今回はちょっと趣向を変えて
リーズナブルな双眼鏡
ペンタックスの8×24UCF
通称「タンクロー」を取り上げてみる。
ねずみが入手したのは
ちょっとレアな白い外装の中古品で
SPORTSと書いてあるけど防水でも無く
ただの色違いみたい。
やや古いMADE IN JAPANモデル。
このタンクロー
現行品でも実勢価格6,000〜9,000円
程度とかなりの廉価であるにも関わらず
及第点の光学性能を確保している。
一言で表現するなら
「最も安く手に入るまともな双眼鏡。」
・・・逆に言うと
これより安くてまともな双眼鏡は
存在しないし、買ってはいけないと
ねずみは勝手に思っている。
(個人の感想です)
たまに景色のいい観光地に行くと
ホームセンターで安く売られてるような
粗悪品双眼鏡を構えている人を
目撃することがある。
そんな時ねずみは
「せめてタンクローを買ってきてくれ〜
せっかくの景色がもったいない!」
と心の中で思ってしまうのだ。
そんなタンクローだけど
中古品で程度の良いものはなかなか
無いようで、今回整備する個体も
しっかりカビが生えていた。
対物レンズの曇りもあったので
例のごとく徹底的に分解クリーニング
することにした。
ねずみの経験上
プラスチック製の双眼鏡は
接着剤が多用されていて分解=破壊
となる事が多いのだけど
このタンクローは全ての部品が
ねじで結合されているので分解が可能。
(プリズムのセメントは除く)
おそらく分解整備に耐えられる双眼鏡
の中で最も廉価とも言えると思う。
分解にはまず外装のラバーを全て剥がす。
両面テープでくっついてるだけなので
簡単に剥がれる。
銘板の裏にネジが隠れているので
これも剥がす。
接眼側真ん中のカバーを外すと
金属のプレートが現れるのでこれも外す。
この板は左右の鏡筒を保持しながら
2軸の回転軸を作っている重要な部品。
赤矢印の所が接眼側の回転軸になってる
左右の鏡筒はギヤで噛み合っていて
連動して開く仕組みだ。
ペンタックス独自の2軸構造で主軸が無い
この構造は剛性を出すのにも
貢献してるだろうし
三脚ネジが下から付けられるのも便利。
これ考えた人ホントに尊敬してしまう。
次に上面に付いているハッチを開けて
フォーカスリングを取り外す。
ダイヤルの回転に応じて前後に動く
2本の爪(赤矢印)が左右の対物レンズ筒の
溝(青矢印)に引っ掛かっていて
この爪で対物レンズを動かして
ピント調整する機構。
これは前回紹介したダイアスポーツと
似ている。
特徴的なのはディオプターの構造で、
フォーカスリングの真ん中に付いてる
もう一つのダイヤルを回すと
右側(写真では左側)の爪だけが
独立して前後に動くようになっている。
これで左右の対物レンズの移動量を
変えて視度補正するのだ。
ほんとによく考えてるな〜と感心する、
メカ屋さんが考えた双眼鏡って感じ。
フォーカスリングを外せば
左右の鏡筒が完全に分離できる。
分解出来たら
光学系のクリーニング作業に移る。
対物レンズを取り出して問題のカビを
除去していく、矢印のとこがカビ。
ねずみはクリーニングに何種類かの
薬剤を使い分けていて
カビに対してはフジフィルムの
クリーナーが効果的なことが
なんとなく分かっている。
まず試しに無水エタノールで拭いてみると
カビ本体は取れたけど
跡が残ってしまう。
次にフジフィルムのクリーナー
カビ跡までかなりキレイに取れた。
アルカリ性が効くのだろうか?
油汚れもよく取れるので
ねずみはこれを愛用しているが
お値段はすこぶる高い!
カビは除去したものの、このレンズには
致命的な欠陥があって、、
それがこの曇り!
しかも表面ではなく
レンズ貼り合わせの接着剤が劣化して
曇っている。
今回ねずみは
禁断の「バルサム剥がし」を
やってみる事にした。
貼り合わせレンズを一旦剥がして
汚れを除去してから最接着するのだ、
この曇りを取るにはこれしか
方法がない。
ドイツ製ビンテージ双眼鏡なんかだと
怖くてやれないけど
ジャンクのタンクローなら
チャレンジしてみても良いかなと。。
但し、一度剥がしてしまうと
レンズどうしの外径合わせで
再接着することになるので
光学的な芯出しが出来なくなる。
つまり工場出荷状態の性能には
戻らない。
しかし、、最初からこんなに
外径がずれてることってあるのかな??
不安だけど、とにかくやってみる。
熱湯に浸けたらあっさり剥がれた。
剥離した面からは
強烈な化学物質のニオイが漂う、、
明らかに天然バルサムではないものが
使われているようだったが
この接着剤は無水アルコールで
簡単に除去する事が出来た。
貼り合わせにはUVレジンを使う、
透明性が高くて黄変しないと評判の
パジコの「星の雫」と言うレジンを
使ってみた。
レジンを垂らして貼り合わせたら
ゆっくり回しながら気泡を抜いていく。
レジンの量が多すぎるとこんな風に
横から溢れてくるので注意が必要。
厚みが出ないようしっかり押さえてから
溢れたレジンを拭き取る。
外径合わせで位置を決めたら
UVライトで接着、もう後戻り出来ない!
貼り合わせ作業は成功で
スッキリ曇りの無い透明感が戻った。
プリズムの方もカビを落として
クリーニングする。
プリズムはセメントで固定されてるので
手で押してバキッと剥がす。
戻す時はセメントの破断面が
ピッタリ噛み合うようにすれば
プリズムの位置がズレないので
付着したセメントはそのままに
しておく。
最後に視軸調整のやり方だけど
このブログではまだ紹介していない
プリズムを傾ける方式。
詳しくは説明しないけど
プリズムをイモネジで横から押す事で
プリズムが傾いて視軸が動く仕組み。
組み付け後は
イモネジがこの位置に来る。
上が上下の調整で、横が左右の調整
ネジを締めた時に
視界がどちらに動くかは
実際やってみるとわかると思うけど
上下と左右では逆の動きをするので
ちょっと慣れが必要かも。
整備を終えたタンクロー
こちらが
整備後のタンクローで見た景色。
スマホの写真なのであくまで参考で
視野もそこそこ広くて
周辺までハッキリ見えてクセがない。
バルサム再接着による
光学芯ズレの影響はねずみの目には
全く分からなかった。
比較として同じ逆ポロの
ヘンゾルト・ダイアスポーツ
クセのある歪みとクローズアップされた
中心部のシャープさに感動を覚える。
タンクローの見え味は
決して感動的ではないけれど
特に悪い所も見当たらなくて
この値段でこれだけよく見える
双眼鏡って貴重だと思う。
最新のモデルは見たこと無いけど
もっとよく見えるのかも知れない。
双眼鏡に1万円以上出すのはちょっと
理解出来ない!って人や
とにかく安いやつ一台あればいい、
って人には是非オススメしたい双眼鏡。
・・・って
そんな人はこのブログ読んでないか?!
リーズナブルな双眼鏡
ペンタックスの8×24UCF
通称「タンクロー」を取り上げてみる。
ねずみが入手したのは
ちょっとレアな白い外装の中古品で
SPORTSと書いてあるけど防水でも無く
ただの色違いみたい。
やや古いMADE IN JAPANモデル。
このタンクロー
現行品でも実勢価格6,000〜9,000円
程度とかなりの廉価であるにも関わらず
及第点の光学性能を確保している。
一言で表現するなら
「最も安く手に入るまともな双眼鏡。」
・・・逆に言うと
これより安くてまともな双眼鏡は
存在しないし、買ってはいけないと
ねずみは勝手に思っている。
(個人の感想です)
たまに景色のいい観光地に行くと
ホームセンターで安く売られてるような
粗悪品双眼鏡を構えている人を
目撃することがある。
そんな時ねずみは
「せめてタンクローを買ってきてくれ〜
せっかくの景色がもったいない!」
と心の中で思ってしまうのだ。
そんなタンクローだけど
中古品で程度の良いものはなかなか
無いようで、今回整備する個体も
しっかりカビが生えていた。
対物レンズの曇りもあったので
例のごとく徹底的に分解クリーニング
することにした。
ねずみの経験上
プラスチック製の双眼鏡は
接着剤が多用されていて分解=破壊
となる事が多いのだけど
このタンクローは全ての部品が
ねじで結合されているので分解が可能。
(プリズムのセメントは除く)
おそらく分解整備に耐えられる双眼鏡
の中で最も廉価とも言えると思う。
分解にはまず外装のラバーを全て剥がす。
両面テープでくっついてるだけなので
簡単に剥がれる。
銘板の裏にネジが隠れているので
これも剥がす。
接眼側真ん中のカバーを外すと
金属のプレートが現れるのでこれも外す。
この板は左右の鏡筒を保持しながら
2軸の回転軸を作っている重要な部品。
赤矢印の所が接眼側の回転軸になってる
左右の鏡筒はギヤで噛み合っていて
連動して開く仕組みだ。
ペンタックス独自の2軸構造で主軸が無い
この構造は剛性を出すのにも
貢献してるだろうし
三脚ネジが下から付けられるのも便利。
これ考えた人ホントに尊敬してしまう。
次に上面に付いているハッチを開けて
フォーカスリングを取り外す。
ダイヤルの回転に応じて前後に動く
2本の爪(赤矢印)が左右の対物レンズ筒の
溝(青矢印)に引っ掛かっていて
この爪で対物レンズを動かして
ピント調整する機構。
これは前回紹介したダイアスポーツと
似ている。
特徴的なのはディオプターの構造で、
フォーカスリングの真ん中に付いてる
もう一つのダイヤルを回すと
右側(写真では左側)の爪だけが
独立して前後に動くようになっている。
これで左右の対物レンズの移動量を
変えて視度補正するのだ。
ほんとによく考えてるな〜と感心する、
メカ屋さんが考えた双眼鏡って感じ。
フォーカスリングを外せば
左右の鏡筒が完全に分離できる。
分解出来たら
光学系のクリーニング作業に移る。
対物レンズを取り出して問題のカビを
除去していく、矢印のとこがカビ。
ねずみはクリーニングに何種類かの
薬剤を使い分けていて
カビに対してはフジフィルムの
クリーナーが効果的なことが
なんとなく分かっている。
まず試しに無水エタノールで拭いてみると
カビ本体は取れたけど
跡が残ってしまう。
次にフジフィルムのクリーナー
カビ跡までかなりキレイに取れた。
アルカリ性が効くのだろうか?
油汚れもよく取れるので
ねずみはこれを愛用しているが
お値段はすこぶる高い!
カビは除去したものの、このレンズには
致命的な欠陥があって、、
それがこの曇り!
しかも表面ではなく
レンズ貼り合わせの接着剤が劣化して
曇っている。
今回ねずみは
禁断の「バルサム剥がし」を
やってみる事にした。
貼り合わせレンズを一旦剥がして
汚れを除去してから最接着するのだ、
この曇りを取るにはこれしか
方法がない。
ドイツ製ビンテージ双眼鏡なんかだと
怖くてやれないけど
ジャンクのタンクローなら
チャレンジしてみても良いかなと。。
但し、一度剥がしてしまうと
レンズどうしの外径合わせで
再接着することになるので
光学的な芯出しが出来なくなる。
つまり工場出荷状態の性能には
戻らない。
しかし、、最初からこんなに
外径がずれてることってあるのかな??
不安だけど、とにかくやってみる。
熱湯に浸けたらあっさり剥がれた。
剥離した面からは
強烈な化学物質のニオイが漂う、、
明らかに天然バルサムではないものが
使われているようだったが
この接着剤は無水アルコールで
簡単に除去する事が出来た。
貼り合わせにはUVレジンを使う、
透明性が高くて黄変しないと評判の
パジコの「星の雫」と言うレジンを
使ってみた。
レジンを垂らして貼り合わせたら
ゆっくり回しながら気泡を抜いていく。
レジンの量が多すぎるとこんな風に
横から溢れてくるので注意が必要。
厚みが出ないようしっかり押さえてから
溢れたレジンを拭き取る。
外径合わせで位置を決めたら
UVライトで接着、もう後戻り出来ない!
貼り合わせ作業は成功で
スッキリ曇りの無い透明感が戻った。
プリズムの方もカビを落として
クリーニングする。
プリズムはセメントで固定されてるので
手で押してバキッと剥がす。
戻す時はセメントの破断面が
ピッタリ噛み合うようにすれば
プリズムの位置がズレないので
付着したセメントはそのままに
しておく。
最後に視軸調整のやり方だけど
このブログではまだ紹介していない
プリズムを傾ける方式。
詳しくは説明しないけど
プリズムをイモネジで横から押す事で
プリズムが傾いて視軸が動く仕組み。
組み付け後は
イモネジがこの位置に来る。
上が上下の調整で、横が左右の調整
ネジを締めた時に
視界がどちらに動くかは
実際やってみるとわかると思うけど
上下と左右では逆の動きをするので
ちょっと慣れが必要かも。
整備を終えたタンクロー
こちらが
整備後のタンクローで見た景色。
スマホの写真なのであくまで参考で
視野もそこそこ広くて
周辺までハッキリ見えてクセがない。
バルサム再接着による
光学芯ズレの影響はねずみの目には
全く分からなかった。
比較として同じ逆ポロの
ヘンゾルト・ダイアスポーツ
クセのある歪みとクローズアップされた
中心部のシャープさに感動を覚える。
タンクローの見え味は
決して感動的ではないけれど
特に悪い所も見当たらなくて
この値段でこれだけよく見える
双眼鏡って貴重だと思う。
最新のモデルは見たこと無いけど
もっとよく見えるのかも知れない。
双眼鏡に1万円以上出すのはちょっと
理解出来ない!って人や
とにかく安いやつ一台あればいい、
って人には是非オススメしたい双眼鏡。
・・・って
そんな人はこのブログ読んでないか?!