タグ:ペンタックス

今回はPENTAXタンクローの弟分
タンクローminiで遊んでみた話。
FullSizeRender
このロボット的な顔が可愛いですよね。


普通のタンクローよりひと回り小さくて
その割になかなかよく見えるので
ねずみはよくカバンに忍ばせて
持ち歩いている。
倍率のバリエーションが多いのも特徴で
見え味を比べてみたくなって
倍率違いで4台揃えてしまった。

最近の双眼鏡は8倍と10倍に
落ち着いてしまったものが多いが
このタンクローminiは
7、8、9、10と1倍ずつ
刻んでるところが面白い。
FullSizeRender
いったいどんな用途を想定したら
このラインナップになるのだろうか?
このクラスの双眼鏡を購入する層が
7倍と8倍の違いにこだわるとも
思えないし。。


FullSizeRender
ちなみにこちらは
タンクローminiの遺伝子を受け継いだ
現行機種のUP8×21
実勢価格6,000円程度で入手可能なうえ
光学性能もなかなか良いので
初めて双眼鏡を買う人にねずみが
一番オススメしたい機種。



タンクローminiの方はすでに廃盤なので
中古で入手するしか無いのだけど
なかなか程度の良いものに
当たることは無い。
視軸なんかほぼ確実にズレているので
普通は手を出さない方がいいと思う。

今回ねずみが入手したのは
もちろんハズレですよ。。
FullSizeRender
ホコリやら曇りやらで真っ白。

どうせハズレなら遊んでみよう!
と言うことで前から試したかった
アレをやってみることにした

まず分解。
FullSizeRender
構造はタンクローとほぼ同じ。

粘土の高いグリスがいろんなところに
使われていて、手に着くとベタベタが
取れないのでゴム手袋などを付けて
作業した方が良い。

FullSizeRender


プリズムは全体的に曇っているので
バラしてクリーニングを行う。
FullSizeRender

今回は接眼レンズもバラしてみた。
こちらは7倍モデルのもの
FullSizeRender
ガラスレンズとプラスチックレンズが
組み合わされた構成になっていて
プラスチックレンズには
非球面っぽい面もある。
これがどんな役割を果たしているのか
詳しくはわからないのだけど
なかなか凝ったレンズ構成に見える。

まずはいつものようにこれらの部品を
クリーニングしていくのだが
本題はその後、
今回やってみたかったアレとは
レンズ・プリズムのコバ塗りと
鏡筒内面の黒艶消し塗装なのだ!


以前、平行器にやったことがあって
これがなかなか効果があったので
双眼鏡でも試したいと思ってたけど
なかなか試せる双眼鏡がなくて
出来なかった。

あんまり歴史ある双眼鏡の
仕様を変えちゃうのは気がひけるけど
タンクローminiならいいかなと。

こちらが塗装後。

FullSizeRender
プリズム押さえ金具から
カバー裏側まで全部塗った。

FullSizeRender

塗装前との比較
FullSizeRender
塗装有無の違いを見るために
片側は塗装なしのクリーニングのみで
組んでみることにした。

プリズム組み上げ後に対物側から
見たところ。

FullSizeRender
向かって左が塗装後。
キラキラしたネジの頭も全部黒くして
ここまでやれば完璧!

こちらは接眼側から見たところで
右側が黒塗りした方

FullSizeRender
射出瞳周辺の余計な光が
激減していることが分かる。
きっとコントラストも向上して
抜群の見え味に変貌していることだろう。

んで、いざ景色を見てみると〜

こちらがクリーニングだけの方
FullSizeRender

こちらが黒塗りした方。
FullSizeRender
ん?なんか違うかな??
判別出来る違いは視野環の外で
光ってる部分が無くなったことぐらい。

肝心のコントラストは・・・
微妙に良くなったかなぁ?
視野の端の方は改善してるような?
ん〜あんまり分からん。

やっぱり製品状態ですでに
最適に仕上げられているようで
コバ塗り追加したくらいで劇的に
良くなるなんて事は無いようだ。

鏡筒内が真っ黒なのは
気持ちいいんですけどね。

9倍の方もフルで塗装してみたけど

やっぱり期待したほどの効果は無かった。
FullSizeRender

・・・今回はちょっと微妙な結果に
終わってしまったのだけど
多少改善する部分もあるようなので
手頃な双眼鏡があれば
また試してみたいと思う。



続いてタンクローminiの
倍率違い4モデルの特徴を
ざっと紹介してみる。
この4モデルは単なる倍率違いでは無く
視界の広さにも違いがある。

実視界で比較すると
・7倍モデル: 8°

・8倍モデル: 6.2°

・9倍モデル: 6.3°
・10倍モデル: 5°

旧規格の見掛け視界で比較すると
・7倍モデル: 7×8=56°
・8倍モデル: 8×6.2=49.6°

・9倍モデル: 9×6.3=56.7°
・10倍モデル: 10×5=50°

つまり7倍と9倍だけ視界が広いのだ。
この2機種だけプレミアム仕様なのか?


見え味についても
ねずみの感想を列挙すると
・7倍モデル
FullSizeRender
着色が少なく視界も広く、明るさも十分
周辺部は適度な崩れがあって
ビンテージ双眼鏡っぽい
味のある見え方をする。
着色が少ないのはコーティング面が
少ないせいかも知れない。


・8倍モデル
FullSizeRender
全体的に赤っぽい着色がある。
やや視界が狭めだが歪みは少なくて
可もなく不可もなくって感じ。


・9倍モデル
FullSizeRender
ねずみ的には4モデル中で最も
高級な見え方をするように感じる。
視界が広いのに周辺の歪みも少なく
倍率もそこそこ高いので迫力もある。
重量が軽いおかげか手ブレも許容範囲で
これぞベストバランス。


・10倍モデル
FullSizeRender
視界が狭いのが気になる、
それにアイレリーフが短すぎて
まつ毛がレンズに押し付けられるのが
気になってまともに見ていられない。。
これはちょっと無しかな。


ちなみに9倍にはプリズムの直後に

分厚いレンズが入ってたんだけど
フラットナーレンズなのだろうか?
FullSizeRender

(2022.05.23写真追加)
FullSizeRender
8倍よりも若干コストかかってそうな
感じを受ける。
このレンズは9倍だけに付いているが
レンズを取り付けるためのネジ穴は
他の機種にも設けられていて
最初からこれを追加できるように
考えられていたようだ。


ねずみがこのラインナップの中で2種類
残すとしたら迷わず7倍と9倍を選ぶ。
しかし現行機種で淘汰されずに
残っているのは8倍と10倍なのは
何故だろう。
コスト的なことなのだろうか?
理由は分からないけど
ねずみ的にはかなり残念
9倍一本でも良かったと思うんだけどね。

低価格で小型軽量
子供に使わせるにもちょうどいい

タンクローminiと後継のUP8×21。

FullSizeRender
同じ価格帯では使い物にならないような
ダハ型が多い中で、ちゃんとした
光学性能を確保している貴重なモデル。


このモデルはずっと残して欲しいと思う
そしていつか9倍の復活を期待したい!
その時はもちろんフルマルチでね。



(2022.5.23追記)
4機種の接眼レンズを比較してみました。
接眼レンズを変えることで
倍率を変えているのでしょうか?
FullSizeRender
4機種とも目レンズの径と
表面の曲率が違います。

8、9、10倍はアイピースの長さが
順に短くなっているように見えますが
一番短いのは7倍です。
FullSizeRender
10倍のアイレリーフが極端に短いことは
見口のゴムの短さでわかりますね。


対物レンズの方はコーティングの
色味が微妙に違うくらいしか
わかりませんでした。
FullSizeRender
四角いライトの映り込みが
若干違って見えますが
主にライトとの位置関係によるものです。

タンクローminiは一体どうやって
同じボディで4つの倍率違いを
作り出しているのでしょう?
そしてこのバリエーション展開に
どのような意味があったのか?

こればかりは設計者に聞いてみないと
分からないのかもしれません。

今回はちょっと趣向を変えて
リーズナブルな双眼鏡

ペンタックスの8×24UCF
通称「タンクロー」を取り上げてみる。
FullSizeRender

ねずみが入手したのは

ちょっとレアな白い外装の中古品で
SPORTSと書いてあるけど防水でも無く
ただの色違いみたい。
IMG_6563
やや古いMADE IN JAPANモデル。

このタンクロー
現行品でも実勢価格6,000〜9,000円
程度と
かなりの廉価であるにも関わらず
及第点の光学性能を
確保している。

一言で表現するなら
「最も安く手に入るまともな双眼鏡。」
・・・逆に言うと
これより安くてまともな双眼鏡は
存在しないし、買ってはいけないと
ねずみは勝手に思っている。
(個人の感想です)

たまに景色のいい観光地に行くと
ホームセンターで安く売られてるような
粗悪品双眼鏡を構えている人を
目撃することがある。

そんな時ねずみは

「せめてタンクローを買ってきてくれ〜
せっかくの景色がもったいない!」
と心の中で思ってしまうのだ。


そんなタンクローだけど
中古品で程度の良いものはなかなか
無いようで、今回整備する個体も
しっかりカビが生えていた。
FullSizeRender
対物レンズの曇りもあったので
例のごとく徹底的に分解クリーニング
することにした。

ねずみの経験上
プラスチック製の双眼鏡は
接着剤が多用されていて分解=破壊
となる事が多いのだけど

このタンクローは全ての部品が
ねじで結合されているので分解が可能。

(プリズムのセメントは除く)
おそらく分解整備に耐えられる双眼鏡
の中で最も廉価とも言えると思う。

分解にはまず外装のラバーを全て剥がす。

FullSizeRender
両面テープでくっついてるだけなので
簡単に剥がれる。

銘板の裏にネジが隠れているので
これも剥がす。
FullSizeRender
接眼側真ん中のカバーを外すと
金属のプレートが現れるのでこれも外す。
この板は左右の鏡筒を保持しながら
2軸の回転軸を作っている重要な部品。
赤矢印の所が接眼側の回転軸になってる

FullSizeRender

左右の鏡筒はギヤで噛み合っていて
連動して開く仕組みだ。

FullSizeRender
ペンタックス独自の2軸構造で主軸が無い

この構造は剛性を出すのにも
貢献してるだろうし
三脚ネジが下から付けられるのも便利。
これ考えた人ホントに尊敬してしまう。

次に上面に付いているハッチを開けて

フォーカスリングを取り外す。
FullSizeRender
ダイヤルの回転に応じて前後に動く
2本の爪(赤矢印)が左右の対物レンズ筒の
溝(青矢印)に引っ掛かっていて

この爪で対物レンズを
動かして
ピント調整する機構。
これは前回紹介したダイアスポーツと
似ている。


特徴的なのはディオプターの構造で、
フォーカスリングの真ん中に付いてる
もう一つのダイヤルを回すと
右側(写真では左側)の爪だけが
独立して前後に動くようになっている。

FullSizeRender
これで左右の対物レンズの移動量を
変えて視度補正するのだ。

ほんとによく考えてるな〜と感心する、
メカ屋さんが考えた双眼鏡って感じ。

フォーカスリングを外せば
左右の鏡筒が完全に分離できる。
FullSizeRender
分解出来たら
光学系のクリーニング作業に移る。


対物レンズを取り出して問題のカビを
除去していく、
矢印のとこがカビ。
FullSizeRender
ねずみはクリーニングに何種類かの
薬剤を使い分けていて
カビに対してはフジフィルムの
クリーナーが効果的なことが
なんとなく分かっている。

まず試しに無水エタノールで拭いてみると
FullSizeRender
カビ本体は取れたけど
跡が残ってしまう。

次にフジフィルムのクリーナー
FullSizeRender
カビ跡までかなりキレイに取れた。
アルカリ性が効くのだろうか?
油汚れもよく取れるので
ねずみはこれを愛用しているが
お値段はすこぶる高い!

カビは除去したものの、このレンズには
致命的な欠陥があって、、
それがこの曇り!
FullSizeRender
しかも表面ではなく
レンズ貼り合わせの接着剤が劣化して
曇っている。

今回ねずみは
禁断の「
バルサム剥がし」を
やってみる事にした。

貼り合わせレンズを一旦剥がして
汚れを除去してから最接着するのだ、
この曇りを取るにはこれしか
方法がない。

ドイツ製ビンテージ双眼鏡なんかだと
怖くてやれないけど
ジャンクのタンクローなら
チャレンジしてみても良いかなと。。

但し、一度剥がしてしまうと
レンズどうしの外径合わせで
再接着することになるので
光学的な芯出しが出来なくなる。

つまり工場出荷状態の性能には
戻らない。

しかし、、最初からこんなに
外径がずれてることってあるのかな??
FullSizeRender
不安だけど、とにかくやってみる。

熱湯に浸けたらあっさり剥がれた。
FullSizeRender
剥離した面からは
強烈な化学物質のニオイが漂う、、
明らかに天然バルサムではないものが
使われているようだったが
この接着剤は無水アルコールで
簡単に除去する事が出来た。

貼り合わせにはUVレジンを使う、
透明性が高くて黄変しないと評判の
パジコの「星の雫」と言うレジンを
使ってみた。
FullSizeRender

レジンを垂らして貼り合わせたら
ゆっくり回しながら気泡を抜いていく。
レジンの量が多すぎるとこんな風に
横から溢れてくるので注意が必要。
FullSizeRender
厚みが出ないようしっかり押さえてから
溢れたレジンを拭き取る。
外径合わせで位置を決めたら
UVライトで接着、もう後戻り出来ない!
FullSizeRender

貼り合わせ作業は成功で
スッキリ曇りの無い透明感が戻った。
FullSizeRender


プリズムの方もカビを落として
クリーニングする。
FullSizeRender

プリズムはセメントで固定されてるので
手で押してバキッと剥がす。
戻す時はセメントの破断面が
ピッタリ噛み合うようにすれば
プリズムの位置がズレないので
付着したセメントはそのままに
しておく。


最後に視軸調整のやり方だけど
このブログではまだ紹介していない
プリズムを傾ける方式。
FullSizeRender
詳しくは説明しないけど
プリズムをイモネジで横から押す事で
プリズムが傾いて視軸が動く仕組み。

組み付け後は
イモネジがこの位置に来る。

上が上下の調整で、横が左右の調整
FullSizeRender
ネジを締めた時に
視界がどちらに動くかは

実際やってみるとわかると思うけど
上下と左右では逆の動きをするので
ちょっと慣れが必要かも。


整備を終えたタンクロー
FullSizeRender

こちらが
整備後のタンクローで見た景色。
スマホの写真なのであくまで参考で
FullSizeRender
視野もそこそこ広くて
周辺までハッキリ見えてクセがない。
バルサム再接着による
光学芯ズレの影響は
ねずみの目には
全く分からなかった。


比較として同じ逆ポロの
ヘンゾルト・ダイアスポーツ

FullSizeRender
クセのある歪みとクローズアップされた
中心部のシャープさに感動を覚える。



タンクローの見え味は
決して感動的ではないけれど
特に悪い所も見当たらなくて
この値段でこれだけよく見える
双眼鏡って貴重だと思う。
最新のモデルは見たこと無いけど
もっとよく見えるのかも知れない。

双眼鏡に1万円以上出すのはちょっと
理解出来ない!って人や
とにかく安いやつ一台あればいい、
って人には
是非オススメしたい双眼鏡。

・・・って
そんな人はこのブログ読んでないか?!

↑このページのトップヘ