すれば
組み付け完了。
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調整はこんな感じで
デジスコ用の架台やらいろいろ
組み合わせた台にセットして行っている。
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16倍の双眼鏡で覗きながら調整
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秒単位で合わせるには
高倍率の双眼鏡か単眼鏡が必須。
片目しか使わないので
視軸のズレてるジャンク品でOK

肉眼では絶対無理ですよ〜


調整が終わったらレーザーポインター
使って眼幅チェック
写真は眼幅64mmのやつ。
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プリズムの取り付け位置で
眼幅を変えられるのでズレていたら再調整。


調整出来たら完成!
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調整機構の改良によって
調整にかかる時間が大幅に短縮出来た

以前は最長1時間かかっていたところ
コイツは大体3分以内で合わせられる。
一体いままで何に時間使ってたんだか、。



ところでこの平行器。

ケースの端っこがガラ空きだったり
見た目的にイマイチ洗練されてない
感じしますよね。


次回はこの平行器を
カッコよくカスタムしちゃいます!!

その3に続く

最近ブログ更新をサボっていたねずみ。

なにをしていたかと言うと
自作平行器の改良である。


こちらは改良前のやつ。
IMG_4122


夏になってからのこと。

いつもの双眼鏡の視軸調整をやろうとしたら
平行器自体の視軸が上下に3分程度ズレていることに気がついた。

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どうも温度変化でプリズムの締め加減の
バランスが変わったみたい。

こうなると再調整をするしかないのだけど
これが意外と時間のかかる作業なのだ。

ねずみが最初に作った平行器は

構造が簡単で作りやすいことと
コストを重視しすぎて

調整のやりやすさが犠牲になっていた。


プリズムを押さえる3本のイモネジの締め加減でプリズムの角度を微調整すると言う強引な構造。。。


詳細は過去の記事参照

http://mouse830.livedoor.blog/archives/8850636.html

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3本のネジのバランスでプリズムの傾きが決まるので、どれを絞めたらどっちに像が動くかハッキリわからない

ネジを絞めたり緩めたりしてピッタリ合うところを探すのだが、上手くいかない時は1台の調整に1時間ぐらいかかることもあった。


この構造に限界を感じて
改良版を開発することにした。

まず考えた構造がコレ

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ミラーを接着したベースのプレートを
ケースにネジ留めして、ネジを中心に回転させる。この構造は前と同じ。

それをケースの前後に付けたイモネジで

プレートを両端から押して角度を調整する。

同じ構造をプリズムの方にも設けて
こちらは垂直方向に回転させる。

ハーフミラー側が左右調整

プリズム側が上下調整で
X-Yで別々に調整出来る構造とした。

思いついたらlet's試作!
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いきなり完成!
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作ってみたらいろいろ気付いた。

今までの構造は回転するベースプレートを

プリズムごと上から押さえつけていたが
今回はイモネジで挟んでるだけなので
プレートが微妙に浮いたりして安定しない。
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それと、調整ネジが4つの面に分散してしまったので覗きながらネジを探すのが大変で調整時の作業性が非常に悪い、

と言うことで、あっさりボツ。


次に思いついたのは
2本のイモネジを支点にして
ベースプレートをシーソーの様に

傾ける構造。
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左右2本の引きネジで
シーソーの傾きを決める。
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コレを、前作と同じように

上下と左右の調整を分担させる形で
ミラーとプリズムにそれぞれ仕込んだ。
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完成!
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今度はプレートが4点で押さえられてるので
安定性はかなり向上したのだが
加工部位が多くて
作るのが大変になった。

調整ネジも2面に分かれてるので

地味にやりにくいな〜と思いながら
調整作業をやってる時


ねずみはふと気付いた。


左右方向を調整する機構の
(上の写真ではプリズム側)
シーソー支点の2本のイモネジの高さを変えると上下方向の調整も出来てしまうのだ。

この機構は垂直面に1つあれば良くて
2つ付ける必要は無かった。

単純なことだけど実際作ってみるまで気付かなかった、やってみるって大事だね。

この機構はプリズム側に付けると
ベースプレートがプリズムの重みで微小にたわんでしまい、
平行器を上下逆さまにした時に光軸がズレることが分かったので

質量の軽いハーフミラー側に付けることにした。
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こんな絵で伝わるだろうか?
ベースプレートを上下に傾けると

視界も上下に移動する。

これで方針は決まったので

いよいよ本格的な設計に入る。

今まで俗に言うポンチ絵で作ってたけど
複雑化してきて
寸法間違えそうなので
今度はちゃんと設計図を書いたぞ!



公開するので興味ある方は
作ってみてくださいな。

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精度は自分の腕次第なので公差は無し。
アルミ材はホームセンターで売ってるやつで
板厚2mmの物がちょうど良い。
ネジサイズはM2〜3でお好みで。

細かいところではハーフミラーの

ガラスの屈折で光路が0.3mmぐらいオフセットするとこまで考慮したけど、手加工でそんな精度出せるかな?

次回はいよいよ本命仕様の作成!


その2に続く。

最近、ねずみはコンパクトな双眼鏡に夢中になっている。
いわゆる「オペラグラス」なんだけど、オペラグラスって言うと安っぽく聞こえてしまうのはねずみだけだろうか?

オペラグラスと言えば本来は貴婦人が観劇に使うようなセレブ道具。


しかし
ねずみが子供のころに安っぽい粗悪品オペラグラスが氾濫した時期があった。
パカっと開いたりカクカク折り曲げたりして双眼鏡の形を成すプラスチックのオモチャみたいなやつね。。
無論、視軸調整なんて概念すら無いような代物。
そいつらがオペラグラスと呼ばれていたせいでその呼び方にはどうも抵抗
があって、ねずみはコンパクト双眼鏡と呼んでいる。

今回はねずみのコンパクト双眼鏡コレクションの中でも一番小さい双眼鏡
「テアティス」を紹介しようと思う。

黒のテアティスは
貴婦人が使う本当のオペラグラスとも違って、デルトリンテムのような
無骨な「双眼鏡」の雰囲気がある。
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このテアティスはマニアの間ではかなり有名で、すでにいろんな先輩方に名機として
ブログ等で紹介されている。

名機と呼ばれるだけあって
その性能は素晴らしい。
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片手に収まるサイズで携帯性は最高。

倍率は3.5倍と低いけど
最短合焦距離がおよそ40cmと極端に短い。
40cmって言ってもピンと来ないかもしれないけど、自分の手のひらを拡大して見ることが出来るって言ったら分かりやすいかな?

遠くの景色を見てもこのサイズからは想像出来ないほどシャープで明るくて、着色もほとんどない透き通った見え味に心奪われる。

・・・と、それは状態が良ければの話で
例によってねずみが入手した個体は光学系の状態が悪くてぼんやりした画像しか見ることが出来なかった。
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接眼側からライトを当ててみると曇ったプリズムの真ん中にダハの稜線がうっすら見える程度、。


こうなると当然、プリズムクリーニングして本来のクリアな見え味を取り戻してやりたいところだけど、それには一つ障害がある。
この黒いテアティスはプリズムカバーのネジがグッタペルカで覆われていて外せないのだ。

矢印の部分4箇所にカバーのネジがあるはずなのだが。。
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グッタペルカは硬くて脆いので一度剥がしたらバラバラになって、ジグソーパズルのようにピースを貼り合わせて再生するしかなくなる。

思い切って全部剥がしてビニックスレザーに置き換えるか、本革でも貼ってみるか。
それともこのまま曇った見え味で我慢するか。


てか、グッタペルカ剥がさないとメンテ出来ないなんて酷い設計だなぁ〜などと思いながら
悩んでいたとき、ねずみはふとあることに気付いた。
ネジの部分のグッタペルカの様子が少し違うのだ。
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矢印のところが分かりやすいと思う。
ネジの上だけ別のもので埋められているような丸い跡がある。

これでねずみは確信した。

黒いテアティスはグッタペルカを全部剥がさなくても分解出来るようにネジ部分だけ別のモノが詰められている。

やはりツァイスはメンテナンス性も考慮して設計していたのだ。

思い切ってこの部分を

ピンバイスで掘ってみると
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詰められていた黒い樹脂が取れた。

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この方法で全てのネジに
アクセスすることが出来た。これで遂にカバーを外すことが出来る!

こちらがカバーを外した状態

中には片側一つづつのプリズムと押さえ金具ががあるだけの超シンプル。
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ついにプリズムと対面することが出来た。

これがかの有名なシュプレンガー・レーマンプリズム!
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なんと一つの硝材で上下左右を反転出来るという優れモノ、しかも全て全反射で。

現在主流のシュミット・ペシャンプリズムに比べても高性能だと思うけど、やっぱり光路が一直線じゃないからレイアウトの制約が多くて主流になれなかったのかな〜?

上手く使えればすごく性能の良い双眼鏡が作れると思うんだけどな。


小さいけどダハの稜線はとことんシャープで、光の透過面にはコーティングもされている。
さらにはコバ塗りも丁寧に仕上げられていて、この小さなプリズムにものすごい技術とコストが注ぎ込まれていることが見て取れる。
まさにテアティスの命とも言えるプリズムだ〜!

ところがこのプリズム。性能の裏返しで整備はかなりの高難度、、一つのプリズムにつきダハ面含め5面をクリーニングしなければならない。
しかも鏡体からプリズムを出し入れする時に掴むところが一切無いと言うレイアウト上の制約まである。

反射面をピンセットで掴むわけに行かないので、ねずみは鉛筆のお尻にマスキングテープを輪っかに巻いたものを貼りつけて、それをプリズムのコバに押し付ける形で貼り付けて持ち上げた。

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この時一番気を使うのは、もちろんダハの稜線。

硬いモノに当てたら一発で欠けてしまうと思われるが、鏡体内部の形状とやたら近い箇所があってプリズムをちゃんとした位置に嵌め込むまではここに干渉する可能性がある。
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コンパクト化のために隙をギリッギリまで詰めてるのは分かるんだけど、この設計はホントに勘弁して欲しい、、
メンテナンス性いいんだか悪いんだか。
ここに絶対当てないように!って超緊張しながら作業した、、寿命縮んだかも。


なんとかプリズムとレンズをクリーニングしてクリアな視界を取り戻したテアティス。
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レンズもこれまた極小なので
クリーニングが難しかった、、

こんなに小さいのにちゃんと二重偏心環で視軸調整するようになっているのだが、これもまた難しい。

JIS規格上は倍率が小さいほど基準値が緩いので簡単だと思いがちだけど

0付近を狙った精密調整をやろうと思うと倍率が小さいと平行器を通して見た目標物が小さくなってズレの判別が難しくなるのだ。

・・・なんだか難しいことずくめのテアティスだけど最後にまだ大きな問題が残っている。

カバーのネジを隠していた黒い樹脂部分の再生だ。

元の材質がなんだったのか分からないけど、何かで代用して塞ぐしか無い。

そこで目をつけたのがコレ。
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ちょっとお高めのモデナと言う樹脂粘土。

こんな使われ方は想定外だと思うけど、伸びが良くて穴埋めには適している。
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ヘラの先で押してグッタペルカの模様ぽいものを再現。

仕上がりも艶消しでしっかり黒いのでグッタペルカに良く馴染む
完璧とはいかないけどパッと見わからないくらいになった。
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ねずみ的には大満足な仕上がり。


外観はともかくとして、スッキリ見えるようになったテアティス。

こちらがクリーニング後のテアティスで見た
1m先のデルトリンテム。
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細部まで観察出来て、これくらいが一番美味しい距離感だな〜と思う。
博物館の展示物とか水槽の魚なんかが
ベストじゃないかな。
(双眼鏡で双眼鏡を見るややこしい絵に
なってしまった)


20mくらい先の木を見てみるとこんな感じ。
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倍率が低いのでパッと見の迫力には欠けるけど、中心部に目を凝らすと細い線までシャープに見えて来る、そしてとにかくクリアで色が綺麗。


現代ではほとんど絶滅してしまったと思われるプリズム式の本気のコンパクト双眼鏡。
今新品で買えるのはNikonの遊くらいなのかな?

工作技術は格段に進歩してるのに、こんなに細部にこだわった良いモノは2度と作られないだろうと思うとなんだか寂しい。


このテアティスは壊さないように大事に使い倒そうと思う。

今までで最も修理が大変だった双眼鏡
アトランティック6×24の話

ねずみは6倍の双眼鏡が大好きである。
倍率が程よく低い事で手ブレの影響が
少なく、物の輪郭をよりシャープに見ることが出来るからだ。

中でもコンパクトで程よい明るさの6×24、視野の歪曲が少ないケルナー接眼、偏色のないノンコートの組み合わせが大好物。

つまりはドイツのDF 6×24やそれを真似て作られた日本の制六など軍用の双眼鏡に良く用いられたスペックなんだけど、実にバランスの良いところを突いてるな〜と思う。
ただ、本当の軍用品だとIFでやや使いにくいので民生用のCFのものが好き。

このシュッツのアトランティックは1920〜30年代あたり(正確な年式は不明)のもので
まさにドンピシャのスペック。

こちらが入手時の写真
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IMG_2385
かなり塗装が剥げて腐食してるけど
見栄えだけの問題で使い勝手には関係ないと思っていた。

しかし胴体が異様に膨らんでいるように見えるのが気になる。
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革が浮いているだけか?と思ったけど触ってみると意外と硬い、膨らんだ部分はしっかり中身が詰まっているのだ、、どういうこと?!

そして鏡体の内側には白い粉のような
汚れが沢山付いている。
覗いてみると視界はぼんやり霧の中。。
IMG_2394
でもこれ良くあるカビだろうと思っていたけどなんか感じが違うような?

対物レンズを外してみて絶句した。
一面謎の粉まみれ!
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プリズムカバーを外してみたところ
その理由が分かってきた。
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革の隙間から灰色の粉が止めどなく出てくる。

この粉はおそらくアルミが腐食して出来た水酸化アルミニウムで、湿気を吸いやすい本革を使っていた戦前の双眼鏡に起こりやすい現象らしい。


ねずみは双眼鏡を修理する時、出来るだけオリジナルのままで仕上げたいと思っている。
貼り革も破れたり変色していても使い込まれた味として残したいのだが、ここまでになると実用にはかなり支障がある。
歴史的にスゴイ価値があって博物館に飾っておくようなものならそのままにするけど、そうでなければ実用できるように修復したい。

って事で、思い切って革を全て剥がした!
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すると、目を疑うぐらい大量の粉が。

ここまでになるには相当湿気の多い環境に長期間保管されていたのだろう。


鏡体とプリズムカバーは腐食部分を全て取り除いて、地のアルミが露出してるところを内側も外側も塗装した。
これで少しは再度の腐食を防げると思う。
IMG_2768
鏡体内側の塗装に使ったのは艶消し黒のファインスプレーブラッセンと言う塗料。
この塗料、極薄の塗膜で真っ黒艶消しに出来るのが良いところ。塗装後は比較的高温で焼き付けないと剥がれやすいので使い方はやや難しいかな。

外側の方はバイクのマフラーとかに使う一般的な半艶黒の塗料を使用。
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こちらも焼き付けが必要で焼き付けてやるとアルコールでも溶けない強固な塗膜になる。ちなみに焼き付けにはガスコンロの魚焼きグリルを使用した(もちろん妻には内緒でね)。


革は出来れば本革で貼り直したかったけど、適したものが無いのでカメラ用のビニックスレザーから切り出した。
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組み合わせるとこんな感じ。
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白の文字がやや素人っぽい仕上がりになってしまったのはちょっと心残りなところ(素人ですが)。
元の彫り込みが浅くて腐食で潰れてしまっていたので塗料を流し込んでも上手く再現出来なかった。
この辺はもっと研究して上手く直せるようにしたい。


話が外装のことばっかりになっちゃったけど、光学系もきっちりクリーニングした。
プリズムのコバには赤い色が残っており、おそらく研磨に使ったベンガラと思われる。
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写真では分かりづらいけど、プリズムにはどれだけ拭いても取れない白い点状の汚れが残ってしまった、これは水酸化アルミの粉が長期間ついていたせいかもしれない。
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レンズの方はかなりピカピカになった、レンズ枠の真鍮の金色が美しい。
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フォーカスリングも真鍮製。
構造は全体的にツァイスイェナと同じだけど何故かフォーカスリングのヘリコイドは回転方向が左右逆になってる。
ツァイスが左ネジに対してシュッツは右ネジ、右ネジの方が作りやすい為なのか?理由は謎。
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それぞれの部品を組み付けてやっと完成したアトランティック。
視軸調整は偏心環の調整幅を全部使い切るギリギリでの調整になったけど
なんとかバッチリ合わせることが出来た。
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対物カバーはオリジナルの塗装が全く劣化していなかったので再塗装はしていない。
素材が真鍮だったおかげだと思うが90年も前の塗装がこの品質で残ってることを考えると本当に当時の技術は凄いと思う。


修復したアトランティックで見た

景色はこちら
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余計な着色がないおかげで花も緑も
自然な発色。
視界はやや狭いけど視野環がクッキリ出て、端まで歪みが少ないのが気持ちいい。

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90年前の人達もこの見え味で見てたのか〜
なんて感慨に浸りながら景色を鑑賞するのが楽しい。
最初の状態を見た時はもう無理かと思ったけど、なんとか実用できるまでに修復出来て良かった。

このシュッツのアトランティック
今はねずみの元を離れて、新しいオーナーさんに大切に使って頂いている。

双眼鏡ってやっぱり、使ってこそ価値がある物なのでどんどん使ってもらえると嬉しいです!

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