双眼鏡の左右の視軸(光軸)を
検査する装置「光軸検査器」
通称「平行器」の開発について
書いてきましたが。

今回はいよいよ集大成
第3世代のお話です。
DSC01741
この見た目だけで
第2世代との違いが分かった方は
相当の平行器マニアでしょう
・・・ねずみ以外に平行器マニアが
存在するのかは分かりませんが。


第2世代と並べてみます
DSC01759

次にアクリルで作った
モックアップをお見せします。
DSC01745

・・・よく分からないですよね。


第2世代からの
変更点は大きく三つあるので
それらを順番に説明していこうと思う。

まず一つ目の変更点。
第2世代で使っていた
プレート型のハーフミラーを
第3世代ではキューブ型の
ビームスプリッターに変更している
DSC01750
これは光学性能の向上が目的ではなく
ミラーの接着を無くすことによる
耐久性の向上が主な目的。


第2世代のハーフミラーは
ベースに小さい面積で接着していて
落下時等の強い衝撃や
温度変化による熱応力、
校正時のネジ締め付けによる
台座の歪みによって
接着が剥がれてしまう心配が
どうしても付きまとっていた。

弾性のあるソフトタイプの
接着剤を使えば
そのような破損は防げる反面
ミラー位置の規制が甘くなり
精度面で問題があるので
ねずみはあえてハードタイプの
強力な接着剤を使っていたのだが
それでも耐久性については
やや劣る仕様となっていた。
FullSizeRender
この耐久性の課題に対し第3世代は
キューブ型のビームスプリッターを
止めネジで筐体に直接固定することで
クリアしている。


但し、ビームスプリッターの使用には
コスト面で非常に大きな課題があって
品質の保証された国産品であれば
それだけで3万円は超えてしまうので
一般に販売する上ではかなり
ハードルの高い値段設定に
なってしまう。

そこでねずみは
安く手に入る中国製のものを
いくつか購入して
その中から精度の良い個体だけを
選別して使うことで
品質とコストを両立しているのだ。

・・・ん??販売するのかって?
それは記事の最後に報告しますね。



続いて二つ目の変更点は
光軸調整ユニットの取り付け位置と
形状の変更だ。

第2世代はハーフミラーを接着した
ユニット自体を光軸調整機構として
使用していたため
覗き穴の側に光軸調整ネジがあり
ネジを回すレンチが覗き穴にかかって
邪魔になるデメリットがあった。
DSC01794

第3世代では覗き穴から
離れた位置にネジがあるため
そのような心配は無くなった。
DSC01789

また、平行器に単眼鏡を密着させる
ことも出来るようになったので
単眼鏡をテープ等で固定すれば
専用の平行器調整台が無くても
ある程度の調整が出来る利点もある。
DSC01777

・・・専用の平行器調整台??
それも最後に紹介したいと思います。


さらに第3世代では
光軸調整用ユニットを
L字型の部材から四角のパイプ型に
変更している。
FullSizeRender


第2世代のクセとして
左右の光軸調整の際に
視界が斜め上下に動いてしまう
現象があったのだが
平行器_調整2
これは、左右光軸調整ネジの軸力で
L字部材の垂直面がたわんで
ミラーを接着している水平面が
上に持ち上げられる。と言う
メカニズムで発生していた。
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第3世代ではこの部材を
角パイプに変更したことで
上下均等にたわみが発生して
ミラーが持ち上がる現象が無くなり
視界が上下に動く現象を
排除することが出来た。
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上下左右を完全に独立して
光軸調整出来るようになったので
調整も大分やりやすくなったと思う。


最後に三つ目の変更点。

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見た目から違いが分かった人は凄い!
実は、三つ目は形状の変更ではなく
工程の変更なのである。

今まではハンドツールだけで
平行器を作っていたねずみ
DSC01802


工作精度の悪さは全て調整機構で
カバーしていたのだけど
個体間のばらつきが大きくて
毎回決まった狂い方をするものや
一年使っても全く狂わないものまで
個性強めの仕上がりになっていた。


この製造ばらつきを低減すべく
導入したのがこちら

HOZAN K-15改 ねずみスペシャル!
FullSizeRender
今回、詳細の説明は省くけど
高精度の卓上ボール盤をベースに
ねずみ独自の魔改造を加えた
スペシャル加工機なのだ!

改造箇所はざっと下記の通り。
・X-Yクロステーブル装着
・Z軸送り機構追加
・3軸デジタルリニアゲージ装着
・φ10ドリルチャック換装
・ドリルチャック抜け止めネジ追加
・超低速プーリー換装
・補剛メンバー装着
・透明保護カバー装着
等々・・・

このスペシャル加工機によって
穴位置や加工深さを
正確に狙えるようになり
加工精度が大幅に向上した。
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ちなみに改造前の素の状態はこちら。
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平行器の話からそれましたね。。



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以上、三つの大きな変更により
耐久性、操作性、高精度を
実現した平行器が第3世代なのだ!

販売する、と言いましたが
開発中にいつもの量産癖が発動して
作りすぎてしまったので、
余った分を必要な方にお裾分けしよう
と言う程度です。
DSC01730
もし好評だったら
もうちょい作るかも知れません。


それと今回、これまで作ってきた
25mm角サイズに加えて
手が大きい方向けの
30mm角サイズも作ったので
こちらも少量ながら
出品予定です。
DSC01760


さらに「平行器調整台」の方も
そのうち出品しようかなと
思っています。

平行器の光軸を調整する際には
10倍以上の単眼鏡または
双眼鏡の片側を使って
像を拡大しながら調整する
必要があるので
そのための単眼鏡を固定して
調整をやりやすくするのが
この平行器調整台。
DSC01785


ステーの組み合わせを変えて
いろんな単眼鏡や双眼鏡に対応出来る
DSC01779
DSC01783
対物レンズ径の大きな双眼鏡を
使う場合には、レンズの前に
丸穴を開けた紙を置いて
レンズ径を絞ってやると良い。

オススメの双眼鏡は
PENTAXタンクローのズームモデルや
ビクセンのコンパクトズームなど
高倍率で底面に三脚ネジが着いていて
対物径の小さいもの。
DSC01787
もちろん単眼鏡でも良いのだけど
高倍率で性能の良いものが
ほとんど無いので
上記のような双眼鏡の片側を使うのが
ベストかなと思う。



平行器の方は10月中旬くらいから
ヤフオクで順次出品するつもりなので
気になる方は是非
「平行器」で検索して
チェックしてみてください。

平行器の開発に着手して早3年半
楽しみにしてくれていた方々
大変お待たせ致しました!
DSC01799

前回に引き続き

実験的に作製した平行器を
紹介してこうと思う。


双眼装置型の平行器を作って
左右の像の区別がつかなくなる
と言う失敗を経験したねずみ。
双眼式視界


それならば
左右の視界の色を変えてやれば
判別しやすくなるだろうと言う
安易な思いつきから
こんなものを入手してみた。
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この独特の色味のガラス板は
「ダイクロイックミラー」
と呼ばれる特殊なミラーで
ハーフミラーと同じく

光の半分を透過して
半分を反射するのだけど

透過する波長と反射する波長を
キッチリ分けることが出来る。

簡単に言うと
赤い光を透過して
IMG_6293

青い光を反射する。
IMG_6294

これって、以前紹介した
ロシア製?双眼鏡の対物レンズに
施されていたルビーコーティングの
逆パターンなんですよね

ロシア双眼鏡の対物レンズは
反射が赤で透過が青だった。
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対物側から見ると赤いけど
覗いた視界は真っ青・・・
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ダイクロイックミラーが
どんな波長で光を分けているのか
確かめるために
簡易式の分光器で覗いて見ると
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透過した光はこうで
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反射した光はこう見える。
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620nmあたりを境に
波長が別れている。

青の方は青だけかと思ってたけど
濃い赤以外のほとんどの波長が
含まれている。
だから白っぽい青に見えるのかな?
もうちょっと緑あたりで
分かれてるのかと思ったのだけど
結構偏ってるみたい。


何はともあれ
ハーフミラーの代わりに
このダイクロイックミラーを使えば
左右の判別は楽勝なはず!


早速、通常の第二世代を
ベースに試作機を作成してみた。

早速完成しました
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なんでいきなり3台も作るんだよ
と言うツッコミが入りそうですね、、
相変わらずの量産癖が抜けてない。

ちなみに
サイドのキャップがねずみ色なのは
通常品との識別のためで
特に意味はありません。


双眼鏡に当てる側から見てみると
いい具合に色が分かれてる!
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16倍の単眼鏡(双眼鏡の片側)
で覗いて校正を行ってみると・・・
赤青
あれあれ??
なんだかピンボケ?
山の稜線が少しズレているので
校正が取れていないことは
分かるんだけど
鉄塔の像がぼやけているので
正確な校正が出来ない。


試しに片側を塞いで
左右別々にピントを合わせてみる。

赤の像にピントを合わせると
赤1

青がぼやける。
青1


青の像にピントを合わせると
青2

赤がぼやける。
赤2

・・・なんだか
青の方はピントを合わせても
像が二重に見える気がするが
そこは一旦置いといて
左右同時にピントが合わない
理由を考えてみると

これはもしや

色収差と言うやつ?!


こういう説明図よく見ますよね
色収差1

色収差2
単レンズだと
赤と青の焦点距離が
ズレるところを
2枚のレンズ合わせて
補正してますよーと言うやつ。

当然
ねずみが調整用に使っている
16倍のタンクローも対物レンズに
2枚合わせの色消しレンズを
使っているのでキッチリ
補正されているかと思いきや
実際はもっと沢山のレンズの
組み合わせで出来ているので
色収差は思った以上に残っている
ってことなのかな〜と思う。

つまりは赤と青の焦点距離の違いで
同時にピントが合わせられないのだ。


この時点でなんだか使えなさそうな
雰囲気が漂ってきた・・・
なんで3台もこしらえたのか。

とりあえず
悪あがきで対策しようと
調整用の双眼鏡タンクローの
対物レンズに絞りを入れてみた。
FullSizeRender
レンズ直径が小さくなれば
色収差は減るはず。


ちょっとはマシになったかも!
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片側づつ見てみると
赤_絞り
青_絞り
なんとか左右の像の輪郭が
同時に判別できる程度に
ピントが合わせられた!
その代わりレンズの汚れが
目立つようになったけど
気にしない。。

これで一応、校正は取れたので
いざ!双眼鏡の視軸チェック
FullSizeRender
どうでしょう・・・
左右の判別は付くけど
なんだか昔の赤青の3Dメガネの
視界みたいで目がチカチカして
あまり見やすいとは言えない
感じになってしまった。

双眼装置型に組み込めば
それなりに効果はあるかもだけど
そもそも視界が狭いという
弱点があるので
最適解では無い気がする。。


左右で極端に色を変えると
色々弊害がある事が分かったので
もしやるのなら
薄めのカラーフィルターで
マイルドに着色するくらいが
ちょうどいいのかな〜?

というわけで、この

ダイクロイックミラー式も
一旦お蔵入りとしますが
ベストな着色については今後も
探って行きたいと思います。



さて次回は
いよいよ本当の進化版

第3世代
の登場です。
FullSizeRender

お楽しみに!

今回は
当ブログの定番ネタ?
平行器(光軸検査器)の話の続きです。

続きと言ったって、最後に
平行器の記事を書いたのは
2021年の9月・・・
なんと3年近く前のことでした!

このブログを始めたのが
2021年の2月なので
今年で4年目に突入していますが
平行器作製の記事は
最初の半年に集中していて
それ以降はあまり
触れていなかったのです。

では今まで
何もしてなかったかと言うと・・・
そんなことはありません。
水面下?でちょっとずつ
平行器を進化させていましたよ


前回の記事で
その存在を匂わせたまま
封印されていたコチラの平行器も
公開しますので
FullSizeRender
最後まで読んでいただけると幸いです。


まずは
ねずみの平行器の歴史を簡単に
おさらいしようと思う。

最初に作ったのがコレ
第1世代


第1世代と呼ぶことにする。


特徴としては
ジャンクカメラから取った
ハーフミラーと
ジャンク双眼鏡から取った
プリズムを使い
FullSizeRender

光軸の校正は
3本のイモネジを
プリズムに直接当てて

その締め加減で行う
と言う強引な構造だった。
FullSizeRender
ネジを締めた時の
光軸の動き方が掴みにくく
校正に何時間もかかると言う
厄介な仕様であったが
シンプルな構造のおかげで
一度調整してしまえばほとんど
狂わないと言う良い面もあった。


そんな第1世代に限界を感じて
大幅な改良を加えたのが
この第2世代
第2世代

第1世代の弱点である
校正の難しさを克服して
現在も最も活躍している平行器。

ねずみ独自のシーソー型の
光軸調整機構を組み込んだことで

校正に掛かる時間を大幅に

短縮した仕様となっている。
FullSizeRender
FullSizeRender

現在はこの第二世代をベースに
数々の改良を重ねて最終的に
以下のような仕様となっている。

まず、双眼鏡に当たる面には
植毛紙を貼って反射防止と
双眼鏡の保護を兼ねている。
FullSizeRender


調整ネジには全て真鍮を使い
アルミとの線膨張係数の差を
極力無くすことで

温度差による狂いを減らした
第2世代_ネジ

さらにシーソー構造の回転中心を
とがり先の止めネジから
真鍮の球で受ける構造に変更して
面圧を低減することで
耐久性を向上させている
カップ&ボール


光学系についても
ジャンク双眼鏡のプリズムから
既製品のプリズムに変更して
個体バラツキを減らすなど
プリズム

2.5世代と行っても良いくらいの
改良を加えているのだ。

ちなみにこの仕様は
プロの方にも使って頂いており
ねずみの平行器開発の中で
一つの到達点だと思っている。


ねずみは
この第2世代をベースに
いくつかの派生型を作製し
テストしているので
それらを紹介していこうと思う

まずはこちらの平行器
双眼装置型1

前回の記事で、存在を匂わせたまま
ずっと公開していなかったモノ

双眼装置型2

なんだか扁平な見た目をしてますね、
そして覗き穴が真ん中にある。

内部構造はこんな感じ。
双眼装置型3


シーソー型調整機構を2つ
直列に配置して
手前側をハーフミラー(写真右)
奥側をミラー(写真左)
としている。
双眼装置型4


コイツは
左右の光路長を同じにすると言う
コンセプトで作ったもので
言って見れば双眼装置を
逆から覗いてるのと同じ構造なのだ。

・・・何が良いのかって??


まず通常の平行器は
左右の光路長が大きく異なっている。

眼幅60mmの平行器を
25mm角のパイプで作成したとすると
平行器光路長1

左の光路長が25mmに対して
右は85mmとなる
展開するとこんな感じ。
平行器光路長2

つまり右側は眼幅の分だけ
離れたところから覗いている
状態なので、右側の視界が狭く
像もやや小さく見えるのだ。
平行器視界1
像の大きさが異なると
上下の誤差の判別が難しくなるので
平行器の左右をひっくり返して
同じ見え方になるところを探るなど
精密調整にはコツが必要となる。

実際の見え方がコチラ
平行器視界


それならば
双眼装置の構造を真似て
左右の光路長を同じにしてやれば
左右の像の大きさが同じになり
調整がやりやすくなると考えて
作製したのがこの扁平タイプだ。
平行器光路長3

結果は・・・

視界が極端に狭くて使い辛い。
双眼式視界

ねずみはこの平行器を
40mm幅の角パイプで作ったので
光路長は左右とも
100mmになっており
通常の平行器の右側よりも
長くなってしまった。

展開すると。
平行器光路長4

通常の平行器では
左側の視界が広いので
ズレが大きい双眼鏡でも
左の視界で目標物を
捉えることが出来るのだが
コイツの場合
左右とも視界が激狭のため
それが出来ない。
平行器視界2
さらに
視野が同じ大きさになったことで
左右の区別が付かなくなった・・・
よく考えれば当然ですね。


結局のところ通常の平行器でも
慣れてくれば
精密調整が出来るようになるし

視度望遠鏡等の低倍率の
単眼鏡を組み合わて
さらに像を拡大すれば
FullSizeRender
大きさの違いもほとんど
気にならなくなるので
双眼装置式の平行器は
特に必要性がなくなって
現在はお蔵入りとなっている。


何か良い改善案が見つかれば
復活させるかもしれませんけどね〜。


さて

次にねずみが試した平行器は?!


次回に続く。

ねずみのブログを
楽しみにしてくださっている
読者の皆さま
大変長らくお待たせいたしました!
今年最初の投稿です。

去年はペースを上げて記事を書こうと
決意したにも関わらず
いろいろと忙しくなってしまい
ほとんど投稿できませんでした・・・

今年は溜まっているネタを
たくさん記事化していきたいと
思っていますので
よろしくお願いします。


さて
今回は
HENSOLDTの
代表的なポロ双眼鏡

DIAGON 8×30について
書いてみたいと思う。


ねずみは過去に何度か
HENSOLDTの双眼鏡の
記事を書いていて
その度にDIAGON 8×30を
引き合いに出してきたのだけど
メインで紹介するのは
今回が初めてなのだ。


ところで
この日本において
HENSOLDTの
双眼鏡について
最も詳細な
情報を発信されている
方と言えば

言わずと知れた
BLRM ブラッキー リッチモアさん
ですね。

圧倒的な情報量と美しい写真で
HENSOLDTの魅力を存分に
伝えてくださっております。

もちろん、ねずみが
HENSOLDTに興味を持ったのも
BLRMさんのブログがきっかけです。

今回はなんと
そんなBLRMさんから
貴重なDIAGONをお借りさせて
いただくことが出来たので
記事の最後に
紹介したいと思いますよ~!


まずは
いつものように
ねずみが入手した中古品
整備するところから
始めようと思う。
diagon_before
ちなみにこちらのDIAGON8×30は
1960年代あたりに
作られたと思われる後期型で
軍用品を除けば
HENSOLDTのポロ式としては
かなり末期のモデルにあたる。


外観はDELTRINTEM 1Qにソックリで
並べてみると見間違えるほどだ
DELTRINTEM_DIAGON

歴史をたどると
HENSOLDTは1897年に
世界初のダハプリズムを搭載した
双眼鏡を発売して以降
アッベ・ケーニッヒプリズム等の
ダハ式メインで勝負してきた
会社である。


そんなHENSOLDTも
1910年代頃からポロを発売
するのだが、初期のモデルは
お世辞にも良い構造とは
言えなかった。
GROSSFELD_PRISM
イモネジを直接プリズムに当てちゃう
構造とか・・・
以前紹介したgrossfeldもそうですね。
http://mouse830.livedoor.blog/archives/16635685.html

純粋な光学性能なら
ZEISSを上回るものがあると
思うんですけどね~。


そんなHENSOLDTだが
1928年にCARL ZEISS JENAに
買収された後しばらくは
従来構造のポロの製造を続けるものの
1940年代頃にはZEISS JENAの構造を
取り入れ始めたようで

今回紹介するDIAGON後期型では
DELTRINTEMと
ほぼ同じ
構造に落ち着いたと言える。

なので
外観は似ていて当然なのだけど
内部構造についてもほとんどが
ZEISS JENA化されているのだ。



その変化の中でも
特に、プリズムを動かすタイプの
視軸調整機構が
二重偏心環になったのは
最も大きな改良点といえるだろう。
IMG_1519 (2)



分解整備が異様に難しくて
操作トルクが安定しなかった
フォーカスリングの構造も

DELTRINTEMに似た構造に
変わっている。
DIAGON_フォーカスリング
但し、DIAGONの方は
ネジ面だけで軸を保持する
構造になっていて
そのために
ネジの掛かりを長くとったり
ピッチを細かくして
ガタを抑えているようだが
DELTRINTEMのように
軸受け部で嵌め合う
構造と比べるとややガタが多い。
この辺はちょっと
詰めが甘いような・・・
ちなみに回転方向はZEISSと
左右逆です。


上記の
偏心環とダイヤル構造の2点は
分かりやすい変化点だが
ねずみが
最もZEISS JENA臭い
と感じる箇所が鏡体の内部にある。

それがコチラ
IMG_1427 (3)_LI
プリズムの下に敷かれた
錫製のシートだ。

この錫シートは

DELTRINTEMをはじめとした
ZEISS JENAの双眼鏡に
1930年代あたりから採用されていて
ねずみが知る限り
ZEISS JENA系以外のメーカーには
見られない構造だ。



この錫シートの機能について
文献などで詳細を確認することは
出来なかったが、ねずみの考察では
プリズムの変形を抑える
とても重要な部品と考えている。


まず
この錫シートが無い場合を
考えてみると
プリズム_シートなし1
プリズムが鏡体の台座全体に
接しているので
板バネの荷重はプリズムを通って
台座全体に伝わる。


すると台座は
極端に書くとこんな感じで

弓なりにたわむことになる。
プリズム_シートなし2
光路の穴の影響もあって
剛性が低くなっている
台座中央
部よりも
剛性の高い端の方に

強く荷重がかかるので
プリズムの端が欠けやすく
なると考えられる。

さらに、プリズム自体に
曲げモーメントがかかるので

プリズムに歪みが発生して
光学性能に悪影響が
あるのでは?とも思う。



一方
真ん中に錫シートを挟んだ場合は
シートの厚みで両端が浮いた状態に
なっているので

プリズム_シートあり1

板バネの荷重で台座がたわんだとしても
シートによって台座中央部で
荷重を受け止めることが出来る。

プリズム_シートあり2
これならプリズムの端に
荷重がかからずに
保持出来るので
プリズムの歪も少なくなり
とても優れた構造だと
ねずみは思っている。


その裏付けとまでは言えないが
錫シートが使われる前の
年式の古いDELTRINTEMを
修理した際にプリズムの端が
欠けている物に
出会ったことがある。
DELTRINTEM_14 (3)_LI
板バネの荷重だけではなく
落下などの衝撃で欠けたと
思われるのだけど、
錫シートによって
プリズムの両端が浮いていれば
このような欠けは起こらないだろう。


ちなみに
材質が錫から紙に
変更されているものの
CARL ZEISS oberkochen 8×30にも
この構造は受け継がれている。

最後期のDELTRINTEMでは
このシートは省かれてしまうが
精密に鋳造された鏡体には
プリズム中央部を支える4つの突起が
成形されており、この思想自体は
受け継がれているものと思われる。
プリズムシート比較

説明が長くなってしまったが・・・
HENSOLDTのポロ式双眼鏡は
ZEISS JENAの構造を
取り入れて合理的な進化を果たした
と言えるのではないだろうか。

しかし残念なことに
同時にコストダウンも
急速に進められていて
この後期型ではプリズム固定の
板バネを締結するネジまでも
廃止されて

整備し辛い構造になっている。
IMG_1418 (2)
板ばねとプリズムの間の
クッションの紙が
ズレて接着されているのも
クオリティ低下を物語っている。

対物レンズ枠の反射低減の
溝切りが
廃止されてしまったのも
残念なポイントだ。
DIAGON_hikaku1

そんな数々のコストダウンを
受けながらも、この後期型は
前期型に対して視界も広がり
視野周辺部の収差も改善されるなど
光学性能自体はかなり
向上している印象を受ける。

まとめると
ZEISSの合理的な機械構造と
HENSOLDTならではの
シャープで自然な見え味。
そして残念なコストダウンが
ミックスされた、なんとも
末期のモデルらしい双眼鏡
それがDIAGON後期型なのだ。
IMG_6739 (2)
ねずみはそんなDIAGONが大好きで
よく持ち出している。

上の写真は諏訪湖の風景ですが
対岸の建物の輪郭が
ビシッと直角に見える解像力は
さすがHENSOLDT!と思わせる
軍用譲りの性能だ。


そして、最後に
BLRMさんよりお借りした
貴重なDIAGONを紹介したいと思う。

HENSOLDT DIAGON 8x30
armée française

IMG_6726 (3)
その名の通り
フランス軍用に採用されていた
激レアなDIAGONなのだ。

この機体の見え味はというと
・・・思い込みでそう見えている
だけかもしれないが、
自宅から見る空が
爽やかなフランスの
海辺の空になったような
全体が上品な薄水色に
着色して見える気がする。

さらに
armée françaiseには
軍用ならではの装備も付属している。

IMG_6725 (2)
ケースの蓋の裏に収納された
黄色のフィルターだ。

これは薄暮時などの光量が少ない
ときにアイカップに取り付けて
コントラストを向上させるものだが
明るい昼間に装着すると
視界がきれいなレモン色の
着色に変わって
これが兵器とは思えないほど
爽やかな気分にさせてくれる。


BLRMさんには
この激レア機のほかにも
2台のDIAGONをお貸しいただき
ねずみの元に大勢の
HENSOLDTが集結しましたので

いつか真似してみたかった
集合写真を撮ってみました。

IMG_6645 (2)
BLRMさん
ありがとうございます
これが沼というやつですね・・・


以上
長文となってしまいましたが
この辺で。

今年も ねずみ工作研究所を
よろしくお願いします!

久々の更新となりますが
今回は毎度お馴染み
視軸調整ネタの続きです。

かれこれ二年ほど前から書いていて
前回の記事を書いてから
もう一年近く
経ってしまった。

前回の記事はコチラ↓
http://mouse830.livedoor.blog/archives/15772259.html

前回までは
双眼鏡の視軸調整機構の紹介や
視軸を中心軸に合わせる
方法について
紹介してきたが

今回からはもうちょっと踏み込んで
どれくらいのズレ加減を狙って調整
すべきか?を深掘りしていこうと思う。


例によって、、ここからの説明は
ねずみが断片的に得た知識を
繋ぎ合わせて考察したものなので
専門の方が読んでいたら是非
ご指摘、アドバイスお願いします。


本題に入る前にまず
「視軸」ってそもそも何なのか?

について整理しようと思う。
眼球
視軸とは眼球の中のレンズである
「水晶体」の中心と
イメージセンサーである網膜の中で
最も感度の高い場所
「中心窩」を
繋いだ直線のことである。

・・・って言ってもピンと来ないけど

簡単に言うと「視線」のことで
人間が見ている方向のことを
指している。

ちなみに眼球の中でも
光軸と視軸は5°程度ズレているらしいが
今回の話には関係ないので割愛する。

過去の記事↓でねずみは
http://mouse830.livedoor.blog/archives/9859556.html
双眼鏡の左右の光軸ズレを
調整する作業のことを
「視軸調整」と呼んできた。
これは一般的にも使われる表現だが

本来の意味の「視軸」は
眼球の中にあるものであって

双眼鏡にあるものでは無いのだ。

「視軸調整」を正しく表現すると
「系の光軸の左右
平行度調整」
なのである。

・・・出だしから話がややこしく
なってしまって申し訳ない。

ここからはもう少し分かりやすく
「双眼鏡の系の光軸」と
「眼球の視軸」の関係を
お馴染みの
絵を使って
視覚的に説明してみようと思う。

この2つの関係性が分かれば
自ずと調整の際に狙うべき
ズレ加減も分かってくるはずだ。


今回からは
より正確に表現するため
今までよく使って来たプリズム無しの
簡易的な双眼鏡の絵↓では無く
双眼鏡_平行1

プリズム入りの絵↓に変更してみる。
ポロ_平行


まず
無限遠にある目標(鉄塔)を
光軸がピッタリ平行な理想の双眼鏡で
覗いてみたとする。

赤い線が目標物から届いた光と
考えて欲しい。

ポロ_平行2
この時、左右の視界とも
ど真ん中に目標物が来るので
それを覗いた時の眼球の視軸も
左右がピッタリ平行になる。

人間は目標物を一つに重ねるように
左右の視界を合成して認識するので
その時の視界は一つの円に見える。
視界_平行
これは裸眼で無限遠の目標物を
見ている時と同じ状態なので
違和感無く見ることが出来る。



次に発散のある双眼鏡を考えてみる。
ポロ_発散
「発散」とは
双眼鏡の系の光軸が目標物に対して
外に開いた状態になっていて

対物レンズに正面から真っ直ぐ入った
光が接眼レンズから出て来た時に
外側に広がっていく状態を指す。

この時、目標物は視野の中で
内側に寄って見えるため
このズレは内方ズレと呼ばれる。
ポロ_発散2
この時、眼球の視軸は目標物(鉄塔)を
一つに重ねて見ようとするので
寄り目の状態になる。

そして視界は一つの円では無くて
こんな感じになる。
視界_内方ズレ
双眼鏡を覗いた時の視界って言うと
こっちをイメージする人が
多いかも知れない。

通常、人間は
近くの物を見る時には少なからず
寄り目の状態になっているので

このような内方ズレについても
特に違和感なく見ることが出来る。
あまり極端なのはNGですけどね。。
近距離裸眼

続いて
「発散」の反対の「集中」の場合は
双眼鏡の系の光軸が目標物に対して
内側にクロスした状態になっている。
ポロ_集中
対物レンズに正面から入った光が
接眼レンズから出た時に
内側に集まるので集中と呼ばれる。


この時は視野の中で
目標物が外に離れる外方ズレとなる。
ポロ_集中2
この状態で左右の目標物を
一つに重ねるためには寄り目の逆の
反り目(そりめ)にする必要があるが

これは通常あり得ない状態なので

とても気持ち悪くて目が疲れる。

その時の視界は
左の視界が右に、右の視界が左に
広がった状態となる。
視界_外方ズレ
まぁ、この状態では
視界がどうのよりも目が疲れて
まともに見ていられないので、、
あんまり関係ないですね。

ちなみにPENTAXのパピリオは
近くにピントを合わせた時に
意図的にこのようなクロスの
光軸を作って、眼の視軸を平行に保つ
ギミックが組み込まれているのだが
これについてはまた別の記事で
詳しく紹介したいと思う。


ここまでの説明で
分かってもらえたと思うけど
双眼鏡を調整する時には
ざっくり言うと
ズレ0〜弱内方ズレが良くて
外方ズレは良くない
と言うことになる。

JIS B7121に規定されている
双眼鏡の光軸平行度規格でも
内方ズレ(発散)に比べて
外方ズレ(集中)の許容度が
かなり厳しく設定されているのは
この理由によるものなのだ。


ここで最初の話に戻ると
系の光軸のことを視軸、と呼ぶのは
正しい表現では
なかったのだけど
系の光軸の平行度を調整すること

即ち、人間が覗いた時の
視軸を調整することなので
「視軸調整」とはなかなか
的を射た表現だなぁと改めて思う。
てな訳で、
これからもねずみはこの呼び方を
使っていくつもり。


次回からは、さらに踏み込んで
市販の双眼鏡がどれくらいの
ズレ加減で調整されているのか?
を検証しながら
最適な狙い値を探って行こうと思う。


最近、少しサボり気味でしたが、、
ここからは少しペースアップして
更新していくつもりなので
今後ともよろしくお願いします!

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