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今年最後のブログは
日本光学Mikron8×30 8.5°WFの話

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ミクロンって言うとちっちゃいやつを
想像すると思うけど
1950年代にニコンの双眼鏡の
ブランド名が全てMikronだった
時期があるようで8×30以外にも
いろんな機種が存在する。

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このミクロン8×30 8.5°WF
ねずみが最近整備した中でも
圧倒的に作りが丁寧で
見え味も抜群に良い双眼鏡なのだ!

・・・しかしこのフォルム
あの双眼鏡にそっくりですよね。

そう
CARLZEISS JENAデルトリンテム。
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スペックは8×30 実視界8.5°と全く同じ

背の高さはほぼ一緒で
ミクロンのほうがやや胴体が太い。


一見、デルトリンテムのコピーか?
と思ったんだけど
分解整備してみると全く印象は変わり、
デルトリンテムの良いところを
取り入れつつ、本家デルトリンテムを
越えようとした気概のある
双眼鏡であることが伝わってきた。
販売時期もデルトリンテム1Qと
被っているのでもしかしたら
ガチンコ勝負を挑んでいたのかな〜?

そんな歴史的にも貴重な双眼鏡。
ねずみはコイツを3000円程度で
入手した。
、、まぁカビだらけですからね
整備無しではまともに見えないので
普通の人は敬遠するでしょうね。。
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って事で整備に取り掛かる。

まずは接眼側からアプローチ
羽根を押さえているネジは真鍮製で
止めネジが2本も使われていて
安心感がある。
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しかもツァイスみたいに
噛み合ってるネジ山のど真ん中に
ねじ込んだりせずに
ちゃんと平面の部分に締め込んである。
これは後のNikon8×30にも
受け継がれている良い
構造。

そしてここにも
NikonのDNAを感じるポイント。
左の羽根のハメあいがやたらキツくて
外れる気配がない。
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この設定も後のモデルに
受け継がれてるんだけど、、
もうちょい緩くても良くない?と思う。

無理に外すと壊れる恐れがあるので
下陣笠の方から分解して

フォーカスリングごと引き抜いた。
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鏡体カバーを開けると作りの良い
プリズム押さえ金具が現れる。

キレイな十字型に打ち抜かれていて
バリは無くサビも全く出ていない。

手抜き双眼鏡はこの金具の作りが
いい加減なのですぐに分かる。
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矢印のところは
プリズム台座面の加工が接眼側の
遮光筒をうっすら突き破っていて
プリズムのコバが見えている。
可能な限り大きなプリズムと
大きなアイピースを組み合わせた
結果なのかも知れないけど、
遮光の面からは良く無いような?

一方、デルトリンテムは
ここは完全に塞がれていて
溝のついた遮光筒まで挿入してある。
コーティングが発明される前の
基本設計のためか迷光除去には
かなり気をつかっていたと思われる。
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一方、ミクロンの後継Nikon8×30Aは
ここが大きく開いていてプリズムが
はみ出している。
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コーティングの性能向上や
接眼レンズ構成の違いで
遮光の必要が無くなったのだろうか?
それとも単なるコストダウンか?
デルトリンテムとは全く対照的。

ミクロン8×30は両者の中間的な構造で
本格的なコーティング時代に移り変わる
過渡期の設計って印象を受ける。


またミクロン8×30の鏡体には
対物側と接眼側のプリズム室の間に
小さい穴が開けられており
中の空気が連通するようになっている。

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これもデルトリンテムには無い構造で
おそらくピント調節時のアイピースの
動きに伴う内圧の変動を緩和する
ためではないかと推測する。
先程のプリズム台座の加工が接眼筒に
突き抜けてるのは空気の通り道を
形成する狙いがあるのかも知れない。
8×30Aにもこの穴は受け継がれている。
(追記: あくまで推測ですので、、
本当の理由をご存じの方がいたら
是非教えてください。)

基本構成はデルトリンテムを踏襲しつつ
細かく改善を入れてるところが
いかにも日本らしいな〜と思う。


プリズムはもちろんカビだらけ。。
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プリズムに拭き傷をつけないように
クリーナーをカビに染み込ませて
溶かしながら落としていく。

幸いコーティング面が
侵食されてなかったので
カビ跡もわからないくらいに
取り除くことが出来た。
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ミクロンのプリズムの真ん中には
迷光を低減する溝が彫られている。
これもデルトリンテムには無いのだけど
ねずみが見た中で古いものでは
ライツのBINUXITに同じ溝があるのを
確認している↓

http://mouse830.livedoor.blog/archives/9465716.html

対物筒はデルトリンテムそっくりで
光路を全てカバーする長い遮光筒が
ついたタイプ。
極薄の金属製で内部に細かい溝が
びっしり彫られているのも
デルトリンテムと同じ。
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この部品の重さはなんと10gしかない!
fether-weightを謳っているだけあって
各部品が異常に軽い。

比較として
デルトリンテムの軽量モデルは9g。
ミクロンもかなり良い勝負してる。
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どちらもおそらくマグネシウム製で
持った感じはプラスチックのような
重さでしか感じない。
レンズとプリズムが重い分
他の部品を極限まで軽くする、
双眼鏡の軽量化って大変だなぁ〜

総重量は実測値で
ミクロン8×30: 479g
デルトリンテム1Q: 512g
ニコン8×30A: 515g
ミクロンはかなり軽い!
ベンチマークがデルトリンテム1Q
だとすると大幅に上回っている。

ちなみにチャンピオンは
デルトリンテム軽量非球面モデルの
407g。これ以上軽い8×30を
ねずみは知らない。


最後にアイピースを
ざっと比較してみる。
ミクロンのアイピース直径は
25.4mmでちょうど1インチ。

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デルトリンテムの方は
約24.5mmのツァイスサイズ。
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当然ながらツァイスサイズなので
旧式の天体望遠鏡のアイピースとして
流用出来たりもする。
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エルフレの広視界で高倍率を
味わえるのでなかなか面白い。
ニコンもツァイスサイズに
揃えてくれれば良かったのにな〜
8×30Aは何故かツァイスサイズより
小さい23mmとなっている。

ミクロンの接眼レンズは
かなり状態が良かったので
今回は分解しなかったのだけど
どこかでレンズ構成の比較もしてみたい。

光学系のクリーニングが終わったら
前回の記事で紹介した
像の倒れ調整↓もバッチリやった。

http://mouse830.livedoor.blog/archives/11741304.html
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視軸のほうも眼幅60mmと
70mmの平行器を
使って
主軸にほぼ一致させたうえで
64mmで上下ズレほぼ0、内方ズレ1分
ぐらいまで
追い込んだ。
各部品の精度が良いので
視軸調整はかなりやりやすかった。

そんな感じで整備を終えた
mikron 8×30 8.5°WF
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プリズムカバーも少し磨いただけで
ピッカピカ!
塗装の質は世界の双眼鏡の中でも
トップクラスだと思う。

気になるミクロンの見え味は

やや平面的でシャープネスが高く

8×30Aに似た明るさもありながら
デルトリンテムのような周辺部の
ボケもあわせ持っている。
それでいて黄色の着色が薄くて
パサッと乾いた見え方をするところは
ミクロン独特の味。

こちらがミクロン8×30で見た景色
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参考に
デルトリンテム1Q
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ツヤがあって立体的。
背景の木の枝が主張せずに
手前の緑の葉っぱだけが浮き上がって
見えるのはさすが。


8×30A
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パッと明るくて華やかに見える
やや線が太めかな?

ミクロン8×30は
表現力ではデルトリンテムに
及ばないものの単純な光学性能では
デルトリンテムを凌いでいると感じる。


それと
どう表現していいか
分からないのだけど
視界の安定感がとっても良くて
覗いた瞬間に良い双眼鏡!
ってのが伝わってくる。
この「良い双眼鏡」の感覚は
1Qになる前のデルトリンテム
軽量エルフレモデルにも感じるのだけど
原因が何なのかはよく分からない。
左右の光学性能がピッタリ揃ってる
ってことなのだろうか?

このミクロン8×30のような
古くて良い双眼鏡に出会うと
新しいモノが良いモノとは限らないな
とつくづく思う。
最近の双眼鏡にはEDガラスとか
フーリーマルチだとか
優れた材料のモノは山ほどあるけど
このミクロン8×30には
基本を磨き上げたモノだけに宿る
スペックに現れない良さがある。

こういう出会いがあるので
まだまだ双眼鏡趣味はやめられない^ ^
来年も良い出会いがありますように!

今年一年ねずみブログを読んでいただき
ありがとうございました
来年もよろしくお願いします。

管理人ねずみ

今回はちょっと趣向を変えて
リーズナブルな双眼鏡

ペンタックスの8×24UCF
通称「タンクロー」を取り上げてみる。
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ねずみが入手したのは

ちょっとレアな白い外装の中古品で
SPORTSと書いてあるけど防水でも無く
ただの色違いみたい。
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やや古いMADE IN JAPANモデル。

このタンクロー
現行品でも実勢価格6,000〜9,000円
程度と
かなりの廉価であるにも関わらず
及第点の光学性能を
確保している。

一言で表現するなら
「最も安く手に入るまともな双眼鏡。」
・・・逆に言うと
これより安くてまともな双眼鏡は
存在しないし、買ってはいけないと
ねずみは勝手に思っている。
(個人の感想です)

たまに景色のいい観光地に行くと
ホームセンターで安く売られてるような
粗悪品双眼鏡を構えている人を
目撃することがある。

そんな時ねずみは

「せめてタンクローを買ってきてくれ〜
せっかくの景色がもったいない!」
と心の中で思ってしまうのだ。


そんなタンクローだけど
中古品で程度の良いものはなかなか
無いようで、今回整備する個体も
しっかりカビが生えていた。
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対物レンズの曇りもあったので
例のごとく徹底的に分解クリーニング
することにした。

ねずみの経験上
プラスチック製の双眼鏡は
接着剤が多用されていて分解=破壊
となる事が多いのだけど

このタンクローは全ての部品が
ねじで結合されているので分解が可能。

(プリズムのセメントは除く)
おそらく分解整備に耐えられる双眼鏡
の中で最も廉価とも言えると思う。

分解にはまず外装のラバーを全て剥がす。

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両面テープでくっついてるだけなので
簡単に剥がれる。

銘板の裏にネジが隠れているので
これも剥がす。
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接眼側真ん中のカバーを外すと
金属のプレートが現れるのでこれも外す。
この板は左右の鏡筒を保持しながら
2軸の回転軸を作っている重要な部品。
赤矢印の所が接眼側の回転軸になってる

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左右の鏡筒はギヤで噛み合っていて
連動して開く仕組みだ。

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ペンタックス独自の2軸構造で主軸が無い

この構造は剛性を出すのにも
貢献してるだろうし
三脚ネジが下から付けられるのも便利。
これ考えた人ホントに尊敬してしまう。

次に上面に付いているハッチを開けて

フォーカスリングを取り外す。
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ダイヤルの回転に応じて前後に動く
2本の爪(赤矢印)が左右の対物レンズ筒の
溝(青矢印)に引っ掛かっていて

この爪で対物レンズを
動かして
ピント調整する機構。
これは前回紹介したダイアスポーツと
似ている。


特徴的なのはディオプターの構造で、
フォーカスリングの真ん中に付いてる
もう一つのダイヤルを回すと
右側(写真では左側)の爪だけが
独立して前後に動くようになっている。

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これで左右の対物レンズの移動量を
変えて視度補正するのだ。

ほんとによく考えてるな〜と感心する、
メカ屋さんが考えた双眼鏡って感じ。

フォーカスリングを外せば
左右の鏡筒が完全に分離できる。
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分解出来たら
光学系のクリーニング作業に移る。


対物レンズを取り出して問題のカビを
除去していく、
矢印のとこがカビ。
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ねずみはクリーニングに何種類かの
薬剤を使い分けていて
カビに対してはフジフィルムの
クリーナーが効果的なことが
なんとなく分かっている。

まず試しに無水エタノールで拭いてみると
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カビ本体は取れたけど
跡が残ってしまう。

次にフジフィルムのクリーナー
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カビ跡までかなりキレイに取れた。
アルカリ性が効くのだろうか?
油汚れもよく取れるので
ねずみはこれを愛用しているが
お値段はすこぶる高い!

カビは除去したものの、このレンズには
致命的な欠陥があって、、
それがこの曇り!
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しかも表面ではなく
レンズ貼り合わせの接着剤が劣化して
曇っている。

今回ねずみは
禁断の「
バルサム剥がし」を
やってみる事にした。

貼り合わせレンズを一旦剥がして
汚れを除去してから最接着するのだ、
この曇りを取るにはこれしか
方法がない。

ドイツ製ビンテージ双眼鏡なんかだと
怖くてやれないけど
ジャンクのタンクローなら
チャレンジしてみても良いかなと。。

但し、一度剥がしてしまうと
レンズどうしの外径合わせで
再接着することになるので
光学的な芯出しが出来なくなる。

つまり工場出荷状態の性能には
戻らない。

しかし、、最初からこんなに
外径がずれてることってあるのかな??
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不安だけど、とにかくやってみる。

熱湯に浸けたらあっさり剥がれた。
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剥離した面からは
強烈な化学物質のニオイが漂う、、
明らかに天然バルサムではないものが
使われているようだったが
この接着剤は無水アルコールで
簡単に除去する事が出来た。

貼り合わせにはUVレジンを使う、
透明性が高くて黄変しないと評判の
パジコの「星の雫」と言うレジンを
使ってみた。
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レジンを垂らして貼り合わせたら
ゆっくり回しながら気泡を抜いていく。
レジンの量が多すぎるとこんな風に
横から溢れてくるので注意が必要。
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厚みが出ないようしっかり押さえてから
溢れたレジンを拭き取る。
外径合わせで位置を決めたら
UVライトで接着、もう後戻り出来ない!
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貼り合わせ作業は成功で
スッキリ曇りの無い透明感が戻った。
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プリズムの方もカビを落として
クリーニングする。
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プリズムはセメントで固定されてるので
手で押してバキッと剥がす。
戻す時はセメントの破断面が
ピッタリ噛み合うようにすれば
プリズムの位置がズレないので
付着したセメントはそのままに
しておく。


最後に視軸調整のやり方だけど
このブログではまだ紹介していない
プリズムを傾ける方式。
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詳しくは説明しないけど
プリズムをイモネジで横から押す事で
プリズムが傾いて視軸が動く仕組み。

組み付け後は
イモネジがこの位置に来る。

上が上下の調整で、横が左右の調整
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ネジを締めた時に
視界がどちらに動くかは

実際やってみるとわかると思うけど
上下と左右では逆の動きをするので
ちょっと慣れが必要かも。


整備を終えたタンクロー
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こちらが
整備後のタンクローで見た景色。
スマホの写真なのであくまで参考で
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視野もそこそこ広くて
周辺までハッキリ見えてクセがない。
バルサム再接着による
光学芯ズレの影響は
ねずみの目には
全く分からなかった。


比較として同じ逆ポロの
ヘンゾルト・ダイアスポーツ

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クセのある歪みとクローズアップされた
中心部のシャープさに感動を覚える。



タンクローの見え味は
決して感動的ではないけれど
特に悪い所も見当たらなくて
この値段でこれだけよく見える
双眼鏡って貴重だと思う。
最新のモデルは見たこと無いけど
もっとよく見えるのかも知れない。

双眼鏡に1万円以上出すのはちょっと
理解出来ない!って人や
とにかく安いやつ一台あればいい、
って人には
是非オススメしたい双眼鏡。

・・・って
そんな人はこのブログ読んでないか?!

平行器ネタが続いたので
久々に双眼鏡レビュー&修理記録。

今回はねずみが大好きなヘンゾルトの

コンパクト双眼鏡
ダイアスポーツ8×20の話

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ねずみ的には逆ポロ型の中で
最も可愛くてオシャレな
双眼鏡だと思う。
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シリアルの頭4ケタが7777で縁起が良い。


ヘンゾルトって言うと
軍用のイメージが強いかも知れないけど
このダイアスポーツは丸くて
柔らかいラインがなんとも可愛いのだ。
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さらに可愛いのがこのケース
デルトリンテムのケースと比べると
子供みたい。
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前オーナーの保管状態は知らないが
紐が(本物の)ねずみにかじられている、、
そんなところも可愛い??
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ねずみが入手したモノは
光学系に曇りがある程度の
なかなか良い状態だった。

ひとつだけ残念なのは外装の張り革。
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グッタペルカが剥がれてしまったのか
安っぽい合皮に貼り替えられていて
かなりチープな見た目だった。
なので今回は張り革の交換も含めて

徹底的にリフレッシュしようと思う。


このダイアスポーツ
可愛い見た目とは裏腹に
中身はドイツっぽい精密で複雑な
構造になっている。

資料も無く構造がわからないので

あらゆる可能性を考えながら
慎重に分解していった。

まずフォーカスリングのダイヤルを外すと

真鍮製のリングと両端に掛かっている
2本の棒があらわれる。
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この棒は対物レンズ側まで貫通していて
真鍮のリングを外しても
抜くことが出来ない。


接眼レンズは普通にねじって
外すことが出来たが、接眼側の
鏡体カバーがなぜか外れないので
対物レンズ側から先に分解してみる。

ピント調節の機構が対物側に

あるので外す時には注意が必要。
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先程出てきた棒の横に付いた突起が
対物レンズ筒に噛み合っていて
棒の押し引きで対物レンズを前後させる
仕組みになっている。

この噛み合い部分を上手く外しながら
対物筒と棒を引き抜く。
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対物側はこれで全て外すことが出来た。

ここまで外したところで
接眼側のプリズムカバーが
外れない
理由が判明した。
なんと内側からネジ留めされているのだ。

これは他の双眼鏡では見たことない構造
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しかもこのネジは
プリズムの入射すぐ横に付いてるので
もしドライバーを滑らせてしまったら
即プリズムに傷がつくという
恐ろしいレイアウト。
・・・緊張しながら慎重に外した


なんとか分解が完了!
これがダイアスポーツの全部品。
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ねずみはいつも分解した部品を
仕切りの付いた箱に収納して
管理している。
ビンテージ双眼鏡は現物合わせで

調整してあるものが多いので左右の部品が
入れ替わらないよう注意が必要。


分解後は最も気を使う
プリズムクリーニングの作業。

結構な曇りが出ているが
幸いカビは生えてない。
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完全に曇りを取り除くことが出来た。
プリズムが小さいので
比較的クリーニングはやりやすい。
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カバーもきれいにして
文字のホワイトを入れ直す。
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違いが分かるかな?
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ヘンゾルトのマークって
アッべケーニッヒプリズムがモチーフだと
思うんだけど角張っててカッコいい。


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クリーニングした部品を組み直したら
外装の張り替え作業。

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元のレザーを全て剥がしてから
養生テープを使って型取りする。


上が元々貼ってあった安っぽいやつで
下が新たに切り出したビニックスレザー。
シボの高級感が全く違う。

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2次曲面なので貼り付けは巻くだけ簡単。


最後に視軸調整をしたら完成なのだけど
なんと接眼側に二重偏心環が付いていて
接眼レンズの位置を動かして
視軸調整する
構造になっている。

これも他の双眼鏡では
ほとんど見たことが無い構造。
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リングが小さくて回しにくい上に
調整する毎に眼幅が変化するので
ちょっとやり辛い。。

そんな感じで
調整を終えたダイアスポーツ
コンパクトでも侮るなかれ
その見え味は本当に素晴らしい!
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ヘンゾルトらしく
中心部がシャープで
着色のほとんど無いクリヤーな視界。


比較として兄貴分ダイアゴンの視界

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こちらも中心部は極めてシャープ。

視界はかなり広いけど周辺部がグルグルに
ボケているのであまり役立っていない。。


逆にダイアスポーツはダイアゴンの
良いとこだけをスパッと切り出した
よう
でとっても気持ちいいのだ。

ダイアゴンと並べてみる。

このコンパクトさでも
決して見え味では劣ってないぞ!
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最後に気になるところ一つ・・・
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写真右側のプリズムカバーに

眼幅を読むための目印が

刻んであるのだけど、、

目盛りの書いてある陣笠も一緒に

動いてしまって目盛りの意味が無い。


中身であれだけ複雑な構造を

成立させておいて、単純なところで

まさかの設計ミス??

設計者はさぞかし

ショックを受けただろう。。

それがそのまま世に出ているところが

また可愛いところでもある。


(訂正。この現象はこの個体特有の

不具合のようで単純な設計ミス

というわけではないようです、

陣笠を止めている中心軸の固定が

緩んで右鏡筒に連れ回っている

ようでした。)



そんなヘンゾルトダイアスポーツ

コンパクトさと可愛さと光学性能を

兼ね備えた唯一無二の双眼鏡

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コイツを持ってどこに行こうかな〜?

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