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今回は
当ブログの定番ネタ?
平行器(光軸検査器)の話の続きです。

続きと言ったって、最後に
平行器の記事を書いたのは
2021年の9月・・・
なんと3年近く前のことでした!

このブログを始めたのが
2021年の2月なので
今年で4年目に突入していますが
平行器作製の記事は
最初の半年に集中していて
それ以降はあまり
触れていなかったのです。

では今まで
何もしてなかったかと言うと・・・
そんなことはありません。
水面下?でちょっとずつ
平行器を進化させていましたよ


前回の記事で
その存在を匂わせたまま
封印されていたコチラの平行器も
公開しますので
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最後まで読んでいただけると幸いです。


まずは
ねずみの平行器の歴史を簡単に
おさらいしようと思う。

最初に作ったのがコレ
第1世代


第1世代と呼ぶことにする。


特徴としては
ジャンクカメラから取った
ハーフミラーと
ジャンク双眼鏡から取った
プリズムを使い
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光軸の校正は
3本のイモネジを
プリズムに直接当てて

その締め加減で行う
と言う強引な構造だった。
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ネジを締めた時の
光軸の動き方が掴みにくく
校正に何時間もかかると言う
厄介な仕様であったが
シンプルな構造のおかげで
一度調整してしまえばほとんど
狂わないと言う良い面もあった。


そんな第1世代に限界を感じて
大幅な改良を加えたのが
この第2世代
第2世代

第1世代の弱点である
校正の難しさを克服して
現在も最も活躍している平行器。

ねずみ独自のシーソー型の
光軸調整機構を組み込んだことで

校正に掛かる時間を大幅に

短縮した仕様となっている。
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FullSizeRender

現在はこの第二世代をベースに
数々の改良を重ねて最終的に
以下のような仕様となっている。

まず、双眼鏡に当たる面には
植毛紙を貼って反射防止と
双眼鏡の保護を兼ねている。
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調整ネジには全て真鍮を使い
アルミとの線膨張係数の差を
極力無くすことで

温度差による狂いを減らした
第2世代_ネジ

さらにシーソー構造の回転中心を
とがり先の止めネジから
真鍮の球で受ける構造に変更して
面圧を低減することで
耐久性を向上させている
カップ&ボール


光学系についても
ジャンク双眼鏡のプリズムから
既製品のプリズムに変更して
個体バラツキを減らすなど
プリズム

2.5世代と行っても良いくらいの
改良を加えているのだ。

ちなみにこの仕様は
プロの方にも使って頂いており
ねずみの平行器開発の中で
一つの到達点だと思っている。


ねずみは
この第2世代をベースに
いくつかの派生型を作製し
テストしているので
それらを紹介していこうと思う

まずはこちらの平行器
双眼装置型1

前回の記事で、存在を匂わせたまま
ずっと公開していなかったモノ

双眼装置型2

なんだか扁平な見た目をしてますね、
そして覗き穴が真ん中にある。

内部構造はこんな感じ。
双眼装置型3


シーソー型調整機構を2つ
直列に配置して
手前側をハーフミラー(写真右)
奥側をミラー(写真左)
としている。
双眼装置型4


コイツは
左右の光路長を同じにすると言う
コンセプトで作ったもので
言って見れば双眼装置を
逆から覗いてるのと同じ構造なのだ。

・・・何が良いのかって??


まず通常の平行器は
左右の光路長が大きく異なっている。

眼幅60mmの平行器を
25mm角のパイプで作成したとすると
平行器光路長1

左の光路長が25mmに対して
右は85mmとなる
展開するとこんな感じ。
平行器光路長2

つまり右側は眼幅の分だけ
離れたところから覗いている
状態なので、右側の視界が狭く
像もやや小さく見えるのだ。
平行器視界1
像の大きさが異なると
上下の誤差の判別が難しくなるので
平行器の左右をひっくり返して
同じ見え方になるところを探るなど
精密調整にはコツが必要となる。

実際の見え方がコチラ
平行器視界


それならば
双眼装置の構造を真似て
左右の光路長を同じにしてやれば
左右の像の大きさが同じになり
調整がやりやすくなると考えて
作製したのがこの扁平タイプだ。
平行器光路長3

結果は・・・

視界が極端に狭くて使い辛い。
双眼式視界

ねずみはこの平行器を
40mm幅の角パイプで作ったので
光路長は左右とも
100mmになっており
通常の平行器の右側よりも
長くなってしまった。

展開すると。
平行器光路長4

通常の平行器では
左側の視界が広いので
ズレが大きい双眼鏡でも
左の視界で目標物を
捉えることが出来るのだが
コイツの場合
左右とも視界が激狭のため
それが出来ない。
平行器視界2
さらに
視野が同じ大きさになったことで
左右の区別が付かなくなった・・・
よく考えれば当然ですね。


結局のところ通常の平行器でも
慣れてくれば
精密調整が出来るようになるし

視度望遠鏡等の低倍率の
単眼鏡を組み合わて
さらに像を拡大すれば
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大きさの違いもほとんど
気にならなくなるので
双眼装置式の平行器は
特に必要性がなくなって
現在はお蔵入りとなっている。


何か良い改善案が見つかれば
復活させるかもしれませんけどね〜。


さて

次にねずみが試した平行器は?!


次回に続く。

ねずみのブログを
楽しみにしてくださっている
読者の皆さま
大変長らくお待たせいたしました!
今年最初の投稿です。

去年はペースを上げて記事を書こうと
決意したにも関わらず
いろいろと忙しくなってしまい
ほとんど投稿できませんでした・・・

今年は溜まっているネタを
たくさん記事化していきたいと
思っていますので
よろしくお願いします。


さて
今回は
HENSOLDTの
代表的なポロ双眼鏡

DIAGON 8×30について
書いてみたいと思う。


ねずみは過去に何度か
HENSOLDTの双眼鏡の
記事を書いていて
その度にDIAGON 8×30を
引き合いに出してきたのだけど
メインで紹介するのは
今回が初めてなのだ。


ところで
この日本において
HENSOLDTの
双眼鏡について
最も詳細な
情報を発信されている
方と言えば

言わずと知れた
BLRM ブラッキー リッチモアさん
ですね。

圧倒的な情報量と美しい写真で
HENSOLDTの魅力を存分に
伝えてくださっております。

もちろん、ねずみが
HENSOLDTに興味を持ったのも
BLRMさんのブログがきっかけです。

今回はなんと
そんなBLRMさんから
貴重なDIAGONをお借りさせて
いただくことが出来たので
記事の最後に
紹介したいと思いますよ~!


まずは
いつものように
ねずみが入手した中古品
整備するところから
始めようと思う。
diagon_before
ちなみにこちらのDIAGON8×30は
1960年代あたりに
作られたと思われる後期型で
軍用品を除けば
HENSOLDTのポロ式としては
かなり末期のモデルにあたる。


外観はDELTRINTEM 1Qにソックリで
並べてみると見間違えるほどだ
DELTRINTEM_DIAGON

歴史をたどると
HENSOLDTは1897年に
世界初のダハプリズムを搭載した
双眼鏡を発売して以降
アッベ・ケーニッヒプリズム等の
ダハ式メインで勝負してきた
会社である。


そんなHENSOLDTも
1910年代頃からポロを発売
するのだが、初期のモデルは
お世辞にも良い構造とは
言えなかった。
GROSSFELD_PRISM
イモネジを直接プリズムに当てちゃう
構造とか・・・
以前紹介したgrossfeldもそうですね。
http://mouse830.livedoor.blog/archives/16635685.html

純粋な光学性能なら
ZEISSを上回るものがあると
思うんですけどね~。


そんなHENSOLDTだが
1928年にCARL ZEISS JENAに
買収された後しばらくは
従来構造のポロの製造を続けるものの
1940年代頃にはZEISS JENAの構造を
取り入れ始めたようで

今回紹介するDIAGON後期型では
DELTRINTEMと
ほぼ同じ
構造に落ち着いたと言える。

なので
外観は似ていて当然なのだけど
内部構造についてもほとんどが
ZEISS JENA化されているのだ。



その変化の中でも
特に、プリズムを動かすタイプの
視軸調整機構が
二重偏心環になったのは
最も大きな改良点といえるだろう。
IMG_1519 (2)



分解整備が異様に難しくて
操作トルクが安定しなかった
フォーカスリングの構造も

DELTRINTEMに似た構造に
変わっている。
DIAGON_フォーカスリング
但し、DIAGONの方は
ネジ面だけで軸を保持する
構造になっていて
そのために
ネジの掛かりを長くとったり
ピッチを細かくして
ガタを抑えているようだが
DELTRINTEMのように
軸受け部で嵌め合う
構造と比べるとややガタが多い。
この辺はちょっと
詰めが甘いような・・・
ちなみに回転方向はZEISSと
左右逆です。


上記の
偏心環とダイヤル構造の2点は
分かりやすい変化点だが
ねずみが
最もZEISS JENA臭い
と感じる箇所が鏡体の内部にある。

それがコチラ
IMG_1427 (3)_LI
プリズムの下に敷かれた
錫製のシートだ。

この錫シートは

DELTRINTEMをはじめとした
ZEISS JENAの双眼鏡に
1930年代あたりから採用されていて
ねずみが知る限り
ZEISS JENA系以外のメーカーには
見られない構造だ。



この錫シートの機能について
文献などで詳細を確認することは
出来なかったが、ねずみの考察では
プリズムの変形を抑える
とても重要な部品と考えている。


まず
この錫シートが無い場合を
考えてみると
プリズム_シートなし1
プリズムが鏡体の台座全体に
接しているので
板バネの荷重はプリズムを通って
台座全体に伝わる。


すると台座は
極端に書くとこんな感じで

弓なりにたわむことになる。
プリズム_シートなし2
光路の穴の影響もあって
剛性が低くなっている
台座中央
部よりも
剛性の高い端の方に

強く荷重がかかるので
プリズムの端が欠けやすく
なると考えられる。

さらに、プリズム自体に
曲げモーメントがかかるので

プリズムに歪みが発生して
光学性能に悪影響が
あるのでは?とも思う。



一方
真ん中に錫シートを挟んだ場合は
シートの厚みで両端が浮いた状態に
なっているので

プリズム_シートあり1

板バネの荷重で台座がたわんだとしても
シートによって台座中央部で
荷重を受け止めることが出来る。

プリズム_シートあり2
これならプリズムの端に
荷重がかからずに
保持出来るので
プリズムの歪も少なくなり
とても優れた構造だと
ねずみは思っている。


その裏付けとまでは言えないが
錫シートが使われる前の
年式の古いDELTRINTEMを
修理した際にプリズムの端が
欠けている物に
出会ったことがある。
DELTRINTEM_14 (3)_LI
板バネの荷重だけではなく
落下などの衝撃で欠けたと
思われるのだけど、
錫シートによって
プリズムの両端が浮いていれば
このような欠けは起こらないだろう。


ちなみに
材質が錫から紙に
変更されているものの
CARL ZEISS oberkochen 8×30にも
この構造は受け継がれている。

最後期のDELTRINTEMでは
このシートは省かれてしまうが
精密に鋳造された鏡体には
プリズム中央部を支える4つの突起が
成形されており、この思想自体は
受け継がれているものと思われる。
プリズムシート比較

説明が長くなってしまったが・・・
HENSOLDTのポロ式双眼鏡は
ZEISS JENAの構造を
取り入れて合理的な進化を果たした
と言えるのではないだろうか。

しかし残念なことに
同時にコストダウンも
急速に進められていて
この後期型ではプリズム固定の
板バネを締結するネジまでも
廃止されて

整備し辛い構造になっている。
IMG_1418 (2)
板ばねとプリズムの間の
クッションの紙が
ズレて接着されているのも
クオリティ低下を物語っている。

対物レンズ枠の反射低減の
溝切りが
廃止されてしまったのも
残念なポイントだ。
DIAGON_hikaku1

そんな数々のコストダウンを
受けながらも、この後期型は
前期型に対して視界も広がり
視野周辺部の収差も改善されるなど
光学性能自体はかなり
向上している印象を受ける。

まとめると
ZEISSの合理的な機械構造と
HENSOLDTならではの
シャープで自然な見え味。
そして残念なコストダウンが
ミックスされた、なんとも
末期のモデルらしい双眼鏡
それがDIAGON後期型なのだ。
IMG_6739 (2)
ねずみはそんなDIAGONが大好きで
よく持ち出している。

上の写真は諏訪湖の風景ですが
対岸の建物の輪郭が
ビシッと直角に見える解像力は
さすがHENSOLDT!と思わせる
軍用譲りの性能だ。


そして、最後に
BLRMさんよりお借りした
貴重なDIAGONを紹介したいと思う。

HENSOLDT DIAGON 8x30
armée française

IMG_6726 (3)
その名の通り
フランス軍用に採用されていた
激レアなDIAGONなのだ。

この機体の見え味はというと
・・・思い込みでそう見えている
だけかもしれないが、
自宅から見る空が
爽やかなフランスの
海辺の空になったような
全体が上品な薄水色に
着色して見える気がする。

さらに
armée françaiseには
軍用ならではの装備も付属している。

IMG_6725 (2)
ケースの蓋の裏に収納された
黄色のフィルターだ。

これは薄暮時などの光量が少ない
ときにアイカップに取り付けて
コントラストを向上させるものだが
明るい昼間に装着すると
視界がきれいなレモン色の
着色に変わって
これが兵器とは思えないほど
爽やかな気分にさせてくれる。


BLRMさんには
この激レア機のほかにも
2台のDIAGONをお貸しいただき
ねずみの元に大勢の
HENSOLDTが集結しましたので

いつか真似してみたかった
集合写真を撮ってみました。

IMG_6645 (2)
BLRMさん
ありがとうございます
これが沼というやつですね・・・


以上
長文となってしまいましたが
この辺で。

今年も ねずみ工作研究所を
よろしくお願いします!

ねずみが最近入手して
その性能に驚いた双眼鏡がある。

それがこちら。
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現行型のミクロン6×15CF 8°

現在のNikon双眼鏡のラインナップでは
ハイクラスコンパクトに分類されていて
フルマルチ化された光学系は極上で
そのコンパクトさからは想像出来ない
ような清々しい見え味なのだ。


いつものようにジャンク品を探して
5,000円程度のものを購入したのだが
入手時点では外観も綺麗で
特に問題があるようには見えなかった。
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対物レンズも傷ひとつない良い状態で

これぞニコンのマルチって感じの深緑。

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意外と状態のいい掘り出し物を
引いてしまったかな〜?と思って
外の景色を覗いてみたら・・・
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異常なまでのクモリで何も見えない。

・・・とまぁ5,000円も出して
全く景色の見えない双眼鏡を
購入してしまった訳で
普通の人は大失敗と思うんでしょうが
ねずみは逆にこの状況に
ワクワクしてしまうんですよね。

このミクロンの狭いプリズムカバーの
中で一体何が起きたらここまでの
クモリが発生するのだろうか?
これは調査する価値がありそう。


良くも悪くも分解が簡単な構造なので
早速カバーを外してみると
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なにやら黒いシート状のものが2枚
プリズムの斜面に乗っかっている。
何だこれは??

この黒いシートは樹脂製で
反射防止のためにカバー裏面に
接着されていたようだったが
変形して剥がれ落ちていた。

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樹脂がフニャフニャに変形しているのは
明らかに熱を受けた証拠なので

車のダッシュボードにでも放置されて
かなりの高温状態になったのでは
ないだろうかと推測する。


シートを貼り付けてい接着剤も
その熱で気化してプリズムを
曇らせてしまったのだろう。
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ねずみは以前、旧モデルの
ミクロンも整備したことがあるが
こんな黒いシートが使われているのは
見た事が無かった。

こちらが旧ミクロン整備中の様子。
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プリズムカバー裏側は全面艶消し黒に
塗装されていてあの黒シートは
使われていない。
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現行ミクロンはコストダウンのために

工数のかかる塗装工程を無くして
黒シートを接着する構造に
変更したのだろう。

また剥がれて悪さをするといけないので
黒シートは全て除去していつもの
光学用黒塗料で塗装しておいた。
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問題はプリズムのクモリの方で
プリズムを外して徹底クリーニング
したいところだけど

現行ミクロンはプリズムが
台座に
接着されていて外すことが
出来ないのだ。

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よくあるグレーのセメントでは無く
レンズを貼り合わせるときにつかう
UV硬化の接着剤のようなもので
ガッチリ貼り付けられているようで
手で押しても剥がれる気配が無い。


こうなると
プリズムが向かい合っている面は
拭くことが出来ないのだけど
幸いにもこの面は曇って無かったので
無理して剥がすことはせずに
外から拭ける面だけクリーニングした。

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しかし本体とプリズムが接着されて
いるって
ことはメーカーで
プリズム不具合の修理を行う場合
本体ごと交換してしまうのだろうか?
接着が多用されている最近の双眼鏡の
完全オーバーホールは難しい。。

対物レンズの方はクモリも無かったので
アッセンブリ状態のままクリーニング
して、そのまま組み直したら
視軸ズレも全く無く元に戻った。
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こんなに小さくても二重偏心環が
使われているので視軸の安定性は抜群
この辺りはさすがNikon。


整備を終えた現行ミクロンを
旧モデルのミクロンと比較してみる。
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こちら旧モデルと言っても初代では無く
1948年に復刻されたモデル。
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初代ミクロンは大正時代の製造で
ねずみはまだお目にかかったことが
無い。


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上が旧型で下が現行型
コーティングの色の違いが分かる。

外装の方は
右の現行型がチタンシルバーっぽい
銀色の塗装なのに対して
左の旧型はクロームメッキの
金属光沢で高級感がある。
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さらに旧型はフォーカスリングの前側が
テーパー形状になっていて
対物筒の
間に隙間なく収まっている。
対物レンズとフォーカス軸をつなぐ
ヒンジ部分も旧型の方が凝った作りで
こうやって見比べちゃうと
現行型のコストダウンを実感する。
決して安っぽくはないんだけどね。


外から見えないところにも
細かい違いがあって、例えば
旧型の方は対物筒が摺動する部分に
糸が巻きつけてある。
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この糸でグリスを保持しつつ
摺動部の隙間を埋めて
ある程度異物の侵入を防いでいるようだ。
これももちろん現行型では省かれている。


スペック上の違いとしては
旧型の方が実視界が0.3°広い。
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しかしアイレリーフがかなり短いので
目レンズにまつ毛を擦り付ける勢いで

眼球を近づけてやらないと
全ての視界を得ることは出来ない。

その点、現行型は裸眼・眼鏡どちらでも
対応出来るような絶妙なアイレリーフの
長さになっていて
無理して目を近づけ無くても
全視野を見渡すことが可能だ。
この辺もねずみが現行ミクロンを
オススメしたい理由の一つ。


クリーニングを終えた
現行型ミクロンで見た景色がこちら。

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フルマルチ特有のコントラスト強めの
白が強調された
色合いで
スッキリ清々しい見え味。
少し演出が入ってる感じはあるけど
不自然じゃなく上手くまとまっている。


旧ミクロンはこんな感じ。
写真で見ると僅かに
視界が広いのが分かる。

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こちらは暖色系のややレトロな着色で
これもまた雰囲気があっていいね。


と、ここまでミクロン6×15CFを
推してきたねずみだが
実はもう一つ紹介したい機種がある。


それがこちら。
ミクロン5×15 9.5°

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深い紫のコーティングが美しい。

5倍という低倍率のおかげで
明るくて手ブレも気にならず
アイレリーフも長くて覗きやすい。
さらに視野の着色がほとんど無くて
リアルな色彩を楽しむことが出来る。
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おまけに重量もこの3台の中で一番軽い。
参考に重量は実測で下記の通り
・現行型6×15: 134g
・旧型6×15: 172g
・5×15: 123g

そんな感じでほとんど弱点の無い
ミクロン5×15なのだけど
残念ながら現行のラインナップ
からは外れてしまっている。

状態の良い中古品もほとんど
流通していないと思われるので
実用品としてオススメ出来るのは
やっぱり6×15の現行型となる。

ちなみにねずみは
現行型の7×15はまだ見たことがない。
初代ミクロンを意識しているのか
ブラック塗装がカッコいいんだけど
見え味の方はどうなんだろう??
こちらもジャンク品を見つけたら
入手してみたい。


どこにでも持っていきたくなる
携帯性抜群のミクロン6×15

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サッとポケットから取り出したり
首からぶら下げて歩くのも
なかなかオシャレだと思う。

大正時代から100年間ほぼ変わらない

デザインなのに古めかしさを
感じないし光学性能も一級品。
カタチがそのまま機能を表していて
これぞ機能美。

今後もNikon双眼鏡の歴史を
象徴する存在として
ずっと残していって欲しいなぁ。

「双眼鏡の視軸調整その3」
の記事を書いてから
もう1年も経ってしまったようだが
そろそろ続きを書いてみようと思う。

前回の記事はコチラ↓

http://mouse830.livedoor.blog/archives/10100337.html

これまで二重偏心環タイプの
視軸調整の方法について
詳しく紹介してきたが今回は
「視軸を中心軸に合わせる方法」を
紹介しようと思う。

文献等の情報が見つからないので
ここで紹介するほとんどは
ねずみが試行錯誤して独自に
たどり着いた方法である。
もっと正確な情報をご存知の方は
是非アドバイスお願いしたい。


まず中心軸とはなにか?
眼幅を合わせるために左右の鏡筒を
開閉する時の回転中心となる軸のことで
一軸式の場合は真ん中の軸を指す。
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タンクローとか二軸式のものは
この軸がないけど便宜上、真ん中に
仮想の中心軸があると考えれば良い。


そして
「視軸を中心軸に合わせる」とは
左右の視軸の向きを中心軸と
一致させること。
双眼鏡1

これは「双眼鏡の視軸調整その1」
の記事でも触れているけど↓
http://mouse830.livedoor.blog/archives/9859556.html

一つの眼幅で視軸を合わせた時。
つまり平行器1台で視軸を合わせた時
左右の視軸は平行になるが
中心軸と一致しているかは分からない。
例えばこんな感じで両方とも揃って
左にズレているなんてこともあり得る。
双眼鏡2
この状態でも視軸は合っているけど
眼幅を変えた時に視軸がズレる
という大きな問題が生じるのだ。

・・・と言っても
ピンと来ないかもしれない。

そこで
この現象を分かりやすくするために
こんなものを作ってみた。

名付けて「視軸見える君1号」
FullSizeRender

双眼鏡の視軸を模式化したもので

矢印が左右の視軸の向きを表している。

例えば眼幅60mmの位置で
視軸を合わせた時、上の写真のように
左右とも左にズレていたとする。
(実際はどちらにズレているか
この時点では分からない)

この状態で眼幅70mmに広げると
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こうなる。
左の視軸が上にズレて
右の視軸は下にズレるのだ。

眼幅70mmの平行器を通して見た時の
視界はこうなる。
左の視界は上に動き
右の視界は下に動く。
(目標物の動きとは逆)
中心軸1


60mmで左右とも上にズレていた場合は
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70mmにするとこうなる。
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これは外方ズレの状態で
平行器を通した視界はこうなる。

中心軸2


もうお分かりだと思うが
眼幅60mmでも70mmでも
視軸が一致してる状態になれば
視軸と中心軸が一致したことになるのだ。


ねずみはこの調整をとても重視している。
眼幅を変えても視軸がズレないってのは
もちろんだけど
視軸が中心軸に合っているほうが
どちらかに偏っているよりも
見え味が良いような気がするからだ。

実際のところ
ねずみはこれを見分けるほどの
眼力をもっていないし
そんな気がするだけなのだけど。。

中心軸と視軸が一致してる状態が
一番ニュートラルな状態であって
その双眼鏡の性能が最大限
引き出されてるのでは?思っている。

ねずみがわざわざ眼幅違いの
平行器を作っているのも
この中心軸合わせのために他ならない。
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作業的には
60mmで視軸を合わせて
70mmで視軸を合わせて
また60mmで合わせて
70mmで合わせて・・・
を繰り返していけばいつかは
中心軸に合うことになるが
この方法では合うまでに
なかなか時間がかかる。

ねずみの場合は
基本的には眼幅60mmの状態だけで
この調整を行なっている。
手順としては
まず60mmで視軸を合わせてから
70mmにした時のズレ方を確認する。

ここで「視軸見える君」を使って
60mmの時の視軸が
どっちにズレていたのか?を推定する。
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例えば60mmの時の視軸が
左右とも左にズレていると分かれば
60mmの状態で視軸を少し右に
動かしてみて
70mmでのズレの変化を確認する。
足りなければもう少し右にずらして・・
を繰り返す。
そして70mmにしても視軸がズレない
状態になったところで、最後に
自分の眼幅と同じ64mmの平行器で
精密調整して完了。と言った感じ。

今のところ
このやり方が一番効率が良いのだけど
もっと良い方法をご存知の方は
是非教えて欲しい。


これまでいろいろな双眼鏡の修理記録や レビュー記事なんかも書いて来たけど
何故かこの視軸調整の記事が
一番アクセス数が多い。

いったいどこに需要があるのか
分からないのだけど、、
多くの方が読んでくれているようなので
今後もこのネタは続けて行きたいと思う。


次回は内方ズレ?外方ズレ?
どこを狙って視軸調整するのが良いか。
市販の双眼鏡はどこを狙ってるのか?
その辺りについて書いてみようと思う。

いつになるかはわかりませんが
お楽しみに。

mikron8×30 8.5WFの整備をしてから
すっかりNikon好きになってしまった
ねずみが今回紹介するのはこちら。
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Nikon8×30シリーズの原型となった

Mikron8×30
後期型モデル

中古市場でもほとんど見かけない
レアな双眼鏡である。


以前紹介した
前期型のMikron8×30 8.5°WF↓
FullSizeRender

http://mouse830.livedoor.blog/archives/12692069.html
こちらもレアな双眼鏡。


後期型は形が大きく変わって
胴が短いお馴染みのNikon8×30Aの
スタイルになっているけど
スペックは前期型と同じ。
FullSizeRender
シリアルナンバーから推測するに
後期型って事でいいと思うんだけど
情報が無くて正確な販売時期は
分からなかった。


8×30Aとは見た目そっくりで
NikonとMikronの字体も似てるので
パッと見全く同じに見える。

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ねずみもこの外観に騙されて
中身も8×30Aと同じだろうと思って
整備を始めたら、開けてビックリ。

8×30Aとはほぼ全ての部品が異なる、
言ってみれば8×30Aのスペシャル仕様
のような双眼鏡だったのだ。


どんな違いがあるのかは
分解しながら説明していこうと思う。

まず大きな違いとして
フォーカスリングのダイヤル部分の
構造が異なっていて
ねずみが入手した個体はこのダイヤルが
空転してピント調整不可な状態だった。
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このダイヤルはデルトリンテムや
Mikron前期、8×30Aもほぼ同じ構造で

ダイヤルに付いたイモネジを
3方向から
締め込んで固定する構造になっている。
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イモネジ先端が軸に付いている
円盤の外周に噛み込むので
ダイヤルが空転することも少なく
精密ドライバーがあれば簡単に
調整や増し締めも出来る便利な構造だ。

ところがMikron後期型には
異なる構造が採用されている。

こちらが分解した
mikron後期型のフォーカスリング
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断面図で比較するとこんな感じ。
左側が一般的な構造で、右がMikron。
FullSizeRender
Mikronには円盤とイモネジが無くて
軸センターのナットを締め込むことで
軸とダイヤルのテーパ面を密着させて
その摩擦力だけで固定している。

このナットが少しでも緩めば摩擦面が
滑ってダイヤルが空転してしまい
しかも、特殊工具がないと
増し締めすら出来ないと言う
不親切な仕様なのだ。

実はZEISSのオーバーコッヘンモデルも
似たような構造になっていて↓
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Mikron後期型はこれを

真似したものだと思われるが
不具合が起きやすかったのか
コストダウンのためか?
8×30Aではイモネジ式に戻されている。


最初にイマイチなところを
紹介してしまったが他の部分は
どこをとっても8×30Aより
コストのかかったスペシャルな作りに
なっている。

とりわけ際立った違いは
気密、防水性を高めるため各部に
設けられたシール構造だ。

まず鏡体カバーと対物レンズ枠の
合わせ部分にゴムパッキンが
付けられている。

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そしてその裏側には
シール
面圧を確保するための
バックアップリングが設定されている。
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さらには鏡体とカバーの合わせ面に
ZEISS JENAによく見られるような
シール剤が塗布されている。
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極め付けは2重偏心環にまでゴムの
Oリングシールが付けられている
と言う徹底ぶり。
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これらのシール部材は
後の8×30Aでは全て廃止されている。

この徹底した気密性向上も
ZEISSのオーバーコッヘンモデルを
強く意識したものであると
ねずみは推測している。

オーバーコッヘンは鏡体とカバーの間に
ゴムパッキンが設けられていたり
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接眼レンズの可動部に
ゴムブーツまで付けられているという

この年代のセンターフォーカスの
ポロ双眼鏡としては過剰なまでの
気密・防水設計が特徴だ。
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mikron8×30後期型はゴムブーツこそ
付いていないものの
この年代の日本製ポロとしては
最高レベルの気密設計だと思う。

その気密設計が幸いしてか
プリズムには全くカビが無かったのだが
そのかわり結構な曇りが出ていた。
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カビは無いけど曇りが多い傾向は
オーバーコッヘンモデルも同じで
気密性の高い双眼鏡は
グリスから揮発した油分が内部に
こもってしまって
曇りやすいのではないかと思う。


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今回もプリズムに傷を付けないよう
細心の注意を払ってクリーニングした。
カビが無かったおかげで新品同様の
透明感に戻った。


ミクロン8×30後期型には
プリズムの固定方法にも特徴がある。

下の写真のようにプリズムの横に
薄い金具がねじ止めされていて
FullSizeRender
FullSizeRender
この金具をプリズム側面に押し当てて
プリズムの位置を固定している。
この構造はとっても便利で
像の倒れを調整した後にこの金具を
プリズムに押し当てて締めてやれば
ズレる心配が無い。

そして、なんとこの構造も
オーバーコッヘンと同じなのだ。
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オーバーコッヘンが1954年に登場し
Nikon8×30Aの方は1959年。
このMikron後期型は8×30Aの直前に
製造されていたと考えると
ニコンはZEISSオーバーコッヘンを
ベンチマークとしてMikron後期型を
開発したと思われる。
そして、そのコストダウン版が
8×30Aということになりそうだ。


コストダウンされてしまった
8×30Aに対してMikron8×30後期型には
他にも優れた点があるのだけど
中でもねずみが一番気に入ってるのは
各パーツの仕上げがとっても
上質なところ。
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8×30Aはカバーの縁に角が立っているが
Mikronは角が丸く仕上げられていて
明らかに塗装の艶も良い。
ついでに貼り革のシボも細かくて
上品で手触りが良い。


さらにMikron後期型が凄いのは
8×30Aに対して部品点数が
多いにも関わらず実測17gも軽いのだ。
IMG_8820
おそらく対物レンズ枠等に使われている
金色の部品は軽量なマグネシウム製で
8×30Aではコストダウンでアルミに
置き換えられているのだと思う。

それでもMikron前期型と比べると
18gも重くなってるのだけど
IMG_8823
これはプリズムが大きくなったことが
かなり影響している。

一見、胴が長い前期型の方が
重そうに見えるけど
後期型は胴を短くするために
対物レンズとプリズムの距離を
近づけたせいでプリズムを
大きくしなければならず
逆に重くなってしまったようだ。


Mikron後期型と8×30A
最後の違いは見え味。
光学設計は同じだと思うんだけど
コーティングの違いなのか
見え味の方向性がまるで違う。

8×30Aは暖色系の着色があって
線が太めでコントラスト重視の
華やかコッテリ系。
IMG_8751


Mikronのほうは着色がかなり少なく
コントラスト抑え気味の
あっさりさっぱり系なのだ。
IMG_8745
線は細くてシャープに見えるんだけど
コントラストが低いせいか
遠近感が掴みにくく、平面的に見える。
この辺はオーバーコッヘンを
真似しきれなかったところかな?



・・・そんな感じでNikon8×30兄弟を
4台も集めてしまったねずみ。
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これでもまだ全種類ではなくて
8×30Aと8×30Eの間には
マイナーチェンジモデルも存在するし
現行機種である8×30EⅡも
ねずみはまだ覗いたことがない。

いつか全種類揃えて
覗き比べしてみたいな〜〜
なんて思ってるけど、、
いったい何台集めれば
気が済むんでしょうね?

自分でもよくわかりません^ ^;

今年最後のブログは
日本光学Mikron8×30 8.5°WFの話

IMG_7007

ミクロンって言うとちっちゃいやつを
想像すると思うけど
1950年代にニコンの双眼鏡の
ブランド名が全てMikronだった
時期があるようで8×30以外にも
いろんな機種が存在する。

IMG_7008
このミクロン8×30 8.5°WF
ねずみが最近整備した中でも
圧倒的に作りが丁寧で
見え味も抜群に良い双眼鏡なのだ!

・・・しかしこのフォルム
あの双眼鏡にそっくりですよね。

そう
CARLZEISS JENAデルトリンテム。
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スペックは8×30 実視界8.5°と全く同じ

背の高さはほぼ一緒で
ミクロンのほうがやや胴体が太い。


一見、デルトリンテムのコピーか?
と思ったんだけど
分解整備してみると全く印象は変わり、
デルトリンテムの良いところを
取り入れつつ、本家デルトリンテムを
越えようとした気概のある
双眼鏡であることが伝わってきた。
販売時期もデルトリンテム1Qと
被っているのでもしかしたら
ガチンコ勝負を挑んでいたのかな〜?

そんな歴史的にも貴重な双眼鏡。
ねずみはコイツを3000円程度で
入手した。
、、まぁカビだらけですからね
整備無しではまともに見えないので
普通の人は敬遠するでしょうね。。
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って事で整備に取り掛かる。

まずは接眼側からアプローチ
羽根を押さえているネジは真鍮製で
止めネジが2本も使われていて
安心感がある。
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しかもツァイスみたいに
噛み合ってるネジ山のど真ん中に
ねじ込んだりせずに
ちゃんと平面の部分に締め込んである。
これは後のNikon8×30にも
受け継がれている良い
構造。

そしてここにも
NikonのDNAを感じるポイント。
左の羽根のハメあいがやたらキツくて
外れる気配がない。
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この設定も後のモデルに
受け継がれてるんだけど、、
もうちょい緩くても良くない?と思う。

無理に外すと壊れる恐れがあるので
下陣笠の方から分解して

フォーカスリングごと引き抜いた。
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鏡体カバーを開けると作りの良い
プリズム押さえ金具が現れる。

キレイな十字型に打ち抜かれていて
バリは無くサビも全く出ていない。

手抜き双眼鏡はこの金具の作りが
いい加減なのですぐに分かる。
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矢印のところは
プリズム台座面の加工が接眼側の
遮光筒をうっすら突き破っていて
プリズムのコバが見えている。
可能な限り大きなプリズムと
大きなアイピースを組み合わせた
結果なのかも知れないけど、
遮光の面からは良く無いような?

一方、デルトリンテムは
ここは完全に塞がれていて
溝のついた遮光筒まで挿入してある。
コーティングが発明される前の
基本設計のためか迷光除去には
かなり気をつかっていたと思われる。
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一方、ミクロンの後継Nikon8×30Aは
ここが大きく開いていてプリズムが
はみ出している。
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コーティングの性能向上や
接眼レンズ構成の違いで
遮光の必要が無くなったのだろうか?
それとも単なるコストダウンか?
デルトリンテムとは全く対照的。

ミクロン8×30は両者の中間的な構造で
本格的なコーティング時代に移り変わる
過渡期の設計って印象を受ける。


またミクロン8×30の鏡体には
対物側と接眼側のプリズム室の間に
小さい穴が開けられており
中の空気が連通するようになっている。

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これもデルトリンテムには無い構造で
おそらくピント調節時のアイピースの
動きに伴う内圧の変動を緩和する
ためではないかと推測する。
先程のプリズム台座の加工が接眼筒に
突き抜けてるのは空気の通り道を
形成する狙いがあるのかも知れない。
8×30Aにもこの穴は受け継がれている。
(追記: あくまで推測ですので、、
本当の理由をご存じの方がいたら
是非教えてください。)

基本構成はデルトリンテムを踏襲しつつ
細かく改善を入れてるところが
いかにも日本らしいな〜と思う。


プリズムはもちろんカビだらけ。。
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プリズムに拭き傷をつけないように
クリーナーをカビに染み込ませて
溶かしながら落としていく。

幸いコーティング面が
侵食されてなかったので
カビ跡もわからないくらいに
取り除くことが出来た。
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ミクロンのプリズムの真ん中には
迷光を低減する溝が彫られている。
これもデルトリンテムには無いのだけど
ねずみが見た中で古いものでは
ライツのBINUXITに同じ溝があるのを
確認している↓

http://mouse830.livedoor.blog/archives/9465716.html

対物筒はデルトリンテムそっくりで
光路を全てカバーする長い遮光筒が
ついたタイプ。
極薄の金属製で内部に細かい溝が
びっしり彫られているのも
デルトリンテムと同じ。
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この部品の重さはなんと10gしかない!
fether-weightを謳っているだけあって
各部品が異常に軽い。

比較として
デルトリンテムの軽量モデルは9g。
ミクロンもかなり良い勝負してる。
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どちらもおそらくマグネシウム製で
持った感じはプラスチックのような
重さでしか感じない。
レンズとプリズムが重い分
他の部品を極限まで軽くする、
双眼鏡の軽量化って大変だなぁ〜

総重量は実測値で
ミクロン8×30: 479g
デルトリンテム1Q: 512g
ニコン8×30A: 515g
ミクロンはかなり軽い!
ベンチマークがデルトリンテム1Q
だとすると大幅に上回っている。

ちなみにチャンピオンは
デルトリンテム軽量非球面モデルの
407g。これ以上軽い8×30を
ねずみは知らない。


最後にアイピースを
ざっと比較してみる。
ミクロンのアイピース直径は
25.4mmでちょうど1インチ。

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デルトリンテムの方は
約24.5mmのツァイスサイズ。
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当然ながらツァイスサイズなので
旧式の天体望遠鏡のアイピースとして
流用出来たりもする。
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エルフレの広視界で高倍率を
味わえるのでなかなか面白い。
ニコンもツァイスサイズに
揃えてくれれば良かったのにな〜
8×30Aは何故かツァイスサイズより
小さい23mmとなっている。

ミクロンの接眼レンズは
かなり状態が良かったので
今回は分解しなかったのだけど
どこかでレンズ構成の比較もしてみたい。

光学系のクリーニングが終わったら
前回の記事で紹介した
像の倒れ調整↓もバッチリやった。

http://mouse830.livedoor.blog/archives/11741304.html
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視軸のほうも眼幅60mmと
70mmの平行器を
使って
主軸にほぼ一致させたうえで
64mmで上下ズレほぼ0、内方ズレ1分
ぐらいまで
追い込んだ。
各部品の精度が良いので
視軸調整はかなりやりやすかった。

そんな感じで整備を終えた
mikron 8×30 8.5°WF
FullSizeRender
プリズムカバーも少し磨いただけで
ピッカピカ!
塗装の質は世界の双眼鏡の中でも
トップクラスだと思う。

気になるミクロンの見え味は

やや平面的でシャープネスが高く

8×30Aに似た明るさもありながら
デルトリンテムのような周辺部の
ボケもあわせ持っている。
それでいて黄色の着色が薄くて
パサッと乾いた見え方をするところは
ミクロン独特の味。

こちらがミクロン8×30で見た景色
IMG_7644


参考に
デルトリンテム1Q
IMG_7650
ツヤがあって立体的。
背景の木の枝が主張せずに
手前の緑の葉っぱだけが浮き上がって
見えるのはさすが。


8×30A
IMG_7646
パッと明るくて華やかに見える
やや線が太めかな?

ミクロン8×30は
表現力ではデルトリンテムに
及ばないものの単純な光学性能では
デルトリンテムを凌いでいると感じる。


それと
どう表現していいか
分からないのだけど
視界の安定感がとっても良くて
覗いた瞬間に良い双眼鏡!
ってのが伝わってくる。
この「良い双眼鏡」の感覚は
1Qになる前のデルトリンテム
軽量エルフレモデルにも感じるのだけど
原因が何なのかはよく分からない。
左右の光学性能がピッタリ揃ってる
ってことなのだろうか?

このミクロン8×30のような
古くて良い双眼鏡に出会うと
新しいモノが良いモノとは限らないな
とつくづく思う。
最近の双眼鏡にはEDガラスとか
フーリーマルチだとか
優れた材料のモノは山ほどあるけど
このミクロン8×30には
基本を磨き上げたモノだけに宿る
スペックに現れない良さがある。

こういう出会いがあるので
まだまだ双眼鏡趣味はやめられない^ ^
来年も良い出会いがありますように!

今年一年ねずみブログを読んでいただき
ありがとうございました
来年もよろしくお願いします。

管理人ねずみ

今回は像の倒れについて
書いてみようと思う。

視軸調整については何回か書いてるけど
その前に行うべき
像の倒れ調整について
まだちゃんと書いて無かった。


これまた
正確な情報が見つからない中で
ねずみがいろいろ試してたどり着いた
独自のノウハウなので
参考にする方は自己責任で。
そしてもっといい方法をご存じの方は
是非教えて欲しいし
間違いがあったら指摘して欲しい。



まず。
像の倒れとは何か?

FullSizeRender
ゾウの倒れでは無い!


・・・気を取り直して。

像の倒れとは
双眼鏡を覗いた時に
像が傾いている角度のこと。


プリズム双眼鏡って
レンズで上下左右が反転した像を
プリズムで何回か反射させる事で
正立像に直して見ているものなので
プリズムの反射面間の角度がズレると
ピッタリ正立にならずに
ちょっと傾いた状態になる。


例えばポロ式の場合
ポロプリズム2つの交差する角度が
90°からズレると倒れが発生する。
倒れ
プリズムの角度誤差に対して
像は2倍の角度で倒れる。

倒れ差は
左右で倒れっぷりが違う場合の
角度差のこと。

倒れ差

中古の双眼鏡を買う時
視軸のズレを気にする人が
多いと思うけど

像の倒れを気にする人はそんなに
いないんじゃ無いかな?

しかしビンテージ双眼鏡ともなると
像の倒れが出てるものは
結構あるので
注意が必要だと思う。

ねずみが以前紹介した
デルトリンテム1Qもそうだった。

この時は平行器を通して
約100m先にある標識の柱を見た時に
傾きが一致していないので気がついた。
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小さい丸の中が平行器の
プリズムを通った側の視界。
倒れ差0.5°〜1°くらいかな?


JIS規格では高性能品のAA級で
像の倒れ±1.0°以内
像の倒れ差30分、つまり0.5°以内
となっている。

ねずみの感覚ではこれは結構緩くて

0°狙いでビタビタに合わせた方が
覗いていて気持ちいい。

それと倒れよりも倒れ差の方が重要で
倒れ差が0.5°もあると結構違和感がある。


例えば下のCADで引いた線。
赤線に対して青線は0.5°傾いている
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ぱっと見で傾いてるって分かる。
0.5°って結構大きいでしょ?


このデルトリンテム1Qを調整した時は
レンズまで組み上げた状態で
平行器を通して覗いた時に
道路標識の柱の傾きが
一致するように
プリズムの角度を動かして調整した。

倒れ差0.5°以内には合わせられている
と思うけど。
絶対的な倒れの調整が
出来ないのでこの方法では
共倒れが回避出来ないことは
過去
に書いている↓
http://mouse830.livedoor.blog/archives/8978567.html

それから色々な方法を試して
絶対的な倒れまで
調整できるように
なったので公開しようと思う。

用意するものはまたもや平行器

やり方はホントに単純で
まず一本真っ直ぐな線を描いた紙を
壁に貼る。

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それから
プリズムだけを組み付けた双眼鏡を
三脚にセットして
片側のプリズムだけ
平行器を通して
壁の線を見る。

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この時、平行器の片側は
双眼鏡のプリズムを通さずに
直接壁の線を見る。

絵にするとこんな感じ
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この状態で平行器を覗いて
2つの線が平行になるように

プリズムの傾きを調整するのだ。

例としてNikonの8×30Aを
調整した時の様子
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上にある線が双眼鏡のプリズムを
通った方で、微妙に左上がりに
傾いているのがわかると思う。
この倒れをプリズムの角度を
変えることで調整していく。

プリズムの角度調整は
押さえ金具を少し緩めておいてから
プリズムのコバ(側面)を押して
ガタの範囲内でズラすことで行う。
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注意点としては
絶対にマイナスドライバー等の
金属の道具を使わないこと!
プリズムのガラスは非常に脆いので
硬いものを当てるのは厳禁。

ねずみは先端を削った割り箸なんかを
使っている。


もともとのプリズムのガタだけでは
調整範囲を超えている場合
プリズムの側面をダイヤモンド砥石等で
うっすら削ってガタを増やす。


調整後はこちら
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かなり平行になってる。

完璧に調整した平行器であれば
平行器単体の倒れ誤差は0°なので
壁の線を基準にすれば
絶対的な0°を基準に調整が出来る、
つまり共倒れも回避出来るという事。

さっきの赤線と青線の絵で見たように
0.5°のズレは人間の目で容易に
判別可能なことが分かっているので
目で見て完全に平行と感じるところ
まで持っていけば
倒れは0.5°以内に調整出来ている
と言うことになる。


最終チェックは左右のプリズムを
通した視界を平行器で重ねて見る。
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一直線に重なって見えれば
倒れ差も0.5°以内に収まっている。

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と、こんな具合でやるのが
最近のねずみの定番になっている。

ここまで倒れ差を取り除いた双眼鏡は

覗いていて本当に気持ちがいいし
長時間覗いても酔いにくい。


この方法では
平行器を通して見える視界が
広ければ広いほど傾きが判別しやすく
なって精度が良くなる。

倒れ調整専用に
覗き窓がやたら大きくて
眼幅が極端に狭い平行器を作っても
良いのかもしれない。
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こんなやつ
今度暇があったら作ってみようかな。



・・・余談ですが

ゾウの倒れのネタのために
わざわざ粘土でゾウを作ったので

ついでに
当ブログのメインキャラクター
ねずみ工作研究所のねずみ
作っておいた。

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何を見ているんでしょうね?
彼は今後もこのブログに
登場するかも知れません。


話がそれたけど、、
以上が最新の

ねずみ流像の倒れ調整。

もっと良い方法が見つかれば
その2を書いてみようと思います!

前回の記事で紹介した
改良版ねずみ式平行器
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コイツをもっとカッコよく
そして使い勝手が良くなるように
カスタムしてみる。


まず調整機構のネジ径をM3からM2に変更。
ネジピッチを細かくすることで
微調整しやすくした。
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ついでに鉄だったのをSUS製に変更。

少しでもケースのアルミとの
線膨張の差を小さくして
温度変化による狂いを減らそうという考え。

ちなみに各材料の線膨張係数を調べてみると
アルミ(A6063)  : 23.4 (×10^-6/K)

真鍮              : 19
SUS304       : 17.3

鉄                 : 12.1
ガラス(BK7)   : 7.1
となっている。
温度帯で変わるので参考値。

アルミか真鍮がベストだけど
高価で種類も少ないので
実際使うならSUSかな〜?


それにしてもアルミとガラスの
線膨張の差ってすごく大きい。

なのでねずみは
アルミとガラスを接着する時に
大きい面積でくっつけないように
注意している。
熱応力でガラスが割れるといけないのでね。
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ハーフミラーの場合
接着してるのは真ん中の黒い部分だけ。


話は戻って
次にケース内面の艶消し黒塗装と
プリズムのコバ塗り。
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ちょっと値が張るけど
スコープライフさんが出してる
光学部品専用の塗料を買った。

80mlってちょっとかと思ったけど

これ一生分の量あるわ。。


プリズムの方はケースとの接触面だけは

精度確保のために塗らないでおいた
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矢印の面は塗ってないんだけど

他の面を全部黒くすると
この面も見た目が黒に変わる!
なんでだろうか?不思議。


黒塗装で一番効果があったのは覗き穴内側。
アルミ切削面のキラキラが無くなると
大分覗きやすくなる。
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逆にそこ以外は
あんまり効果ない気がするけど、、
塗り残しがあると
気になっちゃうので
全部塗っといた。


その次は双眼鏡に当てる面に
艶消し黒のカッティングシートを貼る。
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これは双眼鏡見口の傷つき防止と
接眼レンズへの反射を抑えるため。
塗装だと削れちゃうのでシールにした。


最後に一番気になってたガラ空きの
ケース端っこにフタを付ける。
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フタ自作は結構大変なので
市販のパイプエンドキャップを使った。


会議机の足とかに付いてるやつ。
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そのままだと差し込み部が長すぎるので
左のように切り詰めておく。

フタをはめたら完成!
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自前で作ったモノを自前でカスタムして
楽しむという、ただの自己満足。


ところでこの平行器の調整をしていて
新たに気付いたことがある。

今回の調整機構は
覗き穴の上下に付いてるのが
上下調整ネジ
左右に付いてるのが左右調整ネジ
となっていて

X-Yの調整を完全に分けたつもりだった。

でも実際やってみるとこんな動きをする。


右を回すと
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こんな感じで目標物が斜めに動く。
平行器_調整2


左を回すと
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こんな感じ。
平行器_調整1
最初に作ったやつが
たまたまそうなるのかと思ったら
量産した全ての個体がそうだったので
ちゃんと検証してみると、、


左右調整ネジを締める前の状態を
横から見るとこんな感じ。
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ネジを締め込んでいくと
調整機構のある面が弓なりにたわむ。

かなり大げさに描くとこんな感じ
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垂直の面がたわむと
ミラーを接着している水平の面が上に動いて
ミラーの反射面が下を向く。


すると視界が下に動いて目標物が上に動く
と言う原理のようだ。



これが何を意味するかと言うと
上下の調整ネジを使わなくても
左右のネジだけで

調整出来てしまうという事!

例えばこんな感じ。

左下にいる目標物を
真ん中に持って行きたければ
平行器_調整3

う〜む、

ネジ2本で調整出来て便利ではあるが
思ってたのと違う動作で
なんだかモヤモヤする。

なにはともあれ
使いやすい平行器が出来たことには
変わりないのでコレで良しとします!



色々やってるうちに
平行器だらけになってしまった。
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一番後ろの列はボツになった試作品
その前の列は最初に作った3台
その前のは今回作った改良版3台
一番手前がカスタム仕様と製造中のやつら。


おまけに新構造も開発してたりして、、
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こちらの詳細はまだ秘密ですよ〜。


双眼鏡調整の道具を揃えるために
作り始めた平行器だけど、

最近これを作ること
自体が
楽しくなってしまっているので
今後も改良を続けていくつもり。


以上、改良版平行器の製作でした。

最近、ねずみはコンパクトな双眼鏡に夢中になっている。
いわゆる「オペラグラス」なんだけど、オペラグラスって言うと安っぽく聞こえてしまうのはねずみだけだろうか?

オペラグラスと言えば本来は貴婦人が観劇に使うようなセレブ道具。


しかし
ねずみが子供のころに安っぽい粗悪品オペラグラスが氾濫した時期があった。
パカっと開いたりカクカク折り曲げたりして双眼鏡の形を成すプラスチックのオモチャみたいなやつね。。
無論、視軸調整なんて概念すら無いような代物。
そいつらがオペラグラスと呼ばれていたせいでその呼び方にはどうも抵抗
があって、ねずみはコンパクト双眼鏡と呼んでいる。

今回はねずみのコンパクト双眼鏡コレクションの中でも一番小さい双眼鏡
「テアティス」を紹介しようと思う。

黒のテアティスは
貴婦人が使う本当のオペラグラスとも違って、デルトリンテムのような
無骨な「双眼鏡」の雰囲気がある。
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このテアティスはマニアの間ではかなり有名で、すでにいろんな先輩方に名機として
ブログ等で紹介されている。

名機と呼ばれるだけあって
その性能は素晴らしい。
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片手に収まるサイズで携帯性は最高。

倍率は3.5倍と低いけど
最短合焦距離がおよそ40cmと極端に短い。
40cmって言ってもピンと来ないかもしれないけど、自分の手のひらを拡大して見ることが出来るって言ったら分かりやすいかな?

遠くの景色を見てもこのサイズからは想像出来ないほどシャープで明るくて、着色もほとんどない透き通った見え味に心奪われる。

・・・と、それは状態が良ければの話で
例によってねずみが入手した個体は光学系の状態が悪くてぼんやりした画像しか見ることが出来なかった。
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接眼側からライトを当ててみると曇ったプリズムの真ん中にダハの稜線がうっすら見える程度、。


こうなると当然、プリズムクリーニングして本来のクリアな見え味を取り戻してやりたいところだけど、それには一つ障害がある。
この黒いテアティスはプリズムカバーのネジがグッタペルカで覆われていて外せないのだ。

矢印の部分4箇所にカバーのネジがあるはずなのだが。。
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グッタペルカは硬くて脆いので一度剥がしたらバラバラになって、ジグソーパズルのようにピースを貼り合わせて再生するしかなくなる。

思い切って全部剥がしてビニックスレザーに置き換えるか、本革でも貼ってみるか。
それともこのまま曇った見え味で我慢するか。


てか、グッタペルカ剥がさないとメンテ出来ないなんて酷い設計だなぁ〜などと思いながら
悩んでいたとき、ねずみはふとあることに気付いた。
ネジの部分のグッタペルカの様子が少し違うのだ。
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矢印のところが分かりやすいと思う。
ネジの上だけ別のもので埋められているような丸い跡がある。

これでねずみは確信した。

黒いテアティスはグッタペルカを全部剥がさなくても分解出来るようにネジ部分だけ別のモノが詰められている。

やはりツァイスはメンテナンス性も考慮して設計していたのだ。

思い切ってこの部分を

ピンバイスで掘ってみると
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詰められていた黒い樹脂が取れた。

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この方法で全てのネジに
アクセスすることが出来た。これで遂にカバーを外すことが出来る!

こちらがカバーを外した状態

中には片側一つづつのプリズムと押さえ金具ががあるだけの超シンプル。
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ついにプリズムと対面することが出来た。

これがかの有名なシュプレンガー・レーマンプリズム!
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なんと一つの硝材で上下左右を反転出来るという優れモノ、しかも全て全反射で。

現在主流のシュミット・ペシャンプリズムに比べても高性能だと思うけど、やっぱり光路が一直線じゃないからレイアウトの制約が多くて主流になれなかったのかな〜?

上手く使えればすごく性能の良い双眼鏡が作れると思うんだけどな。


小さいけどダハの稜線はとことんシャープで、光の透過面にはコーティングもされている。
さらにはコバ塗りも丁寧に仕上げられていて、この小さなプリズムにものすごい技術とコストが注ぎ込まれていることが見て取れる。
まさにテアティスの命とも言えるプリズムだ〜!

ところがこのプリズム。性能の裏返しで整備はかなりの高難度、、一つのプリズムにつきダハ面含め5面をクリーニングしなければならない。
しかも鏡体からプリズムを出し入れする時に掴むところが一切無いと言うレイアウト上の制約まである。

反射面をピンセットで掴むわけに行かないので、ねずみは鉛筆のお尻にマスキングテープを輪っかに巻いたものを貼りつけて、それをプリズムのコバに押し付ける形で貼り付けて持ち上げた。

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この時一番気を使うのは、もちろんダハの稜線。

硬いモノに当てたら一発で欠けてしまうと思われるが、鏡体内部の形状とやたら近い箇所があってプリズムをちゃんとした位置に嵌め込むまではここに干渉する可能性がある。
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コンパクト化のために隙をギリッギリまで詰めてるのは分かるんだけど、この設計はホントに勘弁して欲しい、、
メンテナンス性いいんだか悪いんだか。
ここに絶対当てないように!って超緊張しながら作業した、、寿命縮んだかも。


なんとかプリズムとレンズをクリーニングしてクリアな視界を取り戻したテアティス。
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レンズもこれまた極小なので
クリーニングが難しかった、、

こんなに小さいのにちゃんと二重偏心環で視軸調整するようになっているのだが、これもまた難しい。

JIS規格上は倍率が小さいほど基準値が緩いので簡単だと思いがちだけど

0付近を狙った精密調整をやろうと思うと倍率が小さいと平行器を通して見た目標物が小さくなってズレの判別が難しくなるのだ。

・・・なんだか難しいことずくめのテアティスだけど最後にまだ大きな問題が残っている。

カバーのネジを隠していた黒い樹脂部分の再生だ。

元の材質がなんだったのか分からないけど、何かで代用して塞ぐしか無い。

そこで目をつけたのがコレ。
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ちょっとお高めのモデナと言う樹脂粘土。

こんな使われ方は想定外だと思うけど、伸びが良くて穴埋めには適している。
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ヘラの先で押してグッタペルカの模様ぽいものを再現。

仕上がりも艶消しでしっかり黒いのでグッタペルカに良く馴染む
完璧とはいかないけどパッと見わからないくらいになった。
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ねずみ的には大満足な仕上がり。


外観はともかくとして、スッキリ見えるようになったテアティス。

こちらがクリーニング後のテアティスで見た
1m先のデルトリンテム。
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細部まで観察出来て、これくらいが一番美味しい距離感だな〜と思う。
博物館の展示物とか水槽の魚なんかが
ベストじゃないかな。
(双眼鏡で双眼鏡を見るややこしい絵に
なってしまった)


20mくらい先の木を見てみるとこんな感じ。
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倍率が低いのでパッと見の迫力には欠けるけど、中心部に目を凝らすと細い線までシャープに見えて来る、そしてとにかくクリアで色が綺麗。


現代ではほとんど絶滅してしまったと思われるプリズム式の本気のコンパクト双眼鏡。
今新品で買えるのはNikonの遊くらいなのかな?

工作技術は格段に進歩してるのに、こんなに細部にこだわった良いモノは2度と作られないだろうと思うとなんだか寂しい。


このテアティスは壊さないように大事に使い倒そうと思う。

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