2021年05月

いよいよ核心?の
視軸調整について書いてみようと思う。

ねずみは何の知識も無いところから
スタートしたので最初はやり方が
全くわからなかった。
というか素人が手を出しちゃ行けない
領域だと思っていた。
最初の方の記事で書いたけど
平行器を自作したところから
世界が変わって、今ではそれなりに
精度のいい調整が出来るように
なったと思っている
、、まだまだ修行中ですけどね。

視軸調整については、
まとまった文献も見つからないし
ネットで調べても具体的な
調整方法まで説明しているサイトは
皆無と言っていいと思う。
唯一yamacaさんという方のページが
視軸調整の考え方を詳しく
説明されているので
参考にさせていただいた。

今回紹介するノウハウは
そんな断片的な情報のツギハギと、
ねずみの今までの経験から
導き出したものである。
間違いもあるかもしれないので参考に
される方は自己責任でお願いしたい。
そしてもっと正確な情報を
お持ちの方がいれば是非教えてほしい!


最初に
ねずみの理解では双眼鏡において
「光軸」「視軸」
本質的に異なる。
('23.2.19追記: この記事では双眼鏡の光学系全体の光軸のことを視軸と呼んでいます。正確には視軸とは眼球が見ている方向のことですが、それとは異なる意味合いで使っています)


望遠鏡で言う光軸調整
対物レンズと接眼レンズの中心を
一致させることである。

これがズレていると
本来の性能が出ない。
(下図の赤線は光の経路では無く
光学系全体が向いている方向を
擬似的に表しています。)


光軸がズレた状態
望遠鏡1

光軸が合っている状態
望遠鏡2


一方の視軸調整とは望遠鏡を2つ並べて両目で見る装置(つまり双眼鏡)の左右の光軸を平行にすること。
双眼鏡1
理想的には上の絵のように光軸を合わせた望遠鏡を二つ並べて視軸を合わせれば完璧な双眼鏡が出来る。
でもそれは双眼鏡を一から作るときの話で、既存の双眼鏡を調整をする時には視軸と光軸の両方を同時に合わせることは出来ないはず。

双眼鏡の場合

倍率が低いので光軸が多少ズレてても
問題にならないけど
視軸がズレた状態では
使い物にならないので
視軸の方を優先して合わせることになる。

すると多くの場合こうなる。

双眼鏡2
視軸は合っているけど光軸はズレた状態。

平行器での調整は

視軸を平行にすることしか出来ないので
左右の光軸が同じ方向にズレていても
分からない。
平行器一台(一つの眼幅)で
視軸調整された双眼鏡は

ほぼこの状態になっていると思われる。

これだと光軸がズレている以前に

双眼鏡の眼幅を変えた時に
視軸がズレる現象が起きる

自分の眼幅と同じ平行器で

調整されていれば
実用に支障はないけど、、
やっぱり光軸が大きくズレてたら
双眼鏡の真の実力を
引き出せないのでは?

とねずみは考えている。

なので
視軸調整を行う中で光軸もできる限り

良いところに持っていきたい
というのがねずみの考え。

少しヒントがあったけど
その方法はつまり・・・
それを最初に語りだすと
ややこしくなるので
まずは双眼鏡の視軸調整機構について
説明する。


双眼鏡の視軸調整機構には
大きく分けて2種類ある。


1.プリズムを動かすタイプ
2.対物レンズを動かすタイプ

直感的に分かりやすいのは
1のプリズムを動かすタイプ。

プリズムを左右からイモネジで押す構造のもので、
Nikonのミクロンを真似た形の日本製双眼鏡にも多い。
ZEISS以外の古いドイツ製双眼鏡にも
見られる構造だ。

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矢印の部分がイモネジで
鏡体の外からイモネジを操作する。

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構造を絵にするとこんな感じ。
イモネジを締め込んだ量がそのままプリズムの移動量になるので直感的にわかりやすくて調整自体はやりやすい。
プリズム1
プリズム2

注意点として、動かしたい方向のネジを先に緩めてから押す側のネジを締めないと、プリズムに過大な圧力がかかってプリズムが割れてしまう。

また視軸を追い込もうとして
何度も調整を繰り返すと
プリズムに傷がついたり
イモネジのスリワリ
(マイナスドライバーをかける部分)
メネジが摩耗してくる。
何かと破損のリスクが多くて気を使うので、ねずみは出来ればこのタイプの調整はやりたくない。


2の対物レンズを動かすタイプは
二重偏心環を使うものがほとんどで

ZEISSのポロはほぼ全てこのタイプ。
戦後の日本製ポロもZEISSを真似てるのでこのタイプが多い。
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偏心した対物レンズ枠の外側にもう一つ偏心したリングがはまっていて、この2つを回転させることでレンズの位置を動かす構造になっている(写真は分かりやすいように対物レンズ押さえのリングを外したところ)


調整をする時はまず押さえのリングをカニ目レンチで緩める。

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カニ目が滑ってレンズを傷つけるといけないので、ねずみは丸く切ったゴムシートをレンズの上に乗せて保護している。

この押さえのリングは完全に外してしまうと対物レンズが落っこちるので緩めるだけにしておく。
(一部Nikonなどリングを外さないと
偏心環を回せない機種もある)

外側からイモネジで回転止めしてあるものはこれも緩める。

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すると対物レンズ枠と外側の偏心環がそれぞれ自由に回転できるようになる。

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ねずみはいつも爪楊枝を使ってこんな風に回して調整している。


この構造を絵で説明すると
左が外側の偏心環で、右が対物レンズと偏心したレンズ枠が一体になったもの。
この2つの重ね合わせでレンズの位置が決まる

エキセントリック1

内側と外側それぞれのリングの偏心量は等しくなっていて、仮に偏心量を1とすると



この状態はレンズの偏心量が0で
鏡筒の中心と一致している。
エキセントリック2


偏心環の肉厚の側を同じ位相に持ってくるとレンズの偏心量は2となる。


エキセントリック3


90°ずらすとルート2で1.414・・・
エキセントリック4

このように内外の偏心環を回すことでレンズの位置が移動する。
これが基本的な構造。


偏心環の回転に対して移動量が一定じゃないところが直感的に分かりづらいけど、プリズム式のような破損のリスクが少ないので徹底的に視軸を追い込むにはこっちの方がやりやすい

プリズムもしくはレンズが

動かせるという事は分かったけど
これでどう視軸を調整するのか?


それは次の記事で
詳しく説明していくので
乞うご期待。

管理人ねずみのお気に入りの中で
現在唯一の国産機

ニコンの9×35 7.3°
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8×30に比べてあまり人気が無いのか?
中古市場では比較的安値で多く出回っている。
ねずみも最初は人気の8×30の方を使っていたけど歪曲が大いのが難点で
妻に見せたところ「酔うからムリ!」
と言われてしまい、それから
出番が無くなり手放してしまった。


その後入手したのがこの9×35

あまり9倍の双眼鏡って聞かないけど、使ってみると絶妙な倍率で、鳥見とか星見とか対象を決めて観察するのに実にちょうどいい。
見かけ視界も65.7°と広角なのに無理して広げてる感じがない、歪曲も少なくはないけど8×30に比べるとマシに感じる。

この肩幅の広い立ち姿と

引き締まった黒がカッコいい。
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ねずみが入手した個体はそこそこ状態が良くて薄い曇りがある程度。
そのままでも使えなくはなかったけどやっぱり真の実力を見たいので分解クリーニングすることにした!

ねずみの場合修理するところが醍醐味なのでむしろ状態が悪い方がやりがいがあって楽しいのだが、。こんな感覚で双眼鏡買ってるのは病気かもしれないな・・・


分解してみると

あらゆる部品の端々から品質に対するこだわりが伝わってくる。
Zeissのような変態的な品質の良さとは少し違って、コストと性能を上手くバランスさせた日本流の高品質って感じ。


対物レンズの遮光筒内部には細かい溝が刻まれていて艶消し黒塗装もとにかく綺麗、でも筒自体の
長さは短め。対物側のプリズムと干渉しないように短くしてあるのかな?
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参考にデルトリンテム1Qの遮光筒はコレ
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長すぎでしょ。。
そして薄すぎ、溝細かすぎ。
どうやって加工してるんだろうか??
対物レンズから入った余計な光は一粒たりとも外に漏らさないと言う変態的?なこだわりが伝わって来る。


ニコンの方は遮光筒が短い代わりにプリズムに遮光カバーが設けられている。
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遮光筒が長くできなくて仕方なくそうしたのかもしれないけど、筒とカバー両方あるのはなんか贅沢な気分になる。

接眼側のプリズムはタップリ大きくて光路に合わせた非対称形状、真ん中には遮光溝も彫られている。
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さすがにCARLZEISSオーバーコッヘンみたいなコバ塗りまではしてないけど、限られたコストでやれることは全部やってる!って感じが伝わって来る。
あとプリズム周りのボディの
丸みがいいね〜。




んで、今回気になっていた
プリズムの曇り。

写真左側、反射面の真ん中が曇ってるので覗いた時にも結構気になってた。
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こちらがクリーニング後
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完璧にキレイにした!
拭き跡を残さないようにするには、一面を端から端まで一回でサッと拭き取らないと上手くいかないんだけどプリズムがやたら大きいので難しい。


接眼レンズ内部は状態が良かったので
分解はせずに外側の面だけキレイにした。
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リスクを考えて分解は最小限に。

最後は視軸を合わせて終了。
最終チェックに三脚を使ったけど

調整作業自体は手持ちでやった方が
効率的。

IMG_3013
こうしてキレイになったNikon 9×35で
いろいろな対象を見てみたところ


一番良さが際立った観察対象は
月!
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三脚に据えて月を見ると臨場感が凄くて

月が球体だってのが伝わって来る。
iPhoneあてて撮ったけど、
写真では伝わらないな〜。

普通に景色を見るとこんな感じ。
IMG_3829
やや黄色い着色があるので
草木の緑が生き生きして見える。

でもかなり明るいので昼間見ると
ちょっと目が疲れるかな・・・


こだわりの作りから生まれる
納得の高性能!

粗悪品も多い国産ポロだけど
やっぱりNikonは別格です。

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