今回はノンコートの隠れた名作
ヘンゾルトのgrossfeldを
紹介しようと思う。
ねずみはこのgrossfeldシリーズを
ノンコート双眼鏡の中では
leitzのBINUXITに並ぶトップクラスの
見え味だと思っている。
grossfeldは1930年後半から
1940年代前半にかけて
hensoldt wetzler社で作られた
オーソドックスなポロ双眼鏡。
6×24と8×24の倍率違いがあり
さらに年代によって
・前期型の胴体が太いタイプ
・中期型の胴体が細いタイプ
・後期型の軽量タイプ
が存在している。
これはシリアルNo.から判断して
ねずみが勝手に呼んでいるだけなので
参考程度で。
grossはドイツ語で大きいとか広い
の意味で、feldはフィールド。
ヘンゾルトの双眼鏡は用途に応じた
ネーミングが多いのでgrossfeldは
広大な景色を見渡すのに適した双眼鏡
つまり広視界ってことだと思う。
その名の通り視界はかなり広くて
1000m視界が6倍は160m、8倍は150m。
角度に直すと6倍はおおよそ9.1°
8倍は8.6°となる。
実視界8.6°ってデルトリンテムと同等で
覗いてみるとデルトリンテムよりは
まぁ若干狭い感じもするのだけど
ケルナー接眼にしてはかなり広い。
現在ねずみの手元にあるのは
前期型6×24、中期型8×24
後期型8×24 の3台
なんで3台もあるのかってツッコミは
置いといて・・・
その中でも特に見え味が良いのは
前期型6×24の胴が太いモデルだ。
おそらく軍用の6×24と同じ光学系で
圧倒的にシャープネスが高くて
物の輪郭がハッキリクッキリ見える。
しかも最近のマルチ機にたまにある
エッジが強調されすぎて葉っぱの縁が
刃物みたいに見えるやつと違って
あくまで自然な輪郭線を保っている。
また見比べないと気付かないほどの
極僅かな水色の着色があって
それが余計にシャープネスを
高めているようにも思える。
この自然かつシャープな見え味は
他の双眼鏡では味わうことが出来ない。
中期型8×24の方も6×24に次ぐ
シャープネスの高さで
こちらは着色の一切無い
そのままの色を楽しむことが出来る。
しかも胴体が細いおかげで
ダハのように片手で握りながら
ピント操作が出来てとても扱いやすい。
その反面、光学性能的には重大な
欠陥も抱えているのだが・・・
そちらは後で詳しく説明しようと思う。
後期型軽量タイプの8×24は
前期、中期とはほぼ別物で
部品が軽量素材に置き換えられており
実測348gと驚異的な軽さを誇っている。
ツァイス・イェナの思想なのか
視軸調整機構はプリズムを動かすタイプ
から二重偏心環に変更されている。
アイピースも変更されており
どことなくツァイス・イェナっぽい
見え味になっているように思える。
ところで、ヘンゾルトっていうと
大抵の人は下の写真の角張ったロゴを
思い浮かべると思う。
いや、、大抵の人はヘンゾルトなんて
知らないのでこれが思い浮かぶ人は
何かしらのマニアだと思う。
それに対してgrossfeldのロゴは
柔らかい線の筆記体。
こちらが先に思い浮かんだ人は、
かなりのマニア、と言うか
もはや病気である可能性が高い。
この2つのロゴは同時期にも
存在していたようで、機種によって
使い分けていたと推測している。
ねずみは筆記体ロゴの方が
ゆるい感じがして気に入っている。
さて、ここからは胴体が細いタイプの
8×24を分解クリーニングしながら
構造を紹介していきたいと思う。
フォーカスリング周りの構造は
ツァイスと違って左の羽根が
ネジ2本で軸に固定されている。
接眼筒との摺動部に
黒い布テープが巻かれているのも
この時代のヘンゾルトの特徴。
水やホコリの侵入を防ぐ役目と
思われるのだけど内部はホコリだらけ
だったので効果は疑問。
しかも一度剥がれてしまうと再接着が
難しく、整備する上では厄介な構造だ。
接眼筒とフォーカス軸は真鍮製で
製造後70年以上経過しているはずなのに
錆びることも無く綺麗なままだ
プリズムはほぼ隙間なく細い鏡体に
押し込められている。
実はこのプリズムのサイズは
胴体が太いタイプも細いタイプも
ほとんど同じで、細いタイプは単に
部品どうしの隙間を詰めただけの
無理矢理な設計となっている。
(訂正:改めて分解した際に測定したところ、胴が太い方がプリズムの長手方向で4.5mmほど大きい物が使われていました。)
レンズもプリズムもホコリだらけ
だったけど、クリーニングしたら
新品のような透明感を取り戻した。
この時代のガラスは本当に綺麗で
現代のものより透き通って
見えるような気がしてしまう。
クリーニングを終えて組み上げた
grossfeld 8×24を覗いて見ると
あることに気付く。
射出瞳のすぐ上に盛大な漏光が。。
目の位置がちょっとでも上にズレると
この光が直接目に入って眩しく
コントラスト低下とか以前の問題だ。
これが胴体が細いタイプの
致命的な欠点で、対物側のプリズムを
光路に接近させ過ぎた弊害なのか
対物レンズを通った光の一部が
プリズムの反射面に入ってしまうのだ。
てか、この状態で何故プリズムカバーを
設定しなかったのか?謎なのだけど
無ければ作ってしまおう!ってことで
プリズムカバー製作に取り掛かかった。
厚さ0.3mmのアルミ板を
プリズムのサイズに切り出して
折り曲げる。
反射面にベッタリ接触しないように
両端を少し内側に曲げるのがコツ。
艶消し黒で塗装して完成
これで余計な光はシャットアウト!
迷光が無くなってやっと本来の性能を
発揮することが出来た8×24。
眩しさもコントラストも改善した。
この小さな写真では伝わらないけど
ほんとにクリアで自然な見え方をする。
初期のDIAGONみたいな中心に特化した
見え方では無く、周辺まで良く見えて
崩れ方も自然。
双眼鏡マニアの方々のレビューを
拝見するとノンコート双眼鏡では
カールツァイス・イェナの
デルトリンテム軽量非球面接眼モデル
通称リヒターモデルの評価が高いのは
ご存じの方も多いと思う。
一方でこのgrossfeldは
話題に登ることすらほぼ皆無である。
もちろん、口径の違いもあって
明るさではリヒターに及ばないのだけど
解像度、シャープネス、歪曲の少なさ
においてはリヒター含め同時期の
ツァイス・イェナを上回っていると
ねずみは感じている。
・・・この時期のヘンゾルトに関しては
ネット上にもほとんど情報が無いので
全くもって分からないのだけど
ねずみの他にも同じような
感想を持っている人がいるのだろうか?
これらの双眼鏡に対して
ねずみと同じ感想の方や
異なる見解をお持ちの方がいたら
コメントいただけると嬉しいです!
ヘンゾルトのgrossfeldを
紹介しようと思う。
ねずみはこのgrossfeldシリーズを
ノンコート双眼鏡の中では
leitzのBINUXITに並ぶトップクラスの
見え味だと思っている。
grossfeldは1930年後半から
1940年代前半にかけて
hensoldt wetzler社で作られた
オーソドックスなポロ双眼鏡。
6×24と8×24の倍率違いがあり
さらに年代によって
・前期型の胴体が太いタイプ
・中期型の胴体が細いタイプ
・後期型の軽量タイプ
が存在している。
これはシリアルNo.から判断して
ねずみが勝手に呼んでいるだけなので
参考程度で。
grossはドイツ語で大きいとか広い
の意味で、feldはフィールド。
ヘンゾルトの双眼鏡は用途に応じた
ネーミングが多いのでgrossfeldは
広大な景色を見渡すのに適した双眼鏡
つまり広視界ってことだと思う。
その名の通り視界はかなり広くて
1000m視界が6倍は160m、8倍は150m。
角度に直すと6倍はおおよそ9.1°
8倍は8.6°となる。
実視界8.6°ってデルトリンテムと同等で
覗いてみるとデルトリンテムよりは
まぁ若干狭い感じもするのだけど
ケルナー接眼にしてはかなり広い。
現在ねずみの手元にあるのは
前期型6×24、中期型8×24
後期型8×24 の3台
なんで3台もあるのかってツッコミは
置いといて・・・
その中でも特に見え味が良いのは
前期型6×24の胴が太いモデルだ。
おそらく軍用の6×24と同じ光学系で
圧倒的にシャープネスが高くて
物の輪郭がハッキリクッキリ見える。
しかも最近のマルチ機にたまにある
エッジが強調されすぎて葉っぱの縁が
刃物みたいに見えるやつと違って
あくまで自然な輪郭線を保っている。
また見比べないと気付かないほどの
極僅かな水色の着色があって
それが余計にシャープネスを
高めているようにも思える。
この自然かつシャープな見え味は
他の双眼鏡では味わうことが出来ない。
中期型8×24の方も6×24に次ぐ
シャープネスの高さで
こちらは着色の一切無い
そのままの色を楽しむことが出来る。
しかも胴体が細いおかげで
ダハのように片手で握りながら
ピント操作が出来てとても扱いやすい。
その反面、光学性能的には重大な
欠陥も抱えているのだが・・・
そちらは後で詳しく説明しようと思う。
後期型軽量タイプの8×24は
前期、中期とはほぼ別物で
部品が軽量素材に置き換えられており
実測348gと驚異的な軽さを誇っている。
ツァイス・イェナの思想なのか
視軸調整機構はプリズムを動かすタイプ
から二重偏心環に変更されている。
アイピースも変更されており
どことなくツァイス・イェナっぽい
見え味になっているように思える。
ところで、ヘンゾルトっていうと
大抵の人は下の写真の角張ったロゴを
思い浮かべると思う。
いや、、大抵の人はヘンゾルトなんて
知らないのでこれが思い浮かぶ人は
何かしらのマニアだと思う。
それに対してgrossfeldのロゴは
柔らかい線の筆記体。
こちらが先に思い浮かんだ人は、
かなりのマニア、と言うか
もはや病気である可能性が高い。
この2つのロゴは同時期にも
存在していたようで、機種によって
使い分けていたと推測している。
ねずみは筆記体ロゴの方が
ゆるい感じがして気に入っている。
さて、ここからは胴体が細いタイプの
8×24を分解クリーニングしながら
構造を紹介していきたいと思う。
フォーカスリング周りの構造は
ツァイスと違って左の羽根が
ネジ2本で軸に固定されている。
接眼筒との摺動部に
黒い布テープが巻かれているのも
この時代のヘンゾルトの特徴。
水やホコリの侵入を防ぐ役目と
思われるのだけど内部はホコリだらけ
だったので効果は疑問。
しかも一度剥がれてしまうと再接着が
難しく、整備する上では厄介な構造だ。
接眼筒とフォーカス軸は真鍮製で
製造後70年以上経過しているはずなのに
錆びることも無く綺麗なままだ
プリズムはほぼ隙間なく細い鏡体に
押し込められている。
実はこのプリズムのサイズは
胴体が太いタイプも細いタイプも
ほとんど同じで、細いタイプは単に
部品どうしの隙間を詰めただけの
無理矢理な設計となっている。
(訂正:改めて分解した際に測定したところ、胴が太い方がプリズムの長手方向で4.5mmほど大きい物が使われていました。)
レンズもプリズムもホコリだらけ
だったけど、クリーニングしたら
新品のような透明感を取り戻した。
この時代のガラスは本当に綺麗で
現代のものより透き通って
見えるような気がしてしまう。
クリーニングを終えて組み上げた
grossfeld 8×24を覗いて見ると
あることに気付く。
射出瞳のすぐ上に盛大な漏光が。。
目の位置がちょっとでも上にズレると
この光が直接目に入って眩しく
コントラスト低下とか以前の問題だ。
これが胴体が細いタイプの
致命的な欠点で、対物側のプリズムを
光路に接近させ過ぎた弊害なのか
対物レンズを通った光の一部が
プリズムの反射面に入ってしまうのだ。
てか、この状態で何故プリズムカバーを
設定しなかったのか?謎なのだけど
無ければ作ってしまおう!ってことで
プリズムカバー製作に取り掛かかった。
厚さ0.3mmのアルミ板を
プリズムのサイズに切り出して
折り曲げる。
反射面にベッタリ接触しないように
両端を少し内側に曲げるのがコツ。
艶消し黒で塗装して完成
これで余計な光はシャットアウト!
迷光が無くなってやっと本来の性能を
発揮することが出来た8×24。
眩しさもコントラストも改善した。
この小さな写真では伝わらないけど
ほんとにクリアで自然な見え方をする。
初期のDIAGONみたいな中心に特化した
見え方では無く、周辺まで良く見えて
崩れ方も自然。
双眼鏡マニアの方々のレビューを
拝見するとノンコート双眼鏡では
カールツァイス・イェナの
デルトリンテム軽量非球面接眼モデル
通称リヒターモデルの評価が高いのは
ご存じの方も多いと思う。
一方でこのgrossfeldは
話題に登ることすらほぼ皆無である。
もちろん、口径の違いもあって
明るさではリヒターに及ばないのだけど
解像度、シャープネス、歪曲の少なさ
においてはリヒター含め同時期の
ツァイス・イェナを上回っていると
ねずみは感じている。
・・・この時期のヘンゾルトに関しては
ネット上にもほとんど情報が無いので
全くもって分からないのだけど
ねずみの他にも同じような
感想を持っている人がいるのだろうか?
これらの双眼鏡に対して
ねずみと同じ感想の方や
異なる見解をお持ちの方がいたら
コメントいただけると嬉しいです!
コメント
コメント一覧 (8)
すごく,珍しい(高そうな・・・)双眼鏡の中を見せて頂けるのは,ホントに有り難いです.
たしかに,ノンコートなのに凄いコントラストの有る像ですね.トウモロコシの写真に,一瞬ぎょ!!っとしました.
写真の中で,裸のレンズを手に持ってるところがありますが,これは対物でしょうか? それとも接眼レンズの(前の方の)レンズでしょうか? 写真から見る限り,両凸のように見えます.
このレンズの表面の艶がただものではない気がします.
光学エレメントの艶って,電子顕微鏡で見れば凸凹が見えるかもしれませんが,熟練した人だと見ただけで凸凹具合を見分けてしまうそうです.研磨剤の違いでしょうか? 当時だと,今の酸化セリュウムではなくて,酸化鉄で研磨されたのかなぁ,などと想像してしまいます.
酸化鉄は,なんでも研磨する力が弱いので艶良く仕上がるとか,古い本には書いてあるのですが・・・わたしがやると,時間ばっかりかかって艶は同じでした(泪).
そのレンズ,捜査電子顕微鏡にかけてみたいもんです.まぁ,今は手元に電子顕微鏡がないのでできませんが,そのただ物ではない艶の秘密をしらべてみたいもんです.
あ,そうだ.
今回の双眼鏡の対物のFって分かりますか?
7×50は,昔のはF5.6,最近のはF4がが多いと思ってるのですが,今回のように「細い」双眼鏡って,対物のFはどのくらいなんだろうと,興味が湧きます.
mouse830
がしました
私は左手で単眼鏡と測定したいセル付対物レンズを床に向けて,右手でメジャーのテープを調整します.
この時,セルによる対物と単眼鏡の対物との距離は無関係ですから適当で良いのですが,対物同士を向かい合わせにします.で,床の模様にピントが合ったところで,対物レンズと床との距離を読みます.手持ちで測っても,慣れればミリ単位まで分かりますよ.
太陽の光で焦点を結ばせて,それを長い物差しで測ったりするのが理科の教科書なんかに良く掲載されてますけど,それじゃ曇りだったり夜は使えないので,不便極まりないですよね?
mouse830
がしました
今度は,普通のハーフミラーと直角プリズム一個を使う横長タイプです.
ただニコンの一眼レフ用の4×のガリレオ式望遠鏡(マグニファイヤーってやつ)が付いているのが特徴です.
使ってみって,ふと,不思議な事に気が付きました.
検査機は普通なんですけど,使う時の目ん玉の方です.
一台のアサヒの双眼鏡を手に取りまして,これは何か少しズレてたんだよな,と思いながら遠くの景色を眺めてみると・・・,やっぱり視軸が斜めにズレてる感じがします.
で,検査機を良く調整してから双眼鏡に当てると・・・・・,ほとんど狂ってないのでした.少し内側を向いてますけど公差の範囲.内側向いてるのは実害が少ないし,狂いを4倍に拡大して見ているので,なんだぁ大丈夫じゃないかぁ,と思いました.
さて,もう一度双眼鏡を景色を見てみると・・・びったりと視軸が出ていました!! 何にもいじってないのに,です??.
以前から思ってたのですが,自分の目玉は気持ちの持ちようで,少しだけ縦にずらすことができるような気がします.なので,「この双眼鏡は狂ってるんだよなぁ」と先入観を持って覗くとズレるみたいです.
ちなみに,本当に狂ってるのは,本当に狂ってました.(笑い).
mouse830
がしました
恐縮です.ついつい伸ばし伸ばしになってる自分のブログに,そのうち写真を上げますので・・・.マグニファイヤーが家に3個くらい転がっているのを思い出して付けてみました.跳ね上げ式の台座のまま取り付けたので,具合が良いです.3~4倍が良いですね.視野も狭くて十分なのでガリレオ式で良いよなぁ,と思ったもんで.
前の顕微鏡の双眼装置を使ったのは,どうしても10倍とかになりやすくて,さすがに倍率が高かったです.
ただ,4倍でもハーフミラーの場合は,微かに像が2重反射なのが分かってしまうので,ビームスプリッターを手に入れた方が良いです,どうせ作るなら.
>意外とズレてなかったりします。
ああ,やっぱりそうですかぁ.
自分は「この双眼鏡ギラギラして見えるなぁ」と思ったら,中心は良くあっているんだけど像の倒れが少しあって,視野の外側でズレていくのでそう見えるのだと気づいたことがあります.
逆に,たまたまでしょうが,びったりと合ってる双眼鏡は,古い光学系でコントラストもパッとしないのに,すんごく気持ちいの良い見え方に感じることが多いです.
可能なら,今度,双眼鏡を売っている店に行って,こっそりと検査機で窓の外を眺めてみたいです.店員に見つからずに5台くらい検査できれば楽しいかも.新品の商品では,いちいち買って調べてられませんもんね.(大笑い)
mouse830
がしました